報道発表資料

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2003年12月19日
  • 地球環境

平成13年度海洋環境モニタリング調査結果について

環境省では、平成13年度の海洋環境モニタリング調査の結果をとりまとめた。このモニタリング調査では、「陸域を起源とする汚染」と「廃棄物等の海洋投入処分による汚染」を把握するため、調査地点における水質、底質及び海洋生物に蓄積される汚染物質等の生体濃度等について調査した。
 今回の調査では、重大な海洋環境への影響は認められなかったが、海洋環境の経年的変化等を把握するため今後も継続して調査し、総合的な解析を実施していく予定としている。


<調査結果の概要>

 環境省では、昭和50年度から平成6年度まで実施してきた「日本近海海洋汚染実態調査」で得られた調査結果を基礎としつつ、さらに、国連海洋法条約が我が国で発効したことを受け、従来の水質、底質等の調査に海洋生態系等を対象に加え調査内容を拡充した「海洋環境モニタリング調査」を平成10年度から実施しているところである。この海洋環境モニタリング調査では、日本周辺の海域を3~5年で一巡するように調査計画を組んでいる。
 今回報告する調査結果は、平成13年12月に実施した海洋環境モニタリング調査において、調査海域の水質、底質及び生体試料に関し、一般項目、重金属類、有機塩素化合物、有機スズ化合物、ダイオキシン類、炭化水素等の分析結果をまとめたものである。(調査海域については図1参照)
 

  1. 陸域起源の汚染を対象とした調査

     九州北岸(F測線)及び北日本西岸(H測線)の海岸から沖合に向けてそれぞれ7点及び5点の水質及び底質並びにムラサキイガイ等の生体中濃度の分析を行った。
    水質調査結果
       重金属類の濃度の測定値は、過去の調査と同様、全体的に低いレベルで、沖合方向にはっきりとした傾向が見られなかった。
    底質調査結果
       F測線では、特徴的な傾向がみられ、カドミウム、鉛、銅、全クロムは沿岸から沖合にかけて高くなる傾向があった。一方、全体的に低いレベルであるが、全水銀は最も岸に近いF-1、PCBとダイオキシン類はF測線の調査点の中間位置にあるF-4で最も高い値を示していた。
     H測線では、カドミウム、鉛、銅の分布について、はっきりとした傾向が見られなかった。一方、全体的に低いレベルであるが、全水銀は最も沖合のH-5、全クロムは岸側に寄ったH-2、ダイオキシン類は、H測線の調査点の中間位置にあるH-3で最も高い値を示していた。
    生体濃度調査結果
       これまでに3年分以上のデータが得られているムラサキイガイ、底生性サメ類、イカ類、タラ類について、海域間の統計的な比較の結果、海域間で生体濃度に差があるものの、いずれも過去の他の調査研究(環境庁「平成10年度ダイオキシン類緊急全国一斉調査結果」等)結果の範囲内であった。

     
  2. 廃棄物の海洋投入処分による汚染を対象とした調査

     九州東岸において投入処分地点3点とその影響を受けると考えられる影響点2点、投入処分の影響を受けないと考えられる対照点3点合計8点の調査を行った。
    非水溶性の廃棄物等の投入海域(海防法上のB海域にあたる海域)
       B海域に投入処分できる基準は、投入処分後、すみやかに沈降し、現場海域が環境基準を満たすことができる濃度に設定されている。従って、海洋への影響については、投入処分されている非水溶性無機性汚泥の拡散について確認できる濁度が良い指標と考えられる。
     濁度の調査結果は、投入点及び対照点ともに低く1mg/L未満(定量下限値未満)であり、廃棄物の投入処分による影響は検出されないレベルであることが分かった。
    沿岸50海里以遠の水溶性の廃棄物の投棄海域(海防法上のC海域にあたる海域)
       投棄物質であるし尿、有機性汚泥の影響を検出する上で指標となる物質、直鎖アルキルベンゼン及びコプロスタノールが今回の調査海域において検出された。
     しかし、海洋投入処分の投入点だけではなく、投入処分の影響を受けないと想定した対照点においても検出されていることから、[1]対照点も海洋投入処分の影響を受けている可能性がある、[2]陸域からの影響を受けている可能性があると考えられる。
     このため、対照点の配置を再検討するとともに、今後、陸域からの汚染と区別できるようにバックグラウンドの把握を含めた調査を実施していくこととする。

添付資料

連絡先
環境省地球環境局(旧)環境保全対策課
課長 荒井 真一(内線6740)
 補佐 水野 理 (内線6741)
 係長 長崎 孝俊(内線6746)
 担当 中田有宇子(内線6746)

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