報道発表資料

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2003年12月02日
  • 地球環境

地球環境研究総合推進費による研究の中間・事後評価結果の概要について

 環境省では、地球環境保全政策を科学的側面から支援することを目的として、地球環境研究総合推進費(以下「推進費」という)による研究を推進しています。
 このたび、推進費により現在継続中の研究課題に対する中間評価と、14年度に終了した研究課題に対する事後評価を実施しましたので、その結果を公表します。

1.評価方法

 (1) 評価の目的及び評価対象課題
   今回の評価対象は34件の研究課題です。評価時期は以下のとおりです。
  中間評価(2年度目)
     本年度が研究開始2年目にあたる研究課題18件が対象となりました。
 3年度目の研究費や研究計画の見直し、最終的な研究成果取りまとめ方針に活用することを目的とします。
  中間評価(3年度目)
     昨年度の中間評価にて非常に高い評価を受け、かつ研究課題代表者が研究期間の延長を希望する研究課題2件が対象となりました。
 研究期間を2年間延長するか否かの判断を行うほか、延長期間の研究計画策定に活用することを目的とします。
  事後評価
     平成14年度で研究期間が終了した研究課題14件が対象となりました。
 今後の新規課題の事前評価や研究制度の見直しに活用することを目的とします。
 (2) 評価者及び評価手順
   評価者は、地球環境研究に関する専門家・有識者で構成される地球環境研究企画委員会、及びその下部組織となる第1~第4研究分科会です。
 評価対象課題の研究分野(温暖化、酸性雨、自然資源の劣化等)に応じ、地球環境研究企画委員会第1~第4研究分科会において評価を実施した後、地球環境研究企画委員会において、全研究分野を通した評価結果の調整及び総括を行いました。
 評価の仕方は、研究グループの作成した研究成果報告書を対象とした"書面評価"と、研究者による説明や質疑応答等を対象とした"ヒアリング評価"の2つがあり、評価時期に応じて下表のとおり実施しました。なお、ヒアリング評価の際は、行政担当部局も評価に参加し、それらを加味した上で最終的な評価結果として集計しました。
 
 書面評価ヒア評価
中間評価(2年度目) 実施 実施
中間評価(3年度目) 実施
事後評価 実施
 (3) 評価方法の詳細
   評価方法と評価基準の詳細は、評価の際に評価者へ通知するとともに、評価の透明性の確保の観点から被評価者に対しても事前に通知しました。なお、ヒアリング評価時の評価結果集計については、全研究課題のヒアリング終了時点で直ちに集計し、その場で評価者へ評価委員会全体の評価結果を提示して総合的な評価結果の調整に努めました。

2.評価結果

 以下、評価結果全般に関する概要を示します。具体的な評価結果は推進費ホームページ(アドレスは本お知らせ末尾に掲載)をご覧下さい。

 (1) 中間評価(2年度目)
   評価対象課題の18件は、概ね高い評価のものが多くなりました。全体として、研究を中断すべきとの評価を受けた研究課題はなく、全ての研究課題について3年度目も研究を継続する予定となりました。評価結果については、16年度の研究費の増減に反映させるほか、低い評価を受けた研究課題については、特に研究計画の見直し等に努めるものとします。

 なお、今回の中間評価において、特に次に示す4課題については、その研究成果と今後の波及効果・発展性が極めて高く評価されましたので、来年度、2年間の研究期間延長の検討対象となります。
 
  • A-1 オゾン層破壊の長期変動要因の解析と将来予測に関する研究(H14~H16、研究代表者:国立環境研究所 今村隆史、共同研究機関:気象研究所、東京大学、九州大学、京都大学、北海道大学、名古屋大学、奈良女子大学)
  • B-4 能動型と受動型リモートセンサーの複合利用による大気汚染エアロゾルと雲の気候影響研究(H14~H16、研究代表者:東京大学 中島映至、共同研究機関:通信総合研究所、国立環境研究所、東北大学、千葉大学、福井大学)
  • B-60 京都議定書吸収源としての森林機能評価に関する研究(H14~H16、研究代表者:早稲田大学 天野正博、共同研究機関:気象研究所、森林総合研究所、国立環境研究所、宮崎県木材利用技術センター、愛媛大学、東京大学)
  • E-4 熱帯域におけるエコシステムマネージメントに関する研究(H14~H16、研究代表者:国立環境研究所 奥田敏統、共同研究機関:森林総合研究所、国立民族学博物館、岐阜大学、(財)自然環境研究センター)
 
   A-1課題は、最近増加傾向が認められ、かつ、オゾン層変動に影響を与え得る成層圏水蒸気の変動要因の解明、温室効果気体(CO2)の増加が今後のオゾン層変動に及ぼす影響の定量化等を行うものであり、気候変動がオゾン層に対する影響を解明することは今後のオゾン層破壊の対策への極めて重要な知見であるとして高く評価されました。
 B-4課題は、種々の気候変動要因のうちで大きな不確定要素を持つ人為的エアロゾルについて、特に雲の生成スキームへの影響等、エアロゾルの間接効果に焦点を当て、その監視を可能にするモニタリング手法の確立と観測結果を利用した気候モデルの高精度化を目的とするもので、観測データが着実に積み重ねられており、地球温暖化予測の精度向上に欠かせない研究として評価されました。
 B-60課題は、京都議定書第5、7、8条で求められている吸収源の国別インベントリーシステムの中核を成す"我が国の森林炭素吸収量評価モデル"の開発、京都議定書が求めている不確実性への対応方法やクロスチェック手法の確立を主な目的とするもので、我が国の京都議定書の目的達成にとって極めて重要な研究として評価されました。
 E-4課題は、東南アジアの熱帯地域の環境保全や資源の持続的管理の促進、多様性保全や地域社会の持続的発展を重視した管理手法や森林認証制度の評価基準の提言に資することを目的としたもので、エコロジカルサービスのマップ化(GIS化)等、研究が着実に進行し、成果の公表も順調に行われていることが評価されました。
 (2) 中間評価(3年度目)
   昨年度の中間評価において高い評価を得て、今回2年間の延長の可否に関して中間評価を行った以下の2課題については、B-9課題はA評価となったため、研究課題代表者の要望通り2年間の延長を認めることとなりました。一方、C-5課題については、B評価となったため、提案された研究計画について一部修正の上2年間の延長を認めることとなりました(評価については、評価の高いものからA,B,C,D,Eの順で5段階に表示しています)。
 
  • B-9 太平洋域の人為起源二酸化炭素の海洋吸収量解明に関する研究(H13~H15、研究代表者:国立環境研究所 野尻幸宏、共同研究機関:水産総合研究センター、産業技術総合研究所、北海道大学)
  • C-5 中国北東地域で発生する黄砂の三次元的輸送機構と環境負荷に関する研究(H13~H15、研究代表者:国立環境研究所 西川雅高、共同研究機関:東京商船大学、長崎大学、筑波大学、埼玉大学)
 
   B-9課題は、商船の太平洋航路を利用した海洋表層のCO2吸収・排出量の季節変化・経年変化等の解明の他、様々な機関で取得された海洋のCO2関連観測データの統合的解析を国際的に試みる研究であり、国際的に連携された研究体制や研究成果が確実に挙がっている点が高く評価されました。
 一方、C-5課題は、近年大きな問題となりつつある黄砂に対して、発生源から我が国までの動態を観測・評価する技術を確立し、その発生機構、我が国への輸送機構及び輸送過程における科学的な動態変化機構の解明を試みる研究であり、黄砂現象の解明に向けて重要な課題と評価されました。ただし、黄砂が人間の健康に及ぼす影響を延長後のテーマに加えることが課題代表者より提案されましたが、審議の結果、2年の延長期間は黄砂の現象解明に関する研究に絞って行われることとなりました。
 (3) 事後評価(平成13年度終了課題)
  評価対象課題の14件は概ね高い評価の研究課題が多くなりました。今回の評価対象課題のうち幾つかのものについては、既に15年度新規課題として新たな研究をスタートしている場合があります。代表者及び研究内容等から判断して後継課題(今回の事後評価対象課題との継続性が大きい課題)とみられる場合は、今回の事後評価結果を、後継課題の16年度の研究費に反映させるものとします。

 なお、今回の事後評価において、特に次に示す2課題については極めて高く評価されました。
 
  • B-1 気候変動の将来の見通しの向上を目指したエアロゾル・水・植生等の過程のモデル化に関する研究(H12~H14、研究代表者:国立環境研究所 神沢博、共同研究機関:農業環境技術研究所、産業技術総合研究所、東京大学、九州大学、北海道大学)
  • H-6 地下水利用に伴う広域的ヒ素汚染に対する地球環境保全のための環境計画に関する研究(H12~H14、研究代表者:国立医薬品食品研究所 安藤正典、共同研究機関:国立環境研究所、九州大学、北海道大学、東京大学、東北学院大学)
 
   B-1課題は、人為起源対流圏エアロゾル、対流圏オゾン、水蒸気等による気候変化の不確定性の明確化、気候変化・気候変動と対流圏物質循環、森林生態系間のフィードバックを含めた総合的なモデルの基礎確立を主目的とし、それらの知見を統合して総合的な気候・物質循環モデルの開発改良とその応用を目指したものであり、総合的な気候・物質循環モデルの開発・改良に向けた成果が多数出され、今後の波及効果が非常に高い研究として評価されました。
 一方、H-6課題は、地下水ヒ素汚染と健康影響の状況、地下水浄化あるいは生態系への影響を明らかにし、他国の地球規模でのヒ素汚染問題を解決する手法の開発に資することを目的としたものであり、途上国における地下水のヒ素汚染対策に対する具体的かつ実践的な研究が行われたことが高く評価されました。
 ※ 個々の研究課題の評価結果、評価基準、評価項目等の詳細については、地球環境研究総合推進費ホームページhttps://www.env.go.jp/earth/suishinhi/index.htmをご覧下さい。
連絡先
環境省地球環境局総務課研究調査室
室長       :高橋 康夫(内線6730)
 環境研究評価調整官:大坪 国順(内線6290)
 補佐       :渡辺 且之(内線6732)
 担当       :小口 陽介(内線6732)