報道発表資料
- 環境省は、ダイオキシン類対策特別措置法に基づき平成14年度に国及び地方公共団体が実施した、全国の大気、水質(底質を含む。)及び土壌のダイオキシン類環境調査結果を取りまとめた。
- 調査結果の概要は以下のとおりである。
環境媒体 地点数 環境基準超過地点数 平均値* 濃度範囲* 大気** 966地点 3地点(0.3%) 0.093pg-TEQ/m3 0.0066~0.84pg-TEQ/m3 公共用水域***
水質1,976地点 56地点(2.8%) 0.25pg-TEQ/L 0.01~2.7pg-TEQ/L 公共用水域***
底質****1,553地点
757地点26地点
18地点(2.4%)11pg-TEQ/g 0.0087~640pg-TEQ/g 地下水質 1,310地点 1地点(0.08%) 0.066pg-TEQ/L 0.011~2.0pg-TEQ/L 土壌***** 3,300地点 0地点(0%) 3.8pg-TEQ/g 0~250pg-TEQ/g *: 大気、公共用水域(水質、底質)及び地下水質における平均値は各地点の年間平均値の平均値であり、濃度範囲は年間平均値の最小値及び最大値である。土壌については、各地点につき1回の調査を行っている。 **: 大気については、全調査地点(989地点)のうち、夏季及び冬季を含め年2回以上調査した 地点についての結果であり、環境省の定点調査結果及び大気汚染防止法政令市が独自に実施 した調査結果を含む。 ***: 公共用水域(水質、底質)は地方公共団体が測定した結果をとりまとめたものである。 ****: 底質については、環境基準が設定され、平成14年9月1日から施行されている。表中下段は、環境基準施行後の調査地点数及び環境基準超過地点数。 *****: 土壌については、一般環境把握調査及び発生源周辺状況把握調査についての結果であり、調査指標確認調査等の結果は含まない。 - ダイオキシン類の環境中への排出は年々減少しており、これに伴い、大気中の濃度は低下傾向にあり、大気環境基準の達成率は向上している。大気の環境基準超過地点の割合は、平成13年度の0.8%から0.3%と0.5ポイント減少した。
また、公共用水域水質及び底質の濃度は、継続調査地点でみると昨年度と同程度であった。 - 現在、ダイオキシン類対策特別措置法に基づき、ダイオキシン類の環境中への排出の一層の低減に努めているほか、環境基準超過地点等では、各地方公共団体等において所要の調査、対策が検討され、取組が行われているところである。平成15年度以降においても、これらの地点を考慮して環境調査が実施されることとなる。
1.はじめに
全国規模での環境中のダイオキシン類調査については、平成9年4月に施行された改正大気汚染防止法に基づき、平成9年度から地方公共団体により大気環境モニタリングが実施されているほか、旧環境庁においても、平成10年度に「ダイオキシン類全国緊急一斉調査」で大気、公共用水域水質・底質、地下水質及び土壌について、平成11年度に「平成11年度公共用水域等のダイオキシン類調査」で公共用水域水質・底質及び地下水質について調査してきているところである。
その後、平成12年1月にダイオキシン類対策特別措置法(以下「法」という。)が施行され、都道府県知事及び法の政令市(以下「政令市」という。)の長は、大気、水質(水底の底質を含む。)及び土壌のダイオキシン類による汚染の状況を常時監視し、その結果を環境大臣に報告することとされた。
これにより、法に基づく常時監視として、平成12年度から全国的に、大気、公共用水域水質・底質、地下水質及び土壌のダイオキシン類に係る調査が実施されている。
本資料は、平成14年度に実施されたダイオキシン類常時監視の結果として、都道府県知事等から環境大臣に報告されたダイオキシン類環境調査結果等を取りまとめたものである。
2.調査地点数及び検体数
平成14年度の各環境媒体における調査地点数及び検体数を表1に示した。
(1)大気
平成14 年度の大気調査は、全国989地点、3,870検体について行われた。
これらの調査地点は、平成9年度から大気汚染防止法に基づきダイオキシン類のモニタリングが実施されてきた地点を考慮して、都道府県及び政令市により選定され、調査が実施されたもののほか、環境省自らが定点調査している地点及び大気汚染防止法政令市が独自に調査している地点を含んでいる。
また、989地点のうち966地点において、夏季及び冬季を含む年2回以上の調査が実施された。
(2)公共用水域水質
平成14年度の公共用水域の水質調査(地方公共団体測定分)は、全国1,976地点(河川1,458地点、湖沼76地点、海域442地点)、2,428検体について行われた。
これらの調査地点は、水域を代表する地点を原則としつつ、ダイオキシン類の発生源及び排出水の汚濁状況、利水状況等を考慮して、都道府県及び政令市により効果的な監視のできる地点として選定され、都道府県等で調査が行われた。
(3)公共用水域底質
平成14年度の公共用水域の底質調査(地方公共団体測定分)は、全国1,553地点(河川1,133地点、湖沼60地点、海域360地点)、1,590検体について行われた。
これらの調査地点は、公共用水域の水質調査地点と同一地点を原則としつつ、都道府県及び政令市により地点が選定され、都道府県等によって調査が行われた。
(4)地下水質
平成14年度の地下水質調査は、全国1,310地点、1,312検体について行われた。
これらの調査地点は、ダイオキシン類の発生源周辺及び地下水の利水状況等を考慮して、都道府県及び政令市により地域の地下水質の概況を把握できる地点として選定され、調査が行われた。
(5)土壌
平成14年度の土壌調査は、一般環境把握調査及び発生源周辺状況把握調査が、全国3,300地点、同数の検体について行われた。これらの調査地点は、ダイオキシン類の発生源の周辺を含め、一般環境における土壌中のダイオキシン類濃度の状況を把握するため都道府県及び政令市により選定され、調査が行われた。
なお、このほかに対象地状況把握調査(2か所3地点)及び調査指標確認調査(4か所18地点)が実施された。
3.測定対象物質及び測定結果の表示方法
ダイオキシン類(PCDD、PCDF及びコプラナーPCBのうち参考に示す異性体)を測定対象とし、測定結果は毒性等量(TEQ)で示した。これは、各異性体の実測濃度に毒性等価係数(TEF)を乗じそれらを合計したものである。
4.測定方法
(1)大気
「ダイオキシン類に係る大気環境調査マニュアル」
(平成13年8月 環境省環境管理局総務課ダイオキシン対策室、大気環境課)
平成14年度調査からこれまでの24時間サンプリングによる測定方法に、1週間連続サンプリング方法が追加されており、多くの自治体においては、1週間連続サンプリング方法による調査が行われている。
(2)公共用水域水質及び地下水質
JIS K 0312
(工業用水・工場排水中のダイオシン類及びコプラナーPCBの測定方法)
(3)公共用水域底質
「ダイオキシン類に係る底質調査測定マニュアル」
(平成12年3月 環境庁水質保全局水質管理課)
(4)土壌
「ダイオキシン類に係る土壌調査測定マニュアル」
(平成12年1月 環境庁水質保全局土壌農薬課)
5.調査結果
平成14年度の各環境媒体における調査結果を表1に示した。また、平成14年度までの調査地点数及び濃度を表2に示した。
(1)大気
大気については、夏季及び冬季を含む年2回以上の調査が実施された地点についてのみ、年間平均値を環境基準により評価することとしている。これらの調査地点は全国 966地点あり、ダイオキシン類濃度の平均値は0.093pg-TEQ/m3、濃度範囲は0.0066~0.84 pg-TEQ/m3であった。
大気環境基準(基準値;年間平均値 0.6pg-TEQ/m3以下)と比較すると、一般環境については731地点中2地点、発生源周辺については206地点中1地点で環境基準を超過していたが、沿道29地点についてはすべて環境基準を達成しており、合計すると、966地点中3地点(0.3%)で環境基準を超過していた。また、平成13年度の大気環境モニタリング調査結果(979地点中8地点(0.8%)で環境基準を超過)と比較すると、環境基準超過地点の割合は0.5ポイント減少した。
なお、989地点中23地点については、夏季及び冬季を含む年2回以上の調査が実施されていないため、年間平均値を算出して環境基準により評価することが適当ではないが、ダイオキシン類の大気中の濃度を把握する上で貴重な情報となる。このため、これらの地点も含めた濃度分布を図1に示した。
大気汚染防止法に基づき大気環境モニタリングが開始されて以降のダイオキシン類の大気調査の推移を表2に示した。全国のダイオキシン類濃度の平均値の経年変化をみると、平成9年度0.55pg-TEQ/m3、平成10年度0.23pg-TEQ/m3、平成11年度0.18pg-TEQ/m3、平成 12年度0.15pg-TEQ/m3、平成13年度0.13pg-TEQ/m3、平成14年度0.093pg-TEQ/m3となっており、平成10年度以前はダイオキシン類のうちPCDD及びPCDFのみの調査であり、かつ毒性等量の算出方法が異なり、また、同一地点の経年変化ではないものの、ダイオキシン類濃度には低下傾向が見られる。
PCDD及びPCDFについて、平成9年度から平成14年度にかけて環境省及び地方公共団体が継続して調査を実施している地点における濃度の推移を表3及び図2に示した。
継続調査地点は全国48地点あり、これらの地点における平成14年度のPCDD及 びPCDFの平均値は、平成9年度の0.54pg-TEQ/m3に比べ大幅に低下し、0.16pg- TEQ/m3であった(表3)。
なお、毒性等量の算出にあたっては、平成11年度以降の調査分については、WHO-TEF(1998)を、平成10年度以前の調査分については、I-TEF(1988)を用いている。
(2)公共用水域水質
公共用水域の水質については、1,976地点 で調査が行われ、それらの地点のダイオキシン類濃度の平均値は0.25pg-TEQ/L、濃度範囲は0.01~2.7pg-TEQ/Lであり、 56地点(2.8%:河川55地点、湖沼1地点)で水質環境基準(基準値;年間平均値1pg-TEQ/L以下)を超過 していた。
地方公共団体の継続調査地点(全国1,335地点)におけるダイオキシン類濃度の平均値は、平成14年度は0.26pg-TEQ/Lと平成13年度の0.27pg-TEQ/Lと同程度であったものの、平成12年度の0.37pg-TEQ/Lからは低下した(表3)。継続地点の濃度分布を図3に示した。
(3)公共用水域底質
公共用水域の底質については、1,553地点で調査が行われ、ダイオキシン類濃度の平均値は11pg-TEQ/g、濃度範囲は0.0087~640pg-TEQ/gであった。
また、地方公共団体の継続調査地点は全国978地点あり、これらの地点におけるダイオキシン類濃度の平均値は、平成12、13年度の 11pg-TEQ/gに比べ、平成14年度は12pg-TEQ/gと同程度であった(表3)。継続地点の濃度分布を図4に示した。
また、底質環境基準が施行された平成14年9月1日以降では、757地点で調査が行われ、18地点(2.4%)で底質環境基準(基準値;150pg-TEQ/g以下)を超過した。
(4)地下水質
地下水質については、全国1,310地点で調査が行われ、ダイオキシン類濃度の平均値は0.066pg-TEQ/L、濃度範囲は0.011~2.0pg-TEQ/Lであり、1地点で水質環境基準(基準値;年間平均値1pg-TEQ/L以下)を超過していた。濃度分布を図5に示した。
平成13年度調査結果(全国1,473地点、平均値0.074pg-TEQ/L、濃度範囲0.00020~0.92pg-TEQ/L)と比較すると、濃度分布及び平均値ともに概ね同程度であった。
(5)土壌
土壌については、一般環境把握調査及び発生源周辺状況把握調査が全国3,300地点において実施され、ダイオキシン類濃度の平均値は3.8pg-TEQ/g、濃度範囲は0~250 pg
-TEQ/gであり、全地点で土壌環境基準(基準値;1,000pg-TEQ/g以下)を達成していた。 濃度分布を図6に示した。
一般環境把握調査(2,282地点)では、平均値は3.4pg-TEQ/g、濃度範囲は0~250pg-TEQ/gであった。また、発生源周辺状況把握調査(1,018地点)では、平均値は4.7pg-TEQ/g、濃度範囲は0.00013~130pg-TEQ/gであった。
対象地状況把握調査及び調査指標確認調査においても、環境基準を超過した地点はなかった。
6.まとめ
(1)調査結果の評価
土壌では、すべての地点で環境基準を達成していたが、大気、公共用水域水質、底質及び地下水質では、それぞれの環境基準を超過した地点がみられた。
大気(継続調査地点)については、過去の調査結果と比較すると平均値に低下傾向が見られた。
公共用水域水質については、平成13年度と比べ、継続調査地点における平均値は同程度であったが、環境基準超過地点は増加した。また、公共用水域底質については、平成13年度と比べ、継続調査地点における平均値は同程度であった。
地下水質については、1地点で環境基準を超過したものの、平成13年度と比べ、濃度分布、平均値ともに同程度であった。
(2)今後の取組
現在、法等に基づきダイオキシン類の排出規制等が実施されており、今後とも法の適切な運用により、ダイオキシン類の環境中への排出の一層の低減に努めることとしているが、常時監視についても、その適正かつ効果的な運用を図り、環境中のダイオキシン類濃度の実態及びその推移を的確に把握することを通じて、対策の効果の確認、未知の発生源の把握等に資する必要がある。
環境基準を超過した地点等については、各地方公共団体において、現在、所要の調査、対策が検討され、取組が行われているところであるが、平成15年度以降の常時監視においても、これらの地点を考慮して、環境調査が実施されることとなる。
(参考)各環境媒体における環境基準値
環境媒体 | 基準値 |
---|---|
大 気 | 0.6pg-TEQ/m3以下 |
公共用水域水質 | 1pg-TEQ/L 以下 |
公共用水域底質 | 150pg-TEQ/g 以下 |
地下水質 | 1pg-TEQ/L 以下 |
土 壌 | 1,000pg-TEQ/g 以下 |
(注1) | 基準値は、2,3,7,8-四塩化ジベンゾ-パラ-ジオキシンの毒性に換算した値とする。 |
(注2) | 大気、公共用水域水質及び地下水質の基準値は、年間平均値とする。 |
(注3) | 公共用水域底質に係る環境基準は、平成14年9月1日から施行された。 |
(注4) | 土壌にあっては、環境基準が達成されている場合であって、土壌中のダイオキシン類の量が250pg-TEQ/g以上の場合は、必要な調査を実施することとする。 |
(注5) | ダイオキシン類対策特別措置法においては、ポリ塩化ジベンゾ-パラ-ジオキシン(PCDD)及びポリ塩化ジベンゾフラン(PCDF)にコプラナーポリ塩化ビフェニル(コプラナーPCB)を含めてダイオキシン類と定義している。 |
環境管理局報告書/水環境部報告書
平成14年度ダイオキシン類に係る環境調査結果(平成15年12月)
添付資料
- 連絡先
- 環境省環境管理局総務課ダイオキシン対策室
室長 須藤 欣一 (内6532)
補佐 太田 志津子(内6579)
環境省環境管理局大気環境課
課長 関 荘一郎(内6530)
補佐 金子 吉昭(内6572)
環境省環境管理局水環境部企画課
課長 柏木 順二(内6610)
補佐 田熊 秀行(内6615)
環境省環境管理局水環境部土壌環境課
課長 太田 進(内6650)
補佐 龍口 浩司(内6653)
地下水・地盤環境室
室長 宮崎 正信(内6670)
係長 伊藤 隆晃(内6675)