報道発表資料

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1998年09月11日

森林に関する政府間フォーラム(IFF)第2回会合の結果について

8月24日から9月4日までスイス(ジュネーブ)において、森林に関する政府間フォーラム(IFF)の第2回会合が開催された。
 会合では、森林条約等の森林問題に関する国際的な取決め・メカニズム等について検討が行われ、報告書等が取りまとめられた。
 森林条約の必要性に関する各国の立場は、基本的には従来と大きな変化はなく、次回の第3回会合で実質的な討議が行われる予定。

1.今回の会合の概要

  • (1)参加国等

    約60のメンバー国、約20のオブザーバー国、ITTO、FAO等関係国際機関、NGO等の参加を得て開催された。

  • (2)検討項目

    第1回会合(97年10月にニューヨークで開催)で決定された以下の検討項目について討議した。

    • [1].a IPF行動提案(参考を参照。)の実施促進方策(実質討議)
    • [1].b 持続可能な森林経営の進捗状況のモニター(事前討議)
    • [2].a 新たな国際基金の創設、その他の資金調達方法(事前討議)
    • [2].b 貿易と持続可能な森林経営の調和方策(実質討議)
    • [2].c 持続可能な森林経営のための環境保全上適正な技術移転の方策(実質討議)
    • [2].d その他のIPF検討項目で更なる検討が必要な事項の検討(事前討議)
    • [2].e 国際機関、森林関連諸条約の役割、活動等の分析(実質討議)
    • [3]. 国際的な取決め及びメカニズムの検討(事前討議)
  • (3)検討結果

    今回「実質討議」が行われた項目については、報告書がとりまとめられたが、貿易問題([2].a)や技術移転問題([2].c)などでは議論が紛糾し、多くの文章に括弧が付されたままとなり、次回の会合で引き続き検討が行われることと なった。なお、「事前討議」が行われた項目については、各国の主張が議長サマリーとしてとりまとめられた。

  • (4)森林条約等の国際的な取決め・メカニズムについて

    森林条約等の国際的な取決めやメカニズムに関する議論では、従来どおり、カナダ、EU等が条約作成に前向きな姿勢を見せたが、米、ブラジル等が慎重な姿勢をとり、今回の会合では、今後分析が必要な項目等がとりまとめられた。

  • (5)今後の動向

    今後、来年5月に第3回会合(ジュネーブ)、2000年2月に第4回会合 (ニューヨーク)が開催されて森林条約等の国際的な取決め等に関するコンセンサスづくりが行われ、2000年のCSD(持続可能な開発委員会)会合にその結果が報告される予定。

2.検討項目ごとの検討結果

  • (1)IPF行動提案の実施促進([1].a)

    森林問題に関する今後の国際的な取組は、IPF行動提案の実施促進が基本であるとの考え方が共通認識となっており、各国、関係国際機関等が協力して本行動提案の実施促進を図ることとされた。

    特に、6ヶ国イニシアチブ(イギリス、ドイツ、フィンランド、インドネシア、ホンジュラス、ウガンダによるIPF行動提案実施促進に関するイニシアチブ。今年6月に行動提案の整理分析、実務のためのガイドラインの取りまとめ等が行われた。)が各国に歓迎された。

    また、低森林被覆国における取組促進の重要性が指摘された。

  • (2)IPF行動提案の実施促進のモニター([1].b)

    IPF行動提案の実施促進のため、進捗状況のモニタリング、データ収集、評価、報告等について討議が行われ、既存の報告システム等との重複を避けること、FAO、ITTO等関係国際機関の間で協力・調整を行うこと、実施のための費用を考慮し、特に途上国の国際協力や能力形成を図ること等が指摘された。

  • (3)資金問題([2].a)

    途上国は1992年の「森林原則声明」で合意された「新規かつ追加的な資金の供与」が実現していないことを指摘し、新たな国際的な森林基金の設立を求めた。

    しかし、先進国は既存の資金メカニズムの活用等を求め、事務局が既存の国際的な資金メカニズム等について評価を行い、その結果を第3回会合に報告することとなった。

  • (4)貿易と環境([2].b)

    貿易問題に関しては、特に貿易自由化と持続可能な森林経営との関係について議論が紛糾し、今回は実質討議であったにも関わらず報告書全体が括弧付きとなった。第3回会合で引き続き討議される予定。

  • (5)技術移転([2].c)

    途上国は環境上適正な技術が有利な条件で途上国に移転されるべきことを主張し、技術移転を促進するメカニズムの設立を提案したが、EU等の先進国がこれに反対した。

    技術移転の報告書についても多くの部分が括弧付きとなり、次回会合で引き続き討議されることとなった。

  • (6)その他のIPF検討項目([2].d)

    その他のIPF検討項目として、森林減少の根本原因、森林に関する伝統的知識、森林保全と保護地域、研究の優先事項等について事前討議が行われ、各国の認識や取組状況等について報告が行われた。

  • (7)既存の条約、国際機関の分析([2].e)
    • ・国際的な取決めについての討議(検討項目[3])に資するため、生物多様性条約、気候変動枠組条約等の既存の森林関連の条約等の関係や関連国際機関の役割、活動内容等について討議が行われた。
    • ・条約づくりに積極的なカナダは、現在の森林に関する取組が断片的であることを指摘したが、NGO等は、既に十分な国際的なメカニズムが存在しており、必要なのは取組を着実に実施していく意志であることを指摘した。
    • ・今後、事務局により既存の条約等に関してさらに詳細な分析が行われ、第3回会合で報告されることになった。
  • (8)国際的な取決め及びメカニズムの検討([3])
    • ・森林条約等の国際的な取決めに関しては、今回の会合では、具体的な内容等についての議論は少なく、概念的な議論が中心となった。関係国の立場は、従来と基本的には大きな変化はなく、カナダやコスタリカがその必要性を支持し、EUも条約作成を促進する立場をとったが、米、ブラジル等は慎重な姿勢をとった。
    • ・わが国は、現時点では検討すべき課題が多いため、国際的なコンセンサス形成の必要性を指摘した。
    • ・また、会合にオブザーバー参加したグリーンピース等のNGOは、すでに森林に関連した条約等が数多く存在すること等を理由に、新たな条約づくりには懐疑的な立場をとった。
    • ・国際的取決めの具体的な要素の検討に関しては、カナダ及びコスタリカが99年3月に専門家会合を開催してIFF第3回会合にその成果を報告することを表明し、多くの国がこのイニシアチブを歓迎した。
    • ・今後、事務局が課題[2].eに関して行う分析とあわせ、既存の取決めやメカニズムの役割、効果、関連等を明確にするための分析を行うこととなった。その結果や各国によるイニシアチブの成果をもとに、次回会合で実質討議が行われる予定。

3.今後の動向

  • ・次回の第3回会合は、来年5月にジュネーブで開催される予定。それまでの間、森林条約の具体的要素の検討についてのカナダ・コスタリカのイニシアチブ、森林保護地域についての米国・ブラジルのイニシアチブ(来年3月にプエルトリコで専門家会合を開催。)等により、様々な森林問題に関して国際的な検討が進められ、それらの成果が第3回会合に報告される見通し。
  • ・また、第4回会合は、2000年2月~3月にニューヨークで開催され、最終的な報告書がとりまとめられて同年のCSD会合に提出される予定。

IPF(森林に関する政府間パネル)について       (参考)

  • ・1995年4月に開催された第3回国連持続可能な開発委員会(CSD)では、森林分野の広範な課題について検討を行い、第5回CSD会合にその結果を報告することを目的として、CSDの下に「森林に関する政府間パネル(IPF)」を設置することが決定された。
  • ・IPFでは、95年9月の第1回会合以降計4回の会合において森林問題に関する各種の課題についての検討が行われた。
  • 97年2月の第4回会合では、国家森林プログラムの策定、世界的な森林資源の評価等に関して約150の「行動提案」を盛り込んだ報告書がとりまとめられた。
  • ・IPFの報告書は、97年4月の第5回CSD及び同年6月の国連環境開発特別総会(UNGASS)に提出された。
  • ・UNGASSでは、さらに、「行動提案」の実施促進、資金問題や技術移転問題等の検討、森林条約などの国際的な取り決め等の検討・コンセンサスづくり等を行い、99年及び2000年のCSD会合にその結果を報告することを目的として、CSDの下に新たに「森林に関する政府間フォーラム(IFF)」を設置することが決定された。
連絡先
環境庁企画調整局地球環境部環境保全対策課
課長   :竹内 恒夫 (内線6740)
 調整官  :谷津 龍太郎(内線6283)
 課長補佐 :藤田 賢二 (内線6286)