報道発表資料

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1997年03月31日

ナホトカ号油流出事故に関する緊急調査結果(大気環境関係)

環境庁は、ナホトカ号油流出事故による大気環境への影響調査として、平成9年2月10日から14日にかけて、石川県及び福井県の重油漂着海岸近傍の7地点、重油漂着海岸1地点及び重油による影響を直接受けないと考えられる内陸部の対照地点1地点の計9地点において大気中の炭化水素及び重金属の濃度測定を行った。
 その結果、炭化水素については、何れの地点とも、対照地点と比べて同程度かそれ以下の濃度しか検出されなかった。また重金属については、対照地点と同程度の濃度が海岸近傍の1地点で検出されたのみで、他の地点では検出されなかった。
 これらの結果より、ナホトカ号からの流出重油による大気汚染は極めて軽微であり、一般環境において健康影響が問題となることはないものと考えられる。

1.調査目的
 タンカーナホトカ号からの油流出事故に関し、重油漂着地点海岸の周辺部において重油中の炭化水素及び重金属による大気汚染が懸念されたため、これらの地域における大気の測定を行い、重油による大気環境への影響を把握する。

2.調査方法
 調査は、平成9年2月10日から14日にかけて行った。サンプリング地点は、石川県珠洲市から福井県美浜町にかけての重油漂着海岸近傍で人が居住し得る地域の7地点、ナホトカ号船首部漂着地点直近の重油漂着海岸(福井県三国町:漂着油は回収済みであった)1地点及び対照地点として重油による影響を直接受けないと考えられる内陸部の1地点の計9地点である。
 調査対象物質は、重油中に含有されることが知られている物質として直鎖脂肪族飽和炭化水素、芳香族炭化水素、多環芳香族炭化水素及び重金属を選定した。また、一部の漂着油回収物等から検出されたとの報告のあった2-フルフリルアルコールについても測定を行った。
 測定方法(サンプリング方法及び分析方法)は、下表のとおりである。

測定方法

調査対象物質 測定方法
直鎖脂肪族飽和炭化水素
      (炭素数 6~10)
芳香族炭化水素
容器捕集-ガスクロマトグラフ/質量分析法
直鎖脂肪族飽和炭化水素
      (炭素数11~29)
2-フルフリルアルコール
吸着管捕集-ガスクロマトグラフ/質量分析法
多環芳香族炭化水素
 
重金属
フィルター捕集-高速液体クロマトグラフ法 
 
フィルター捕集-誘導結合プラズマ/質量分析法


3.調査結果
(1)直鎖脂肪族飽和炭化水素
 炭素数6から炭素数29までの直鎖脂肪族飽和炭化水素の測定を行った。その結果、炭素数6及び7のものが全地点で、また炭素数8から13までのものが一部の地点で検出された。炭素数14から29までのものは検出されなかった。
 検出されたもので最大の濃度を示したのは、対照地点の n-ヘキサン(炭素数6)で 0.56μg/m3 であった。また、検出された各物質の濃度の合計値で最大のものは、敦賀市赤崎海岸近傍の 1.6μg/m3 であるが、対照地点の 1.3μg/m3 と同程度である。

(2)芳香族炭化水素
 ベンゼン及びトルエンが全地点で、またキシレン類が対照地点を含む3地点で検出された。
 ベンゼンの濃度の最大値は、敦賀市赤崎海岸近傍及び美浜町竹波海岸近傍で検出された 1.2μg/m3 であるが、対照地点における測定値 1.1μg/m3 と同程度である。これらの値は、ベンゼンの環境基準値 3μg/m3 を下回るものである。

※ トルエン及びキシレン類については、検出された全地点において対照地点における測定値(各々 3.1μg/m3、0.41μg/m3)以下であった。

※ ベンゼンの環境基準は、1年平均値として定められているため、今回の測定結果のみにより当該基準への適合を判定できないが、参考として測定結果を環境基準値と比較したものである。

(3)多環芳香族炭化水素
 ベンゾ[a]ピレンが、全地点において検出されたが、何れの地点とも対照地点における測定値 0.00021μg/m3 以下であった。 これは、一般環境で測定されている値(0.000015~0.011μg/m3 :環境庁調べ)を超えるものではない。

(4)その他の炭化水素
 2-フルフリルアルコールについて測定したが、全地点で検出されなかった。

(5)重金属
 バナジウムが福井市鷹巣海岸近傍において検出された(0.0023μg/m3)が、対照地点の測定値(0.0024μg/m3)と同程度であった。その他の地点においては検出されなかった。

4.調査結果の評価及び今後の対応について
 上記の結果より、2月中旬現在、ナホトカ号からの流出重油による大気汚染は、極めて軽微であると考えられ、一般環境において健康影響が問題となることはないものと考えられる。
 現在、漂着重油の回収作業がほぼ終了していること、ナホトカ号船首部から重油の抜き取りが完了していること、大量の重油の漂着がないこと等を勘案すると、今後特別な状況が生じない限り、流出重油による重大な大気汚染が生じるとは考えにくいが、引き続き事態の推移を注視していきたい。

連絡先
環境庁大気保全局大気規制課
課長 飯島  孝 (6530)
 担当 宮崎正信 (6537)