報道発表資料

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1997年03月28日

「水浴場の水質の判定基準」の改正と「快適な水浴場のためのガイドライン」の策定について

水浴場は、人と水とが触れあう場として最も親しまれている水環境の一つであり、地域の個性を形作っているとともに自然の水循環の一部を構成する重要な水辺でもある。
 環境庁では、昭和48年以来毎年水浴場の水質を測定し、水浴場の「適・不適」を評価してきたが、失われた水と人との関係の回復を目指し、総合的な水環境保全を推進していくため、水質に加え、水浴場における自然環境や安全性の確保等幅広い視野からの評価が求められるようになってきている。
 この様な状況を踏まえ、環境庁水質保全局に「快適な水浴場のあり方に関する懇談会」を設置し、この懇談会において水環境保全上望ましい水浴場のあり方について調査検討が行われ、「今後の水浴場のあり方について」と題した報告書がとりまとめられた。
 本報告書の概要は以下の通り。
1 水質の判定基準に関し、水質区分及び「適・不適」の評価方法を改正。
2 快適な水浴場の備えるべき評価事項として、第1要件としての水質に係る要件に加え、水浴場 における自然環境、景観等の自然的環境及び水浴場の管理、地域での自主的な環境保全活動等 人為的環境をあわせた総合的な要件を提示。
3 優れた水浴場を実現する観点から全国的にみて特に優れた水浴場(海水浴場、湖沼・河川の水浴場)を顕彰していくことを提案。
 顕彰に当たっては、1 の評価方法により「水質AA」と評価された水浴場のうち、2 の要件に関し総合的な評価が高い、あるいは特徴のある水浴場を特に優れている水浴場として選定することも考慮すべき。
4 環境庁においては、本報告書の内容を「快適な水浴場のためのガイドライン」として広く一般 に普及啓発するとともに、環境保全上望ましい水浴場の整備促進に努めるべき。
 環境庁では「快適な水浴場のためのガイドライン」に基づき、特に評価が高い水浴場を「日本(快)の水浴場'97」として97年度中に選定し、よりよい水浴場の実現に向けて、行政、住民の取組を推進していく。近日中に都道府県及び政令市に対し、優れた水浴場の選出に係る通知を発出する予定。

1 経緯
 環境基本法の制定、環境基本計画の策定を受け、水環境行政は、水環境を水質のみならず水量、水生生物、水辺地等を含めた総合的なものとしてとらえ、望ましい水環境像の実現に向け、住民、企業、行政が一体となって様々な施策を総合的に推進していくこととなった。
 水浴場は、人と水とが最も直接的に触れあう場として親しまれている水環境である。そこで、環境庁においては、昭和48年以来毎年水質の測定結果に基づき、水浴場の「適・不適」を評価し公表してきたところであるが、水環境の観点から快適な水浴場のあり方を考えた場合、従来からの水質の判定基準を改正することに加え、水浴場における快適性の確保のため幅広い視野からの評価が望まれるようになった。
 この様な状況を踏まえ、環境庁では、水環境保全上望ましい水浴場のあり方を調査検討するため、平成8年10月より「快適な水浴場のあり方に関する懇談会」(座長 松尾友矩東京大学工学部教授)を開催し、3回にわたり検討を行い、「今後の水浴場のあり方について」と題した報告書がまとめられた。

2 報告書の内容
(1) 水浴場の現状
 {1} 水浴場の状況 水浴場は、一定の監視の下に遊泳場としての利用に適すると判断された水辺であり、身近に水に触れることのできる場として広く国民に親しまれている。

全国の水浴場の数     ・・・1,297箇所 
全国の水浴場の利用人数  ・・・年間延べ8,500万人
全国の主な水浴場の汀線の長さの合計・・・約350km(全国の海岸延長の約1%)
自然海浜・・・67.1% 半自然海浜・・・19.0% 人工海浜・・・8.9% 
                           (環境庁調査より)


{2}水浴場の水質
 全国の主要水浴場(利用者数が概ね5万人を超える水浴場)の水質については、環境庁が都道府県の協力を得て、昭和48年から毎年実施している。

   ○現在の調査内容
    調査時期・・・5月中旬から6月上旬
    調査項目・・・ふん便性大腸菌群数、
           化学的酸素要求量(COD)、
           透明度、油膜の有無 
    判定条件・・・不適の判定に際し考慮されるのは、
           ふん便性大腸菌群数と油膜の有無のみ

   ○今後の課題
   ・不適の判定に際し考慮されるのは、ふん便性大腸菌群数と油膜の有無のみ。
    COD、透明度については上限値が設定されていないことから不適判定の際には考慮されない。
   ・調査水浴場を年間利用者数が概ね5万人を超える主要水浴場としており、
    全水浴場の4分の1程度にすぎない。

 {3}水浴場のごみ問題
 快適な水浴場の要件として、ごみ対策は不可欠な要素であるが、水浴場には、人が置き捨てたごみ、河川から流出して漂着したごみ、海から打ち上げられた海藻等様々なごみがあり、その発生量は日々変化している。
 水浴場におけるごみ問題を解決するため、行政、地域住民等による清掃活動、ごみ発生量削減のための活動やイベント等様々な取組が行われている。

 {4}水浴場と水難 警察庁の調べでは、水難による水死者等は、昭和61年においては1,775人、平成7年においては1,214人であり、年々減少してきている。いくつかの自治体では、水浴場の安全性を確保するため、水難防止及び遊泳者等の安全確保を目的として、「水上安全条例」を制定し、事故防止に効果をあげている。

(2)快適な水浴場の備えるべき要件
 {1}水浴場の環境上の位置付け 水浴場は、人と水が最も直接的に触れあう場であり、地域の人々の生活や文化と深く関わり、地域の個性を形作っているとともに、自然の水循環の一部を構成する存在である。
 そこで、水浴場を国民の健全なレクリエーションの場や地域の生活・文化の核としての面と、自然の水循環の一部としての面から位置づけ、水質のみならず、水生生物、水辺地等も含めた総合的な観点から環境保全施策を推進することが必要である。

 {2}快適な水浴場のあり方 平成7年度に環境庁が行った調査によれば、水浴場を快適なものとするための課題として、水質の維持・確保に加えて、水質以外の項目についても数多くの改善すべき点が指摘されている。
 そこで、水質だけでなく、水浴場全体の快適性確保のため総合的な観点から望ましい水浴場のあり方を提示することにより、水浴場の整備、改善等水浴場をより快適にしていくための取組を推進することが必要である。また、このことが、国民の水とのふれあいの機会を増やし、水を守るための自主的な活動を進める契機となることが期待される。

(3)水浴場の備えるべき要件及び評価の考え方

【水質に係る要件】
 快適な水浴場に求められる要件として、水質が良好であることが第1の条件とされるべきである。水質に関する評価項目は、環境基準健康項目が達成されていることを前提として、ふん便性大腸菌群数、油膜の有無、COD及び透明度の4項目とし、その評価については、下表のとおりとすることが適当である。
 快適かつ安全と考えられる水浴場の水質としては、水質AA又は水質Aを満たすことを目標とすべきである。

(水浴場の水質の判定基準)

区 分 ふん便性大腸菌群数 油膜の有無 COD 透明度


AA
 不 検 出 
(検出限界2個/100ml)
油膜が認められない 2mg/l以下
(湖沼は3mg/l以下)
全透
(水深1m以上) 


100個/100ml以下 油膜が認められない 2mg/l以下
(湖沼は3mg/l以下)
全透
(水深1m以上) 


400個/100ml以下 常時は油膜が認められない 5mg/l以下 水深
1m未満~
50cm以上


1,000個/100ml以下 常時は油膜が認められない 8mg/l以下 水深
1m未満~
50cm以上
不適 1,000個/100ml を
超えるもの
常時油膜が認められる 8mg/l超  50cm未満*

〔備考〕
1.判定は、同一水浴場に関して得た測定値の平均による。
2.「不検出」とは、平均値が検出限界未満のことをいう。
3.「改善対策を要するもの」については以下のとおりとする。
(1) 「水質B」又は「水質C」と判定されたもののうち、
   ふん便性大腸菌群数が、400個/100mlを超える測定値が1以上あるもの。
(2) 油膜が認められたもの。
4.透明度( *の部分)に関しては、砂の巻き上げによる原因は評価の対象外とすることができる。


 【総合的な要件】(別紙参照)
  水浴場の評価に当たっては、水質以外に水浴場における快適性の確保のための総合的な観点から評価することが必要である。
 ○自然的環境の評価 水浴場の景観等の自然環境、地勢の特徴、地域社会に根ざした文化等の自然条件等に関する事項について、水浴場周辺も含めた評価を行う。
 ○人為的環境の評価 水浴場の管理、設備等、水浴場の管理者等の取組によって改善される事項について評価する。
 ●総合的な評価
 自然的環境及び人為的環境の評価事項を大別すると、「安全」「自然環境・景観」「クリーン」「利便性」「コミュニテイ」の5つの要素に分類できる。各水浴場の状況について、この5つの観点から総合的な評価を行い、またその水浴場の特徴についても積極的に評価することが必要である。より優れた水浴場を実現する観点から、全国的に見て特に優れた水浴場を顕彰していくことも重要である。「水質AA」の水浴場のうち、総合的な評価の高い、あるいは特徴のある優れた水浴場を自治体別に推薦してもらい、それぞれの水浴場の特性を考慮し、特に優れている水浴場を、専門家等からなる選定委員会で決定することも考慮すべきである。

 ┌― 質 ―┐ ┌―― 総合的要件 ――┐
 |    | |          |
 |    | |          | ┌―――――┐ 
 |水質AA | |          | |     |   ┌―――――┐
 |    |→|          |→| 自治体か |―┐→|日本の  |
 |    | |          | |     | | | (    | 
 |    | |          | | らの推薦 | | |(快)水浴場|
 |    | |          | |     | | | )    |
 |    | |          | |     | | └―――――┘
 |    | |          | └―――――┘選定委員会 
 └――――┘ └――――――――――┘        での選定 


【水浴場の調査の実施方法】
 ○調査対象の水浴場
   ・海水浴場だけでなく、湖沼及び河川の水浴場についても対象
   ・規模については、海については利用者数が概ね1万人を超えるもの
    湖・川については概ね5千人を超えるもの
 ○調査時期等
   ・水質・・水浴場開設前の5月中旬から6月上旬。
        調査回数は2日以上、1日2回
   ・水質以外の要件・・従来から水質の測定を行っている水浴場のうち、調査が可能なもののみ開設中に調査

3 今後の予定
 環境庁としては、懇談会報告の内容を「快適な水浴場のためのガイドライン」として、広く一般に普及啓発を図るとともに、よりよい水浴場を実現するため地域全体が一体となって取り組むことができるような施策を幅広く検討していく予定。
 その一環として、特に優れた水浴場を顕彰するため全国的にみて優れた水浴場を都道府県等から推薦を求め、専門家等からなる選定委員会において「日本の(快)水浴場'97」として、97年度早期に50カ所程度を選定する。
 近日中にも、選定に係る通知を都道府県、政令市に発出する予定。
 なお、水浴場をよりよいものへと改善していく取組を継続的に進めていくため、「日本の(快)水浴場」は3年後を目途に再度選定を行う予定。
 また、選定に当たって、ナホトカ号による重油流出の影響を被った水浴場については、選定時の状況だけでなく、事故の被害を被る以前の状況、事故後の水浴場の回復のための取組等を勘案するものとする。


【別紙】総合的な評価方法

快適性の要素

評価項目











便





【自然的環境】     
{1}利用者にとっての水浴場の安全性が、自然環境面から確保されているか。
〔評価の標準的なチェックポイント〕
 ・波高が水浴に適当であるか
 ・潮流が水浴に適当であるか
 ・水底の斜度が水浴に適当であるか
       
{2}優れた景観・自然環境等が、水浴場の整備・管理等において考慮されているか。
〔評価の標準的なチェックポイント〕
 ・後背地を含めた水浴場の景観が優れているか
 ・水浴場周辺の自然環境が保全されているか
       
{3}水浴場の水質が良好に保たれるように、水浴場内及びその近傍から悪影響を与えるものがないように対策が行われているか。
〔評価の標準的なチェックポイント〕
 ・生活排水が水浴場に流れ込んでいないか
 ・近辺の川の水質が水浴場に悪影響を与えていないか
 ・設備から出る排水が水浴場の水質に悪影響を与えていないか
       
{4}水浴場のにおい・音などの状態が、利用者の快適性の面から考慮されているか。
〔評価の標準的なチェックポイント〕
 ・悪臭がしないか
 ・水の色が異常でないか
 ・不快な騒音がないか
       
【人為的環境】     
{1}利用者にとっての水浴場の安全性が、人為的環境面から確保されているか。
〔評価の標準的なチェックポイント〕 
・遊泳区域がブイ等により明示されているか
・遊泳者が動力船(水上オートバイ等)等から分離されているか
・監視施設が水浴場の広さ等に応じて十分に設備されているか
・監視員が水浴場の広さ等に応じて十分に配置されているか
・救護施設及び救命用具が水浴場の広さ等に応じて十分に設備されているか
・安全面の情報提供が掲示板、放送等でなされているか
・浜への車両の乗り入れが制限されているか
       
{2}水浴場のごみの散乱は、利用者の快適性を大きく損なうこととなることから、水浴場のごみを適正に処理するように配慮がなされているか。
〔評価の標準的なチェックポイント〕
・ごみ箱が水浴場の広さ等に応じた十分な数が設備されているか
・ごみ回収が適切に行われているか
・水浴場にごみがないか
   
{3}水浴以外に、水に親しむ場としての特色があるか。
〔評価の標準的なチェックポイント〕
・水浴場に関連した祭り、イベント等が行われているか
・遊歩道等の整備がなされているか
・水浴場にまつわる故事来歴等があるか
     
{4}水浴場周辺の環境を評価するとともに、水浴場と地域との関わりの中での位置を評価する ポイントとして、以下の点を考慮すべきである。
〔評価の標準的なチェックポイント〕
・ごみ持ち帰り運動等ごみ削減の努力が行われているか
・水浴場周辺の環境保全活動が行われているか
・水浴場において魚などの水生生物が観察できるか
・水浴場が活力ある地域社会の維持に貢献しているか
   
{5}トイレ、シャワー等の施設の整備状況は利用者の快適性に大きく影響することから、これらの施設が適切に設置・管理されているか。
〔評価の標準的なチェックポイント〕
・施設が水浴場の広さ、利用者数等に応じて適切な数が整備されているか
・施設が適切にメンテナンスされているか
       
 {6}水浴場へのアクセスが適切に確保されてお り、かつ周辺地域に対して問題が起きないように配慮されているか。
〔評価の標準的なチェックポイント〕
・水浴場に至る公共交通機関が整備されているか
・水浴場に至る交通路が整備されているか
・水浴場に駐車場が十分かつ適切な位置に整備されているか
       


(注)各々の評価項目ごとに、水浴場の特徴的な点、具体的な取組等について記述すること。その後、該当する快適性の要素に即して水浴場の特徴を説明すること。

連絡先
環境庁水質保全局水質管理課
課長 南川 秀樹(内線6630)
 補佐 英保 次郎(内線6634)
 担当 富坂 隆史(内線6636)