報道発表資料

この記事を印刷
1996年11月25日

営巣分散予定地におけるアホウドリの産卵確認について

環境庁が(財)山階鳥類研究所に委託して取り組んできたデコイによるアホウドリ誘致事業の結果、営巣分散予定地において、昨年1つがいによる産卵が初めて確認されたのに引き続き、今年は2つがいによる産卵が確認された。

1 確認された事項

 確認日    平成8年11月10日、13日
 産卵確認場所 伊豆諸島鳥島初寝崎付近北西斜面
 確認卵数   2個(各つがい1個、通常1回に1卵を産む)
 つがい    足輪の観察から
1 雄:1990年生まれ(6才)、雌:1991生まれ(5才)
(昨年産卵したのと同じつがい)
2 雄:1990年生まれ(6才)、雌:足輪なく年齢不明
 確認者    (財)山階鳥類研究所研究員 佐藤 文男 氏
(今回の調査は、(財)山階鳥類研究所に対するサントリー株式会社からの寄付によって行われたもの)

(参考)昨年の状況
 平成7年12月3日に、長谷川 博氏(野生生物保護対策検討会アホウドリ保護増殖分科会委員:東邦大学講師)により産卵が確認され、本年2月に(財)山階鳥類研究所によりふ化が、また6月10日には巣立ちが確認されている。

2 鳥島におけるアホウドリ保護増殖事業

 鳥島の既存営巣地(燕崎)は火山砂の堆積した急斜面1箇所のみ。しばしば大雨等に伴う営巣地への土砂の流入により、卵やヒナの死亡事故や営巣環境の悪化が生じている。
 環境庁では昭和56年以降、ハチジョウススキの植栽、土留工事など数度の営巣地の安定化事業を行い繁殖成績を引き上げることに成功してきた。その一方で、既存営巣地の立地の不安定さから、島内のより繁殖に適する他の場所への営巣地の分散が不可欠と判断し、平成4年より、(財)山階鳥類研究所に委託して初寝崎付近北西斜面でのデコイによる誘致を行ってきた。デコイによる誘致効果により、平成4-5年の繁殖期から営巣分散予定地への着陸が確認され始め、本年2月には、初めてのヒナのふ化が確認されていた。

3 アホウドリについて

  • 日本近海で繁殖する北半球最大の海鳥(羽を広げると約 2.4mになる)。
  • 明治時代に羽毛目的に乱獲され急減。昭和24年には絶滅したと報じられる。
  • 昭和26年に伊豆諸島鳥島、昭和46年に尖閣諸島で生存が確認された。
  • 平成5年、絶滅のおそれのある野生動植物の種の保存に関する法律に基づく国内希少野生動植物種に指定された。
  • 推定生息数 700~ 800羽
  • 鳥島が最大の繁殖地で、10月に飛来し、交尾・産卵・育雛を行い翌年5月には全ての個体が島を去る。

*写真提供:(財)山階鳥類研究所
*映像提供:サントリー株式会社

連絡先
環境庁自然保護局野生生物課
課長:小林 光  (6460)
 担当:安田・長田(6464)