報道発表資料

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1997年05月13日

ナホトカ号油流出事故による海域・海浜生物等への影響に関する調査の結果について

ナホトカ号油流出事故による海域・海浜生物等への影響について、新潟県から鳥取県にわたり重油漂着の認められた海中公園地区や潮間帯、植生等を対象に、3月に現地調査を行った。
 その結果、調査を実施した3海中公園地区では生物への影響は軽微であったが、その他の地区の岩礁性潮間帯では、生物の活性度の低下が見られたところがあった。また、植生や砂浜海岸については、春以降、生物への影響を調査したうえで結果をまとめる必要があるため、基礎的なデータの収集を行った。
 本日、これら調査結果の評価等について検討するための検討委員会を開催した。
 なお、今後さらに詳細な分析を加え、必要な調査を継続して実施したうえ、総合的評価をまとめる予定。
1.調査体制
 調査は、財団法人国立公園協会が環境庁からの請負により実施。
 調査内容や今後のモニタリングの手法等について検討するため、海域生態系等の専門家からなる下記の検討委員会を財団法人国立公園協会に設置。
      北見 健彦    新潟大学理学部附属臨海実験所
    清末 忠人    鳥取女子短大非常勤講師
    坂井 恵一    のと海洋ふれあいセンター普及課長
    中原 紘之    京都大学農学部教授
    藤原 秀一    (財)海中公園センター研究員
    古池 博     石川県地域植物研究会会長
    本庄 四郎    竹野スノーケルセンター海洋生物研究会
    三谷 文夫    前福井県立大学生物資源学部教授
    矢島 孝昭(座長) 金沢大学理学部教授          (五十音順)
 
2.調査の方法及び結果
(1)海中公園地区
(ア)調査項目及び内容
  概況調査―― ┬―― 海岸線概況調査(目視観察、写真・ビデオ撮影)

└――
 
指標生物種調査(特定の種について、活性度の調査)
  水中状況調査 ――― 潜水調査(目視観察、写真・ビデオ撮影)

(イ)調査対象地区及び結果
 
  [1]木の浦海中公園(石川県・能登半島国定公園)
 ・ 海中公園2号地区では、海岸の洞穴の内部でのみ漂着重油を確認し(転石上に付着)たが、洞穴の側面に付着していたカサガイ類で活性度の調査を行った結果、活性度が低下している様子はみられなかった。
 ・ 海中では沈下した重油、また海藻類への付着等は見られなかった。
  [2]五色浜海中公園(京都府・山陰海岸国立公園)
 ・ 海中公園地区内では、五色浜の洞穴の入り口付近に重油の飛沫が少数認められた。
 ・ 田尻から小浜にかけての飛沫帯にはクッキー状の油塊が広範囲に付着していた。
 ・ 海中では沈下した重油、海藻類への付着、岩礁や転石への付着などは無かった。
  [3]竹野海中公園(兵庫県・山陰海岸国立公園)
 ・ 若干の粒状の油塊が小礫に混じっていたり、亀裂の間などに付着している程度。
 ・ 海中に重油の痕跡は認められず、海藻相についても異常は無し。
(2)その他地区
(ア)調査対象地区
 ・ 山陰海岸国立公園
 ・ 佐渡弥彦米山、能登半島、越前加賀海岸、若狭湾の4国定公園
 ・ 特定植物群落等
 
(イ)調査項目及び内容
 概況調査   ― ―┬― 陸上からの目視観察と写真撮影により、重油漂着状況を把握
└― 目視による岩礁性潮間帯生物と植生の観察、写真撮影により重油漂着による影響を把握(指標種としてカサガイ類の活性度、カラマツガイの卵塊の有無の観察を含む)
特定植物群落等  ――― 影響が懸念される地区で土壌のサンプリング及び分析
     
(ウ)調査結果
 [1]概況調査
   (a)岩礁性潮間帯生物
調査は新潟県から鳥取県までの6府県にかけて、合計45調査地点で実施した。
重油は石川県のシャク崎、長橋、福井県の安島、松蔭、越前岬、赤崎手前、城ヶ崎および京都府の袖志で多く残留していた。
カサガイ類の活性度が不良な個体が多かったのは7地点であった。特に、福井県の蓑町海岸は被害が大きく、剥離した個体はすべて死亡していた。
カラマツガイの卵塊は、45地点のうち18地点と約半数近くの地点で生息していた。
   (b)植生
調査は新潟県から鳥取県までの6府県にかけて、合計55調査地点で実施した。
重油は福井県の赤崎、城ヶ崎などで多く残留していた。
 [2]特定植物群落等土壌サンプリング
サンプリングは新潟県から鳥取県までの6府県にかけて、国立公園あるいは国定公園の各特定植物群落において、重油の影響が懸念される場所12地点で行った。
油分が高かったのは京都府の箱石、新潟県の頸城海岸、石川県のシャク崎の土壌であった。
(3)評価
 現地調査結果の中間的な評価の概要は次の通り。なお、今回の調査結果に、調査地区ごとの重油の漂着、回収状況をあわせ、継続する調査結果の結果を加えてさらに分析を行ったうえ、総合的評価を行う必要がある。
[1] 調査を実施した海中公園地区内では生物への影響はおおむね軽微だといえること
[2] 岩礁性潮間帯生物への影響は限定的であるものの、なお継続調査(例:1年生であるカラマツガイの幼生の発生、成長の調査)の必要があること
[3] 植生については今後植物の活性度の調査を行った上で影響の有無を判断する必要があるが、そのための基礎的データが整理されたこと
[4] 砂浜海岸については今回の調査時期には影響を判断するのに好適な生物の活動期ではなかったため、今後、調査を行う必
 
3.検討委員会の開催
   上記調査結果の評価等を行うための検討委員会を、休暇村"能登千里浜"(石川県羽咋市)会議室において本日午前9時~12時に実施した。(連絡先:休暇村 0767-22-4121)
連絡先
環境庁自然保護局計画課
課長 鹿野 久男 (6430)
 担当 上杉 (6432)

環境庁自然保護局国立公園課
課長 下   均 (6440)
 担当 中島 (6443)