報道発表資料

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2004年07月08日
  • 自然環境

平成16年のトキの繁殖結果等について

 平成16年7月4日に、本繁殖期の19羽目のトキのヒナがふ化し、本年のトキの繁殖(産卵・ふ化)が全て終了しましたので、本年の繁殖結果等についてお知らせします。
 平成16年は、既存の3組の繁殖ペアに加え、新たに佐渡トキ保護センター生まれの個体同士によるペアを2組形成し、5組のペアで繁殖に取り組んだ結果、合計34個の卵が生まれ、19羽のヒナが生育しました。現時点におけるトキの総個体数は58羽となっています。


 また、トキの飼育下での自然繁殖能力について確認試験を行ったところ、1組のペアが1羽の自然ふ化及び育雛(完全な自然繁殖)に成功し、もう1組のペアは1羽の自然育雛に成功しました。自然繁殖の取組は平成14年から実施していますが、佐渡トキ保護センターで完全な自然繁殖に成功したのは、今回が初めてです。
 

1 平成16年のトキの繁殖方針

 平成16年の繁殖は、既存の繁殖ペアに加え、親の系統、年齢等を考慮し、新たに佐渡トキ保護センター生まれの個体同士によるペアを2組形成し、5組のペアで繁殖を行いました。
 クラッチ数は、過去の繁殖成績や繁殖ペアの負荷等を考慮し、第2クラッチまでとするが、産卵状況、個体の健康状態等により、臨機に対処することとしています。
 また、全ペアとも状況により自然繁殖を試み、育雛能力等の可能性を確認しました。


2 平成16年のトキの繁殖結果

(1) 産卵状況

 平成16年は、前年よりも5日早い3月19日に初産卵(No.35♂・No.26♀)があり、6月6日の最終産卵(友友ヨウヨウ洋洋ヤンヤン)までの79日間に、5ペアから合計34個の卵が生まれました。今年は、計6ケースの自然繁殖に取り組んだことから、1ペア当たりの産卵数は6.8個で、前年(11.0個)より少なくなっています。
 また、34個のうち、有精卵は25個(73.5%)、無精卵は8個、他の1個は巣外転落により、検卵に至りませんでした。なお、新規1ペア(No.35♂・No.26♀)
は、7個産卵しましたが、すべて無精卵でした。


(2)ふ化状況

 本年産まれた25個の有精卵から、人工ふ化(ふ卵器によるふ化)で17羽、自然ふ化(親鳥の抱卵によるふ化)で5羽、合わせて22羽のヒナがふ化しました。ふ化しなかった3卵のうち、1卵は採卵前に発育停止しており、他の2卵はふ化直前の発育停止と破卵により、ふ化に至りませんでした。ふ化率は88.0%と前年(95.0%)に引き続き高い水準となっています。4ペアから自然ふ化した5羽のうち3羽が親鳥による巣外放棄や圧死により死亡したため、現時点でヒナは19羽となり、総個体数は58羽に達しました。



3 自然繁殖の取り組み結果

(1)対象個体

[1]友友・洋洋ペア(A)

[2]No.19(優優)・No.18(美美メイメイ)ペア(B)

[3]No.20(新新)・No.23(♀)ペア(C)

[4]No.27(♂)・No.40(♀)ペア(E)

(注)No.35(♂)・No.26(♀)(D)ペアについても自然繁殖の取組対象であったが、産卵全てが無精卵であったため、対象から除外しました。

(注)( )内のアルファベットはペアの区分


(2)自然繁殖の方法

[1]A及びCペアについては、第1クラッチから産卵した卵の全てを抱卵させ、経過を観察しました。

[2]B及びEペアについては、1卵を残して採卵し、経過を観察しました。

[3]さらに、Aペアについては、第3クラッチ目に1卵を残して2卵を採卵し、経過を観察しました。


(3)自然繁殖の結果

[1]Aペアの第1クラッチは4卵の産卵があり、最初のヒナは正常にふ化したものの親鳥により圧死し、次に自然繁殖を予定したヒナはふ化前後に親鳥が巣外に放棄しました。他の2卵は、人工ふ化させました。Cペアの第1クラッチは3卵の産卵があり、最初のヒナは正常にふ化したものの親鳥による圧死を確認しました。他の2卵は、採卵し人工ふ化させました。

[2]Bペアの第1・第2クラッチで8個の産卵があり、全て正常にふ化・発育し、巣立ち直前となっています。このうちの第2クラッチ目の1羽で自然繁殖に成功しました。
Eペアは第1クラッチ3個の産卵であったが、1卵が破卵したため、1卵を採卵し人工ふ化させました。残り1卵は正常に自然ふ化したが、24時間経過してもヒナへの給餌が確認されなかったため、人工ふ化させた同ペアの5日齢のヒナと交換したところ、直後に給餌を開始し、順調に発育したのち、44日齢で巣立ちしました。自然ふ化したヒナも人工育雛により、順調に発育しました。

[3]Aペアの第3クラッチは3卵の産卵があり、1卵は自然ふ化直前に破卵しました。他の2卵は人工ふ化させました。


(4)自然繁殖のまとめ

[1]本年の5組の繁殖ペアのうち、全て無精卵であった1ペアを除く4ペアで自然繁殖を試みました。

[2]No.19(優優)・No.18(美美)ペアについて、佐渡トキ保護センターにおいて初めて完全なふ化・育雛に成功し、その能力が確認されました。

[3]No.27(♂)・No.40(♀)ペアについて、不完全であるものの、ふ化・育雛能力が確認されました。

[4]友友・洋洋ペア、No.20(新新)・No.23(♀)ペアについては、ふ化時に複数の卵を抱卵している場合、育雛能力の低下が認められました。さらに、友友・洋洋ペアについては、繁殖が進むにつれて繁殖意欲の急激な低下が認められました。


(5)今後の対応

 今年の自然繁殖の取組結果、一定の成果が認められたことから、繁殖における環境をより自然に近づける(生き餌の割合の増加など)等の確認試験を実施する見込みです。


※「クラッチ」とは、連続産卵のことで、トキは1クラッチあたり3~4個の卵を産み、卵が無くなると、同じシーズン中に次のクラッチに入ることもある。

添付資料

連絡先
環境省自然環境局野生生物課
課長:名執芳博(6460)
 補佐:松田 博(6469)
 担当:川守田恒(6463)
 直通:03-5521-8283

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