報道発表資料

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1996年12月06日

風力発電導入マニュアルについて

風力発電システムは地球温暖化防止に資する技術の一つとして、地球温暖化防止行動計画等においても、その普及を図ることとされている。このため、環境庁は、請負調査により、風力発電システムの普及に当たり先導的役割を果たすことが期待されている地方公共団体を対象に、風力発電システムの効果、設置に当たっての手続き等の必要な情報を網羅的に整理したマニュアルを取りまとめ配布する。今後、このマニュアルの普及を通じ風力発電システムの導入促進の一助とするものである。

1.背景

 風力発電システムは、発電時に二酸化炭素を発生しないため、地球温暖化防止に資する技術の一つとしてその普及が期待されている。
 風力発電システムは、既にアメリカ、ドイツ、デンマーク、インド等において本格的な導入が進んでいるが、我が国においては、導入基数が少なく設置コストや手間が大きいことなどから普及が進んでいないのが実態である。
 そこで、地方公共団体が風力発電システム普及の先導的役割を果たすことが期待されているが、風力発電システムの効果、設置に当たっての手続き等関連情報の不足が、風力発電システムの導入の妨げとなっているとの指摘がある。
 このため、環境庁では、学識経験者、関連業界、地方公共団体等の協力を得て、検討委員会を開催し地方公共団体が風力発電システムを導入するに当たって必要な情報について整理し、活用できるよう、マニュアルとして取りまとめたものである。

2.マニュアルの概要

(1)風力発電導入の意義
 風力発電システムの特徴は、
    a) 環境負荷の比較的少ない発電システムであること、
    b) エネルギー源がクリーンで無尽蔵であること、
    c) 発電規模が比較的大きいこと、
    d) 比較的大きな構造物であるため地域のシンボルとなりうること、
    e) 20年以上の長寿命であること
 である。
 しかし、風力発電システムの普及上の課題として、現状では我が国においては導入事例が少なく、設置コストが大きいこと(初期投資について約25~100万円/kW:日本国内における1991年~1996年の実際例、初期投資の償却も考慮した発電単位は10から15円/kWh(導入事例についての試算例)。なお、業務用(6KV)の売価は13から18円/kWh。)があり、こうしたことから国や地方公共団体による率先導入、普及啓発により需要を創出し、更なるコストダウンを図ることにより、風力発電の普及に拍車がかかることが期待される。
 今後、地方公共団体が、地球温暖化対策等の環境負荷低減策や、これらに関する住民への啓発、また地域の特色づくり等において、風力発電システムの特徴をいかして積極的に活用することが期待される。
(2)風力発電の概要
 様々な風車の種類、風力エネルギーの利用方法、風力発電システムを構成する機器・装置及び系統連系システムについて、その機能・種類と役割等を整理。
(3)風力発電の位置づけ
 「地球温暖化防止行動計画」において、風力発電については、発電部門において技術開発を行いつつ風力の利用も推進すること等が位置付けられている。さらに「環境基本計画」においては、二酸化炭素排出の少ないエネルギー供給構造の形成のため、風力等の利用を進めること、また国・地方公共団体の役割として、自然エネルギーについて研究開発の推進及びその導入の促進を図ることが記されている。この他、「長期エネルギー需給見通し」においては、風力発電の導入目標を、新規施策追加ケースにおいて、2000年度で2万kW、2010年度で15万kWと設定しているが、これらの目標の達成は、以下のような点から見て十分に可能と考えられる。
(4)地球温暖化対策からみた風力発電システム
 システムの製造、設置、運転、維持管理等ライフサイクルを考慮した風力発電システムのエネルギー収支及び二酸化炭素削減効果について文献調査を行った。
・風力発電システムのエネルギー収支
 風力発電システムのエネルギーペイバックタイム(製造、設置、維持管理等に投入したエネルギーを回収できる期間)は約2年と報告されており、風力発電システムの耐用年数(20年程度とされる)を大きく下回る。
・風力発電システムの二酸化炭素削減効果 
 風力発電システムの規模によって異なるが、100kWシステムにおける発電量あたりの二酸化炭素排出量(施設の設置、運用等による二酸化炭素の排出量)は 25.9g-C/kWhと試算されており、石油火力(約196g-C/kWh)の約8分の1、石炭火力(約257g-C/kWh)の約10分の1となっている。
 このデータに基づき、仮に2000年に2万kWの風力発電システムが導入された場合、石油火力を使用した場合に比べて、年間約4,500トンの二酸化炭素の排出が削減されると試算された。なお、我が国における風力発電による発電可能量については、土地利用等に関する種々の条件に応じて、約140万kW又は約920万kWとする試算がなされている。
 風力発電システムからの単位発電量当たりの二酸化炭素排出量は、システムの規模が大きくなるほど少なくなると推測されている。現在我が国において一般的に導入されている風力発電システムの規模は200~400kWと、試算の対象とされたシステムより大きいことから、実際の二酸化炭素排出削減効果は一層大きいものと考えられる。
(5)風力発電の導入事例
 国内及び海外(アメリカ、ドイツ及びデンマーク)における風力発電の導入状況を整理し、また風力発電システムの実際の導入事例について、現地の状況を紹介。
(6)風力発電システムの導入方法
 実際の風力発電システムの設置、運用に当たっての手順について、事前調査、システムの設計、施工・工事、保守・管理及び撤去・廃棄について解説するとともに、関連事項として、騒音、電波障害、景観への影響等システムが環境に与える影響について環境影響評価を実施すること、所要費用及び諸手続と関連法規制の概要について解説。
(7)風力発電に関する助成制度と保険
 風力発電導入の計画策定に関する助成制度、実際の風力発電システムの設置・導入を対象とした助成制度及び風力発電に関するリスクに対応する保険について紹介。
(8)導入事例にみる風力発電の実際
 山形県立川町における、風力発電の導入を地域おこしに活用した事例、高知県における発電事業として風力発電を導入した事例等6例についてシステムの概要、評価等を紹介。

3.マニュアルの普及

 当部の作成したマニュアルの事例としては、太陽電池、燃料電池などがあるが、これらの例にならい、全国の都道府県、政令指定市に配布し、活用を促進する予定である。

※なお、配布できる部数は限られていますが、必要な方はお申し出ください。

(参考)
           <風力発電導入マニュアル検討委員名簿>
委員長  清水 幸丸  三重大学工学部機械工学科教授
委員   阿部 金彦  山形県立川町企画開発課風車村推進係長
            風車村センター総務係長
     石塚  猛  財団法人新エネルギー財団 計画本部振興部部長
     桜井 美方  株式会社エコロジーコーポレーション理事 技術本部長
     堀米  孝  日本クリーンエネルギー総合研究所理事長
     山田 昭夫  石川島播磨重工業株式会社 汎用機械事業部
            開発部部長代理
連絡先
環境庁企画調整局地球環境部環境保全対策課
課長 :小林 光  (6740)
 補佐 :河崎 哲久(6737)
 担当 :常冨 豊  (6739)