報道発表資料

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2004年03月26日
  • 地球環境

アジア太平洋地球変動研究ネットワーク(APN)第9回政府間会合の結果について

 アジア太平洋地球変動研究ネットワーク(APN)第9回政府間会合(第9回科学企画グループ会合との合同セッション)が、3月22~24日、オーストラリア・キャンベラにおいて開催されました。
本会合では、APNが支援するプロジェクトの決定、途上国の地球変動研究に関する能力開発、平成16年度における予算案の採択、APN設立10周年に向けた次期戦略の検討等が行われました。
 次回、APN第10回政府間会合は、10周年を記念し、平成17年4月12~14日に神戸市で開催することとなりました。
 

1.APN(アジア太平洋地球変動研究ネットワーク)について

 世界的な協力が必要な地球変動研究の推進のため、各国政府は、世界を「南北アメリカ」、「欧州・アフリカ」及び「アジア太平洋」の3地域に分けて、地球変動研究の支援ネットワークを形成している。APNはアジア太平洋地域の政府間組織として1996年に設立され、現在、21カ国が参加している。
 APNは、アジア太平洋地域における「地球変動研究の推進」、「途上国の地球変動研究への参加促進」、「研究者と政策決定者との連携強化」を目的としている。
 我が国は、APNの立ち上げ段階において事務局を務める(現在は、神戸のAPNセンターが事務局)とともに、現在に至るまで最大の支援国として中心的な役割を担ってきている。

2.会合の概要

(1) 開催日
平成16年3月22~24日の3日間
(2) 開催場所
キャンベラ(オーストラリア)
(3) 参加者
[1] アジア太平洋地域各国の政府代表
オーストラリア、バングラデシュ、カンボジア、中国、インド、インドネシア、日本、ラオス、マレーシア、モンゴル、ネパール、ニュージーランド、パキスタン、フィリピン、韓国、ロシア、スリランカ、タイ、米国、ベトナム
(計20カ国)
 我が国からは、環境省竹本大臣官房審議官、地球環境局高橋研究調査室長、外務省総合外交政策局国際科学協力室金子事務官、茨城大学三村教授、国立環境研究所飯島理事らが出席した。
[2] 関係国際機関等
地球変動に関する分析・研究・トレーニングのためのシステム(START)、米州地球変動研究機関(IAI)、地球圏-生物圏国際協同研究計画(IGBP)、地球環境変化の人間的側面研究計画(IHDP)、生物多様性科学国際共同プログラム(DIVERSITAS)

3.概要

 ホスト国オーストラリアのボースウィック環境省次官の開会挨拶、山村APN事務局長のスピーチに続いて、共同議長のストダット氏(オーストラリア)らにより議事が進められた。  会合の結果概要は以下のとおりである。
(1) 総論
[1] APNは、運営方針、予算等を議論する政府間会合(IGM)と、支援プロジェクトを専門的な見地から評価する科学企画グループ会合(SPG)により、次年度の活動を決定している。今次会合では、IGMとSPGの合同セッションという形式を初めて試みた。合同セッションにおいては、APNの成果、課題、将来の在り方等について、各国の政府代表と研究者代表者の間で忌憚のない活発な議論が行われ、APNの目的の一つである「地球変動科学と政策決定者との連携強化」の実現に向けたステップとなった。
[2] 今次会合におけるもう一つの特徴は、多くの途上国の代表やAPN地域連絡員(オセアニア、南アジア、東南アジア、東アジア)から、能力開発、APNのプロジェクト決定システム、財政問題等に関し、積極的に発言を行う等、先進国と途上国のパートナーシップについての一定の進展が見られた。
[3] ヨハネスブルグサミットにおいてタイプIIパートナーシップイニシアティブとして登録されたCAPaBLE(持続可能な開発に向けた途上国の研究能力開発・向上プログラム)は、前回IGMで合意され、今年度から開始された。SPGセッションにおいて、国立環境研究所飯島理事より、我が国主導で進められている「温室効果ガスインベントリーに関する能力開発プロジェクト」の紹介があり、出席者の注目を集めた。また、各国よりCAPaBLEに対する強い期待が寄せられた。
(2) 平成16年度支援プロジェクトの決定
 平成16年度の支援プロジェクトに対して、各国より48課題の新規課題の申請があった。厳格な審査を経て、科学企画グループ会合(SPG)から政府間会合(IGM)に対し、支援プロジェクトの推薦があり、原案どおり決定された。内訳は以下のとおり。(新規課題の詳細は、別紙参照)
 新規: 11課題(日本人研究者がプロジェクトリーダーを務める件数:3課題)
 継続: 7課題
 シード課題からの支援プロジェクトへの移行:1課題
 新規申請課題のうちCAPaBLEへの移行:1課題
(3) CAPaBLE(持続可能な開発に向けた途上国の研究能力開発・向上プログラム)
 事務局から、本年度に開始されたCAPaBLEプログラムの報告が行われた。現在、気候変動に関する科学的能力向上プロジェクトが8件(日本がリードしているものは2件)、途上国有力研究者の能力強化を目指した国際共同研究プロジェクトが2件進められている。
これらの活動は2007年に策定予定のIPCC(気候変動に関する政府間パネル)第4次評価報告書への貢献が期待されること、本プログラムにはAPN加盟国の76%が関わっており、アジア太平洋地域の途上国の能力開発が幅広く期待されること等の報告が行われ、途上国の出席者からも本プログラムに対し、強い期待が寄せられた。
(4) 平成16年度予算案の採択等
 事務局から、平成16年度のAPN活動に関する予算案(約2億3100万円)が提示され、原案とおり採択された。APNに対する拠出国は、日本、米国、オーストラリア、ニュージーランドである。このうち、日本(環境省及び兵庫県)の拠出額は約1億9000万円である。
 我が国から、APNに対する各国のオーナーシップを高めるため、各国からの資金拠出の拡大が必要である旨を強調した。
 なお、平成16年度より、我が国のAPNへの支援を拠出金とし、APNの会計が地球環境戦略研究機関(IGES)の特別会計に移管されることとなった。今後、APNの資金について、柔軟かつ透明な運用が一層促進されることが期待され、各国より歓迎された。
(5) APNの将来の在り方についての検討
 次回政府間会合は、APN設立10周年という節目に当たっており、第2次APN戦略計画の策定が行われることになっている。このようなタイミングを踏まえ、APNについての評価、将来の在り方について、活発な議論が行われた。
 我が国からは、1996年の設立移行、APNの活動は着実に進歩を遂げたものの、APNの目的のうち、「途上国の地球変動研究への参加促進」、「研究者と政策決定者との連携強化」という2点については成長の余地があること、これらの課題の解決に向け、各国が協力していくことが必要である旨、発言した。各国からは、我が国のこれまでの貢献を感謝するとともに、若手研究者の育成を含めた能力開発、APNの成果の一層の普及と各国における認知度の向上、地球環境変動に伴うリスクへの対応等の政策ニーズに即したテーマの設定が必要である旨、発言があった。
 なお、APN事務局から、今年4月に東京にて開催される「第4回地球観測に関する作業部会」において、APNの地球観測に関する取組を紹介するためのパネル展示を行う旨報告があり、各国から歓迎を受けるとともに、アジア太平洋地域の地球観測に関するAPNの重要性が強調された。
(6) 次回会合
 我が国より、次回の第10回政府間会合を来年4月12~14日に神戸市で開催することを提案した。本提案は各国より歓迎され、合意された。

添付資料

連絡先
環境省地球環境局総務課研究調査室
室長: 高橋 康夫(内線6730)
 補佐: 竹本 明生(内線6731)
 担当: 小沼 信之(内線6734)

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