報道発表資料

この記事を印刷
1998年03月13日

アジア太平洋地球変動研究ネットワーク(APN)第3回政府間会合の結果について

アジア太平洋地球変動研究ネットワーク(APN)第3回政府間会合が、平成10年3月11日から13日までの3日間、中国・北京で開催された。
 今回の政府間会合には、アジア太平洋地域の16か国の政府の代表が参加し、平成9年度の活動報告に引き続き、平成10年度の研究支援について、計12プロジェクトに対しAPNとして優先的に支援することが合意された。また、今回の会合は、昨年12月の地球温暖化防止京都会議後の初めての政府間会合であり、特に温暖化問題に関心が集まった。今後、支援プロジェクトの選定に当たっては、APNの活動をより効果的なものにするため、戦略的な活動計画を樹立する必要があること等が合意された。
 今回の会合では、地球温暖化問題にみられるように、地球環境問題解決のためには先進国と途上国が共同して努力することが必要であり、APNとしてさらに積極的に活動を拡大していく必要性があることについても参加各国の合意が得られた。
 環境庁は、APNの事務局を務めており、今後は、今回の会合で合意された支援プロジェクト選定基準等の諸規定に従って、効果的な活動の展開を図り、地球環境問題の解決に重要なアジア太平洋地域における地球環境研究の推進とAPNの更なる発展に貢献することとしている。
1.趣旨
 地球環境研究の推進には、世界的な協力が必要であり、学術レベルでは「地球圏・生物圏国際共同研究計画(IGBP)」等の国際共同プロジェクトが実施されている。これらを支援する政府レベルの取組として、各国政府は、「南北アメリカ」、「欧州・アフリカ」、「アジア太平洋」の3大地域ごとに、政府間の地球変動研究の支援組織を形成している。この「アジア太平洋」地域の組織として「アジア太平洋地球変動研究ネットワーク(APN)」が構築されている。
 我が国は、APNの事務局を引き受けており、本格運営段階に入ったAPNの活動を関係各国及び国際機関と協力して支援してきた。
 今回、平成10年度に新たに支援すべき研究プロジェクト、支援プロジェクト選定のための手続き規程、組織規定、会計規則、中長期的なAPNの活動方針等について討議することを目的として、各国の政府代表及び国際機関をメンバーとする第3回APN政府間会合が開催された。
2.主催:APN事務局(環境庁地球環境部研究調査室)
3.開催日程:平成10年3月11日(水)~13日(金)(3日間)
4.開催場所:中国・北京
5.参加国
オーストラリア、バングラディッシュ、カンボジア、中国、インドネシア、日本、ラオス、マレーシア、モンゴル、ネパール、パキスタン、ロシア、スリランカ、タイ、米国、ベトナム(計16か国)
 この他、オブザーバーとして、国際学術団体である「地球変動に関する分析、研究、トレーニングのためのシステム」(START)及びそのアジア地域各委員会、欧州・アフリカ地域の地球環境研究の支援組織である「地球変動研究欧州ネットワーク」等5つの国際機関が出席。
 我が国からは、事務局長を務める環境庁地球環境部・森秀行研究調査室長、国立環境研究所・小野川主任研究企画官、外務省及び科学技術庁の担当官の他、各国の科学者の代表により構成されるAPN科学企画グループ会合(SPG)の共同議長を務める樋口敬二・名古屋市科学館館長らが出席。
6.本会合の主な結果
 ホスト国である中国政府を代表して、ドゥン・ナン(Deng Nan)国家科学技術委員会副委員長より、開会の挨拶があった後、議長として、中国国家科学技術委員会リュウ・ヤンファ(Liu Yanhua)社会開発科学技術局次長が、副議長にはインドネシア環境省アチャ・スガンディ(Aca Sugandhy)副大臣及び日本の国立環境研究所小野川主任研究官が選出され、リュウ議長の進行により議事が進められた。主な結果は以下のとおり。
(1)SPG共同議長報告
 SPG共同議長である樋口館長から、本年1月にオーストラリア・キャンベラで開催された第3回SPG会合の結果について報告された。
 報告においては、{1}平成9年度においては、地球環境変化の人間社会的側面研究に関連した活動、地域気候モデル構築等の活動が実施され、地域の研究者のネットワークが強化される等それぞれ一定の成果をあげたこと、{2}前回の政府間会合で合意された支援プロジェクト選定の手続きに従い、平成10年度支援プロジェクトについては、APN設立以来初めて公募により募集が行われたこと、{3}アジア太平洋地域の研究者から計24のプロジェクトの応募があったこと、{4}SPGメンバーによる評価及び審査の結果、12のプロジェクトに対する支援の案がとりまとめられたこと等が説明された。
(2)平成9年度の決算報告及び平成10年度予算の検討及び平成10年度支援プロジェクトの検討
 平成9年度においては約1億1,500万円の予算によりAPNとしての活動を行ったことが報告された。また、平成10年度においてはほぼ同規模の1億2,300万円の予算により活動を行うこと、加えて米国からの支援が27万5千ドル予定されていることが報告された。
 さらに、SPGから推薦のあった12のプロジェクトをAPNとして支援すること等が合意された。
 今回の会合で合意された支援プロジェクトのうち主なものは以下のとおりである。
a.地球環境変化の人間社会的側面研究に関連した活動
{1}第3回人間社会的側面研究オープン会合の組織委員会
平成11年に日本で開催される第3回人間社会的側面研究オープン会合の企画・プログラムの検討等を行う組織委員会の開催を平成9年度に引き続き支援する。
{2}アジア太平洋地域温暖化対策統合評価モデル(AIM)トレーニングワークショップ
AIMをアジアの途上国においても政策決定等に活用できるよう、中国、インド及びその周辺国の研究者を対象としたトレーニングワークショップを開催することに対し、APNとして支援する。
b.地域気候モデル構築
平成9年度に引き続き支援するもので、これまでの成果は地域の研究能力の向上に大きく貢献しているとして各メンバーから高い評価を受けた。平成10年度においては、フェローシップの派遣、トレーニングコースの実施、データベースシステムの整備等が行われる。
c.海洋・沿岸地域研究国際ワークショップ
地球環境変化が海洋生態系、漁業資源、沿岸地域に与える影響に関する研究を進めるための国際ワークショップをSTARTと共同して支援する。
d.アジア太平洋地域におけるエアロゾル研究国際ワークショップ
温室効果ガスやエアロゾルの計測、土地利用変化がこれらの排出に及ぼす影響に関する研究を進めるための国際ワークショップをSTARTと共同して支援する。
 その他の支援プロジェクトは、東アジアの土地利用変化に関する研究、アジア太平洋地域の湿地の脆弱性に関する研究、環境負荷の少ない産業への転換に関する研究国際ワークショップ等である。
(3)APN支援プロジェクトの選定手続き・クライテリア及びAPN組織規定の改訂、APN会計規則の制定
 APN支援プロジェクトの選定手続き・クライテリア及びAPN組織規定については、一部の改訂を行いたい旨事務局より説明を行い、2つのワーキンググループに分かれて討議された結果、改訂することが合意された。
また、APN会計規則については、今回の政府間会合において初めて詳細な内容が事務局より提案され、効果的な運用がなされるよう一部修正を加えた上合意された。
(4)中長期的なAPNの活動方針について
 APNの今後の方向について議論を行い、出席者から広範な意見が出され、引き続きAPN事務局で調整することが確認された。合意の主なものは以下のとおり。
 現在までにAPNで行ってきた活動は関係者から高く評価されているため、参加各国政府からの資金的支援を増加する必要がある。
 特に地球温暖化問題等にみられるように、地球環境問題解決のためには先進国、途上国が共同して努力することが必要であり、APNとしてさらに積極的に活動を拡大していく必要がある。
 APNが支援する活動をより効果的なものとするため、次回政府間会合までにAPN戦略的活動計画を作成する必要がある。
(5)その他
 次回政府間会合は日本で開催されることとされた。
連絡先
環境庁企画調整局地球環境部環境保全対策課研究調査室
(03-3581-3351)
 室 長 :森    秀行(内線6743)
 補 佐 :宇仁菅伸介(内線6746)
 主 査 :外山  洋一(内線6747)