報道発表資料

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2003年12月02日
  • 自然環境

公園管理団体の指定について

 平成15年12月2日、阿蘇くじゅう国立公園において草原景観の保全活動や森 づくり活動を行う財団法人阿蘇グリーンストックを、「公園管理団体」に指定 します。
 今回の指定は、平成14年4月の自然公園法改正に基づく、国立公園での最初 の指定となります。
 同財団は、野焼き作業等を通じた草原保全に対する支援実績があり、公園管理団体の指定を契機に一層の活動の推進が図られ、自然の風景地の保護に寄与 することを期待するものです。
 なお、本日 16:15から、大臣室において環境大臣から同財団理事長へ指定書 が交付されます。
  1. 公園管理団体制度とは
      公園管理団体制度は、改正自然公園法に基づき、公益法人又はNPO法人(特定非営利活動法人)のうち一定の能力を有する法人を、国立公園については環境大臣が、国定公園については都道府県知事が公園管理団体として指定し、自然の風景地の管理主体及び公園内の利用施設の維持管理主体等として位置づけるものです。
      また、本制度は、市民等による自然の風景地の保護と適正な利用に係る自発的な活動を推進することを目指すものであり、具体的な公園管理団体の業務として、植生復元や草原管理といった自然の風景地の管理、歩道や園地などの公園の利用施設の点検・補修などの維持管理、公園内の自然情報の収集・提供など幅広い業務を想定しています。

  2. 指定公園管理団体「財団法人阿蘇グリーンストック」の概要
    団体名称: 財団法人阿蘇グリーンストック(河敦夫理事長(阿蘇町長))
    所在地: 熊本県阿蘇郡阿蘇町大字赤水字大堀695-10
    財団設立目的等: 阿蘇の緑の大地(草原、森林、農地)を、広く国民共有の生命資産(グリーンストック)と位置づけ、農村、都市、行政の連携により、後世に引き継いでいくことを目的に、平成7年民法第34条に基づく公益法人として設立
    財団設立経緯: 阿蘇町の出資金、県内企業、団体、個人からの出捐金などにより基本財産を形成し設立
    団体指定日: 平成15年12月2日
    活動区域: 阿蘇くじゅう国立公園 阿蘇地域
    主な業務内容: ボランティア(454人(平成14年度の登録者数))による野焼き※1 等および実績の支援活動を通じた草原景観の保全。
    (平成14年度の野焼き、輪地切り※2 支援区域の面積は約3,200ha(阿蘇全体の野焼き面積は約16,000ha))
    購入したトラスト地での植林や間伐による水源涵養や野鳥の生息 を目指した森づくり。
    (平成14年度までに面積約5ha、約9,600本の広葉樹を植樹)
    草原保全活動の充実のため、野焼き、輪地切りの状況や自然資源の調査など草原の現状把握のための調査を実施
         
  3. 今回の指定の趣旨
    (1) 自然の風景地の保護
    阿蘇くじゅう国立公園の風景を構成する主要な景観要素である草原は、長年にわたる牛馬の放牧、採草、野焼き等自然と一体となった営みによって維持されてきたものであり、下記のような多様な価値を有しています。
    東西18km、南北25km、周囲 128kmに及ぶ世界最大級のカルデラ地形と一体となった広大な草原景観は本公園を代表する風景のイメージとして定着している。
    1,000 年余に及ぶ牧野利用の歴史は、草原と一体となって営まれる放牧、採草、野焼きなどの生業や日常の生活が地域固有の文化を育み、また、身近なふるさとの原風景を形成している。
    阿蘇の草原には、ヒゴタイやマツモトセンノウといった九州が大陸と陸続きであったことを物語る植物が存在するなど、特有の生態系を形成している。
    しかしながら、近年、畜産業の不振による放牧頭数の減少、後継者不足や高齢化による人手不足などが原因で、その維持、管理が困難となっており、阿蘇くじゅう国立公園の代表的な自然の風景である草原景観の保全に対して、公園管理団体の活発な保全活動による貢献が期待されます。

    (2) 公園管理への市民参加

    近年、自然環境の保全に対する関心の高まりを受けて、国立公園をはじめとする自然公園においても、様々な保全活動にかかわる民間団体や市民が増えています。
    このような公園管理への自発的な市民参加を促進するため、一定要件を満たす団体について、法律に基づき公園の管理主体としての位置づけを明確にするとともに、環境省としては、連携事業の実施や公園管理団体のPRに対する協力などを通じて、活動を支援していきます。

    (3) 指定の効果
    同財団を公園管理団体に指定し、同財団の活動を公園管理への自発的な参画として環境省が積極的に支援することで、その活動が一層促進され、自然の風景地の保護に寄与することが期待されます。
    さらに、本件が国立公園における初めての公園管理団体の指定であることから、これを契機として、他の国立公園においても、民間団体等が公園管理に自発的に参画し、公園管理団体の指定が拡大するとともに、地域に密着したきめ細かな公園管理が図られるという波及効果が期待されます。

  4. 指定書の交付
    日時: 平成15年12月2日(火)16:15~16:30
    場所: 環境大臣室
    交付者: 環境大臣
    受取者: 財団法人阿蘇グリーンストック 河敦夫理事長
    撮影: 冒頭カメラ撮り可
      
  5. 用語説明
    ※1 野焼き:毎年春先に牛馬の飼育に利用している野草地に火を入れて、草原を焼く作業を指す。現在の阿蘇の気象条件下では、何もしない場合、草原が森林に移行していってしまうことから、低木や灌木の成長を抑え、広大な草原景観及び畜 産の場を確保するために野焼きが不可欠。
    ※2 輪地切り:野焼きを行う際は、草原の周囲にある植林地や建物などに延焼しな いように「輪地(わち)」という防火帯を作る。この作業のことを阿蘇地域では 「輪地切り(わちぎり)」と呼び、夏の終わりから秋にかけて行われ、植林地等 の周囲10m程度の草を刈る。

添付資料

連絡先
環境省自然環境局国立公園課
自然環境局国立公園課
 課長   笹岡 達男(6440)
 課長補佐 牛場 雅己(6443)
 担当   野村 環 (6447)

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