報道発表資料

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2004年07月29日
  • 地球環境

平成15年度オゾン層等の監視結果に関する年次報告書について

 環境省は、「特定物質の規制等によるオゾン層の保護に関する法律」の規定に基づき、平成15年度における[1]オゾン層、[2]CFC(クロロフルオロカーボン:いわゆるフロンの一種)等の大気中濃度の状況、[3]太陽紫外光の状況の監視結果をとりまとめました。概要は以下のとおりです。

1.オゾン層の状況

  • 全球的なオゾン全量は、1980年以前(1964-1980年の平均)に比べて少ない状態が続いており、特に高緯度域の春季において著しく減少しています。日本上空でも、札幌、つくば及び鹿児島において長期的な減少傾向が見られ、その傾向は札幌において最も大きくなっています。
  • 2003年の南極域上空のオゾンホールは、例年よりも発達時期が早く、オゾン欠損量(破壊量)は過去最大、面積は過去2位でした。近年の状況を見ると、オゾンホールの規模は、やや鈍化したものの長期的には依然として拡大の傾向が続いており、南極域のオゾン層は深刻な状況にあります。

2.CFC等の大気中濃度の状況

  • CFC-12の濃度は1990年代後半以降はほぼ横ばい、CFC-11、113については減少してきています。一方、HCFC(ハイドロクロロフルオロカーボン)やHFC(ハイドロフルオロカーボン)の濃度は増加の傾向にあります。
  • 現在のCFC等オゾン層破壊物質の大気中濃度は、1970年代に比べてかなり高い状況にあり、成層圏オゾン層の状況が改善されるためには、これらの物質の濃度が大幅に低下することが必要です。

3.太陽紫外光の状況

  • 1991年の観測開始以来、札幌、つくば、鹿児島及び那覇における有害な紫外光(UV-B)量の観測値に大きな変化傾向は見られません。
  • オゾン全量の減少に伴いUV-Bの地上照射量が増加することが確認されていることから、1970年代に比べて、オゾン全量が明らかに減少している地域においては、UV-B量は増加しているものと考えられます。

 また、オゾン層の現状を広く一般の方々に知ってもらうため、今年度から上記監視結果等を分かりやすく解説したパンフレットを作成し、配布することとしました。

1.背景


 環境省は、「特定物質の規制等によるオゾン層の保護に関する法律」(オゾン層保護法)第22条第2項の規定に基づき、今般、平成15年度における[1]オゾン層の破壊の状況、[2]CFC(クロロフルオロカーボン:いわゆるフロンの一種)等の大気中濃度の状況、[3]太陽紫外光の状況の監視結果を取りまとめた。
 なお、取りまとめにあたっては、「成層圏オゾン層保護に関する検討会」科学分科会(座長:富永健 東京大学名誉教授)及び環境影響分科会(座長:滝澤行雄 国立水俣病総合研究センター顧問)の指導を仰いだ(表1)。

 (参考)オゾン層保護法第22条

 気象庁長官は、オゾン層の状況並びに大気中における特定物質の濃度の状況を観測し、その成果を公表するものとする。

2 環境大臣は、前項の規定による観測の成果等を活用しつつ、特定物質によるオゾン層の破壊の状況並びに大気中における特定物質の濃度変化の状況を監視し、その状況を公表するものとする。

 

 

2.平成15年度オゾン層等の監視結果に関する年次報告書の概要


[1] オゾン層の状況
(全球的なオゾン層の状況)

 全球的なオゾン全量は、1980年以前(1964-1980年の平均)に比べて少ない状態が続いており、特に高緯度域の春季において著しい。日本上空でも、札幌、つくば及び鹿児島において長期的な減少傾向が見られ、その傾向は札幌において最も大きい(図1)。


(南極域上空のオゾン層の状況)

 2003年の南極域上空のオゾンホールは、例年よりも発達時期が早く、オゾン欠損量(破壊量)は過去最大、面積は過去2位であった(図2)。昭和基地上空のオゾン全量は8月中旬にオゾンホールの目安である220 m atm-cm以下の値を観測した後、9月から10月にかけて過去最低レベルで推移した。こうしたことからも、2002年に観測されたオゾンホールの規模の縮小は、この年の特異な気象条件によるものであったといえる。近年の状況を見ると、オゾンホールの規模は、やや鈍化したものの長期的には拡大の傾向が続いており、南極域のオゾン層は依然として深刻な状況にある。


(我が国におけるオゾン層の状況)

 2003年の日本上空のオゾン全量は、参照値(1971~2000年の平均;那覇は1974~2000年の平均)と比べて、札幌、つくば及び鹿児島では年末に少なく、初春から夏にかけて多い傾向が見られた。那覇上空のオゾン全量は年間を通して多めであり、特に3、7、10月は観測開始以来最も多かった。


(オゾン層の減少要因)

 オゾン層の全球的な減少傾向は、既知の自然現象からは説明できず、CFC等の大気中濃度が増加したことが主要因であると考えられる。特に、1980年代以降の南極オゾンホールの発達は、大気中のCFC等の濃度増加によると考えることが最も妥当である。

 
(科学・環境影響パネル報告要旨)

 長期的な変動、今後の予測に関して、モントリオール議定書のアセスメントパネル(2002年WMO/UNEP科学パネル報告書)によると、

[1]成層圏における塩素総量はピークかそれに近いが、臭素量は依然として増加していること

[2]化学・気候モデルの予測では、成層圏のハロゲンが予想どおり減少すれば、南極域の春季のオゾン層は2010年頃に回復に向かい、今世紀中頃には1980年レベルに戻ること

[3]観測データが蓄積されるにつれ、オゾン全量の減少が紫外線(UV)放射量の増加をもたらしていることが確証されつつあること

などが報告されている。


[2] 特定物質の大気中濃度
(北半球中緯度における特定物質の大気中濃度)

 特定物質の大気中濃度については、北半球中緯度域の平均的な状況を代表するとみなせる北海道の観測点において、CFC-12の濃度は1990年代後半以降ほぼ横ばいであり、CFC-11、113については減少してきている。また、大気中での寿命の短い1,1,1-トリクロロエタンについては、製造等の規制が始まった1993年以降急速に減少している(図4)。
 一方、CFCの代替物質であるHCFC-22、141b、142b及びHFC-134aの北海道における大気中濃度については増加の傾向にある(図5)。また、ハロン1211及び1301についても、今なお増加の傾向が続いている。


(都市域における特定物質の大気中濃度)

 都市域の状況の一つとして川崎市で測定したCFC-11、12、113、1,1,1-トリクロロエタン及び四塩化炭素の大気中の濃度については、次第に安定し、北海道におけるこれらの物質の大気中濃度のレベルに近づきつつある。これらは1989年7月から開始されたモントリオール議定書に基づく規制の効果と考えられる。


(特定物質の大気中濃度とオゾン層)

 現在の特定物質の大気中濃度は、南極域でオゾンホールが観測される以前の1970年代に比べてかなり高い状況にあるため、成層圏オゾン層の状況が改善されるためには、これらの物質の濃度が大幅に低下することが必要である。


[3] 太陽紫外光の状況
(太陽紫外光の影響)

 成層圏オゾン層の破壊に伴い、有害な紫外光(UV-B)の地上への照射量が増大した場合には、皮膚がんや白内障の増加、さらに免疫抑制などの人の健康への影響のほか、陸生、水生生態系への影響や大気汚染の増加が懸念される。このため、UV-B量の長期的な変動の傾向を把握する必要がある。


(我が国における太陽紫外光の状況)

 日本においては1991年の観測開始以来、札幌、つくば、鹿児島及び那覇の4ヶ所におけるUV-B量の観測値に大きな変化傾向は見られない(図6)。また、オゾン全量の変化に敏感な波長300nmの紫外光についても、明らかな傾向は見られていない。これは、1990年以降について日本上空のオゾン全量に顕著な傾向が見られないことと対応している。UV-B量の観測値はオゾン全量のほか、天候(雲量)や大気混濁度等の影響を受けるため、長期的な変動傾向の把握にはなお一層のデータの蓄積を要する。


(オゾン全量とUV-B量の関係)

 これまでの国内4か所における晴れた日のオゾン全量とUV-B量の観測結果に基づく気象庁の解析によると、太陽高度角が同じであれば、オゾン全量の減少に伴いUV-Bの地上照射量が増加することが確認されている。したがって、1970年代に比べて、オゾン全量が明らかに減少している地域においては、UV-B量は増加しているものと考えられる。
 オゾン全量の長期的傾向については、低緯度地域を除いた領域では減少傾向が続いており、高緯度の春季に減少傾向が顕著である。日本上空でも、那覇を除く国内3地点で長期的な減少傾向が見られ、その傾向は札幌において最も大きい。

 

3.平成15年度オゾン層等の監視結果に関する普及啓発パンフレットの作成


 オゾン層破壊の状況やその対策を国民に広く周知するため、今年度から本年次報告書の内容を分かりやすく解説したパンフレット(別添)を作成し配布するとともに、環境省ホームページに掲載する。これにより、オゾン層を取り巻く現状についての国民の理解が深まることが期待される。
 


○地球環境局 報告書
 平成15年度オゾン層等の監視結果に関する年次報告書

○地球環境局 行政資料
 パンフレット「オゾン層ってどうなってるの?」
 

添付資料

連絡先
環境省地球環境局(旧)環境保全対策課フロン等対策推進室
室長  :宇仁菅伸介(内6750)
 室長補佐:小泉 潤一(内6751)
 担当  :西川 絢子(内6753)