報道発表資料

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2004年02月09日
  • 保健対策

平成14年度化学物質環境汚染実態調査結果について

環境省は、2月2日開催の中央環境審議会環境保健部会化学物質評価専門委員会(鈴木継美委員長、東京大学名誉教授)での審議を経て、平成14年度化学物質環境汚染実態調査結果を取りまとめた。本調査は、昭和49年より実施しており、平成14年度は初期環境調査、暴露量調査及びモニタリング調査より構成される調査を実施した。
 経緯及び調査結果の主な内容は以下のとおりである。なお、調査結果の概要については環境省ホームページで公表し、詳細については平成15年度版「化学物質と環境」(通称「黒本」)として発刊することとしている。

(1) 経緯
 「化学物質環境汚染実態調査」(いわゆる黒本調査)は、昭和48年の「化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律」(以下、「化学物質審査規制法」という。) の制定時に、既存化学物質について一般環境中の残留状況の把握を目的として開始し、昭和54年度から、「プライオリティリスト」(優先的に調査に取り組む化学物質の一覧)に基づき「化学物質環境安全性総点検調査」を実施し、その他関連調査として生物モニタリング、非意図的生成化学物質汚染実態追跡調査、水質・底質モニタリング及び指定化学物質等検討調査が拡充されてきたところである。
  一方、「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」(以下、「PRTR法」という。)の施行や「残留性有機汚染物質に関するストックホルム条約」(以下、「POPs条約」という。)の採択など化学物質と環境問題に係る状況の変化と今日的な政策課題に対応するため、新たな視点に立って再構築を図る必要があることから、本調査について平成13年度から見直しを進め、「第3回中環審化学物質評価専門委員会(平成14年5月22日開催)」において「化学物質環境汚染実態調査(黒本調査)の見直しについて」が了承された。
  平成14年度からは、見直しの方針に基づき、本調査の結果が環境中の化学物質対策により有効に活用されるよう、「化学物質環境汚染実態調査物質選定検討会」を設置し、リスク管理担当部署及び専門家からの要望物質の中から調査物質を選定して、初期環境調査、暴露量調査及びモニタリング調査という目的別の調査を実施している。(図1、図2)。


(2) 調査

[1] 調査対象物質の選定
   調査対象物質については、平成14年度から「化学物質環境汚染実態調査物質選定検討会」を開催し、各担当部署から要望があった物質及びその他調査が必要な物質として学識経験者からの意見があった物質を対象候補として、これら候補物質を有害性知見、PRTRデータ、環境残留性予測、分析技術の実現性、社会・行政的必要性の観点から、想定される暴露経路や媒体間の関連等も考慮して、初期環境調査、暴露量調査及びモニタリング調査の対象物質を選定した。

[2] 調査内容
  初期環境調査
     化学物質審査規制法指定化学物質やPRTR制度の候補物質、非意図的生成物質、環境リスク評価及び社会的要因から必要とされる物質等を対象として、環境残留状況を把握するための調査である。また、必要に応じて分析法の開発や結果の評価を行った。平成14年度は、エピクロロヒドリン、クロロジフルオロメタン、ブロモメタンなど13物質(群)について調査対象とした。また、クロルデコンなど8物質(群)について分析法開発に着手した。
 この調査における検体採取・調製、分析及び分析法開発は、自治体(都道府県及び政令指定都市)の調査機関(58機関)において実施された。
     * : 新規に調査した物質
 
  暴露量調査
     環境リスク評価に必要なヒト及び生物の化学物質の暴露量を把握するための調査である。平成14年度は、1,2-ジクロロベンゼン、ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)、ペルフルオロオクタン酸(PFOA)、ポリ塩化ナフタレン、臭素化ジフェニルエーテル類、ベンゾ[a]ピレンの6物質(群)について調査対象とした。この調査における検体採取・調製は都道府県及び政令指定都市の調査機関(58機関)において、分析は民間調査機関(3機関)及び自治体調査機関(1機関)において実施された。
     * : 新規に調査した物質
 
  モニタリング調査
     POPs条約対象物質並びに同条約対象候補物質、化学物質審査規制法第1、2種特定化学物質及び指定化学物質のうち、環境残留性が高く、環境基準等が設定されていない物質で、環境実態の経年的把握が必要な物質を対象として実施するモニタリングである。平成14年度は、POPsとして8物質(群)、その他有機すず化合物など10物質(群)について調査対象とした。この調査における検体採取・調製は都道府県及び政令指定都市の調査機関(58機関)において、分析は民間調査機関(3機関)において実施された。

[3] 調査結果
  初期環境調査(表1)
      今回の調査では、13物質(群)中9物質(群)(エピクロロヒドリン(大気*1)、1-オクタノール(水質*1、底質*1、生物*1)、クロロジフルオロメタン(大気*1)、ジニトロトルエン(大気*1)、テレフタル酸(水質、底質)、ニトロベンゼン(水質、底質、大気)、ポリ塩化ターフェニル(水質、底質、生物)、メタクリル酸(大気*1)メチル-tert-ブチルエーテル(水質*1))が検出された。
 これまでの調査の累計(昭和49年度~平成14年度)では、801物質(群)*2について調査が行われ、そのうち346物質(群)*2が検出されたこととなる。
     *1 : その媒体で新規に検出された物質
    *2 : 内2物質(ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)、ペルフルオロオクタン酸(PFOA))は暴露量調査において実施。
 
  暴露量調査(表2)
      今回の調査では、6物質(群)中6物質(群)(1,2-ジクロロベンゼン(水質、底質、大気)、ペルフルオロオクタンスルホン酸(PFOS)(水質)、ペルフルオロオクタン酸(PFOA)(水質)、ベンゾ[a]ピレン(水質、底質)、ポリ塩化ナフタレン(水質、大気、食事)、ポリ臭素化ジフェニルエーテル(水質、底質))が検出された。
     *:新規に検出された物質
 
  モニタリング調査(表3)
     今回の調査では、POPs8物質(群)(PCB類、ヘキサクロロベンゼン(HCB)、アルドリン、ディルドリン、エンドリン、DDT類、クロルデン類、ヘプタクロル)及びヘキサクロロシクロヘキサン(HCH)について高感度分析法を用いて、水質38地点、底質63地点、生物(魚類、貝類、鳥類)23地点及び大気34地点において調査を実施した。鳥類でアルドリンが不検出であったが、全ての物質が水質、底質、生物(魚類、貝類)及び大気から検出された。
 また、有機すず化合物は、底質63地点及び生物(魚類、貝類、鳥類)23地点において調査を実施した。鳥類からは検出されなかったが、底質及び生物(魚類、貝類)から検出された。

[4] 調査結果の活用
   各調査結果は、「化学物質と環境」として出版され、環境中の化学物質対策の基礎情報として、環境省、関係省庁及び地方自治体等において活用されることとなるが、特に、個別調査の結果については、初期環境調査結果において検出された物質は環境リスク初期評価の対象候補として、暴露量調査結果はリスク(初期)評価のための暴露量推定の基礎資料として、モニタリング調査結果はPOPs条約の監視や条約候補対象物質選定の基礎データとして活用することとしている。



環境保健部 行政資料
化学物質環境汚染実態調査物質選定検討会 (調査結果の概要)

添付資料

連絡先
環境省総合環境政策局環境保健部環境安全課
課長   :安達 一彦
 保健専門官:中嶋 徳弥(内線6361)
 調査係長 :榎本 康敬(内線6355)

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