報道発表資料

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1997年03月26日

「平成7年度の地方公共団体による地球環境保全等施策調査結果」の概要

環境庁は、平成7年度(平成7年4月から平成8年3月まで)の都道府県・政令指定都市における地球環境保全等施策の実施状況を調査し、このたび以下のとおり結果を取りまとめた。今回は平成2年度分の施策調査から通算して6回目の調査では、新規の施策数は82%増加しており、さらに、平成7年度の施策全体に占める新規施策の割合は24%に達している。このことから、地球環境保全施策が地方の環境政策の重要領域となってきていることがうかがえる。
 また、施策の対象からみると、地球温暖化対策が、全体の3分の1以上を占めている。このことは、地球温暖化問題の重要性が急速に認識されつつあることを示している。さらに、施策の手法からみると、依然として普及啓発が多いものの、他方で、市民や事業者の行動の具体的な規範となるルールづくりや海外協力に関する取組が少数ながら開始されており、具体的な取組の芽が出てきていると言えよう。
 本報告書は、地方公共団体における地球環境保全への取組の参考に供するため、都道府県、市町村(東京都は23区を含む)に配布することとしている。

1.調査の趣旨・目的

 地方公共団体は、従来より、公害問題に対処し自然環境の保全に取り組むなど環境の保全に重要な役割を果たしてきたところであるが、近年は、地域の活動と地球環境との係わりが強く意識されるようになり、地方公共団体において、地球環境保全の視点を盛り込んだ地域環境計画の策定やその実施、環境保全に関する国際協力の推進など新たな取組が求められている。また、平成5年に成立した環境基本法や平成4年の地球サミットで採択されたアジェンダ21においても、住民に直結した地方公共団体の果たす重要な役割について、明記されているところである。
 このように、地方公共団体が地球環境保全等に果たす役割がますます大きくなる中、本調査は、今後の地域における地球環境保全等に関する取組の一層の推進に資することを目的とし、平成7年度における地方公共団体の施策や事業を取りまとめ、公表するものである。なお、本年度調査は、平成2年度以降6回目の調査となる。

2.調査対象団体、調査方法等

 本調査は、全国の都道府県及び政令指定都市を対象に、平成8年5月に調査を依頼して行ったものであり、それぞれの団体の地球環境保全等に係る施策を調査票により把握した。一部団体からは、平成8年度に予定している施策を含めて報告を受けたが、これらも参考の表等に収めるなどし、できるだけ最新の状況が理解されるよう図った。
 なお、今回の調査から、調査対象を地球環境保全等を主目的の一つとした施策に対象を限定した。また、調査方法も、各施策を手法と対象との両面からの組み合わせにより把握する形に変更した(マトリックス表参照)。

3.本年度調査の特徴と全般的動向

(1)本年度調査の特徴
 今回の調査では、都道府県・政令指定都市59団体から、今後予定しているものも含め2,012件の地球環境保全に関する施策について報告があった。前年度と比較し30%近い減少となったが、これは、調査対象を地球環境保全を明確に目的とした施策に限定し、地域の環境保全を主目的とした施策で、その結果として地球環境保全に資するものは調査の対象から除外したためである。調査対象を限定し、かつ調査方法を変更したことにより、地球環境保全施策の体系に占める各施策の役割や位置付けが明確化され、これまでの調査に比べ、政策立案の支援に役立つ報告が行われた。

(2)全般的動向
 {1} 地球環境保全施策は、地域の環境政策の充実に当たっての重要領域となっており、施策の発展段階に差しかかっている。すなわち、前年度の新規施策が264件であるのに対し、平成7年度新規施策は481件と大幅に増加している。また、平成7年度の報告された施策全体に占める新規施策の割合は24%に達している。

 {2} 地球環境問題全般を対象とする施策の割合が全体の32%(前回調査では20%)を占めており、地球環境政策としては、環境基本条例や環境基本計画、さらに庁内推進組織等、制度全般の整備など基盤的な施策が先行している。

 {3} 施策の対象となる問題としては、地球温暖化対策問題が全体の3分の1を占め、次いでオゾン層保護対策、酸性雨対策が多い。逆に砂漠化対策や有害廃棄物の越境移動対策に関する施策の報告はなく、地方の環境政策の力点に明確な傾向が認められる。

 {4} 施策手法としては、普及啓発、調査・研究など、重要性は高いが地球環境への負荷の低減には直結しにくい施策がなお多いものの、地方公共団体の率先実行的対策事業などについても相当数の実例がみられた。他方、市民・事業者の具体的な規範となるルールづくりや海外協力に関する施策は少数にとどまった。しかし、今後地方公共団体の地球環境保全へ取り組む認識が高まるにつれ、施策手法は急速に幅広いものになっていくものと考えられる。

 {5} 施策の対象と手法の組み合わせで見た場合、地球温暖化問題及びオゾン層破壊問題では、地方公共団体の活動から生じる環境負荷を直接に削減する効果のある事業に取り組んでおり、同分野の施策の将来の進展が期待される。しかし、地域住民や事業者が生じさせる環境負荷を低減するために対策を義務づけるなどの手法は少なく、いまだ奨励的な対策が中心となっている。今後地域住民や事業者の地球環境問題への関心が高まるに従い、こうした手法の一層の展開が期待される。


地方公共団体による地球環境保全等施策の主な事例(平成7年度)

 施 策 対 象団体名年度施  策  内  容

 

 

 

 

 

 

 
・条例・計画 兵庫県 環境の保全と創造に関する条例。具体的な施策まで含むもの。
茨城県 地球環境保全行動条例。主目的を地球環境保全とする。
・推進組織 大阪府 (7) 庁内推進組織等を階層的に形成
 (庁内環境総括責任者の設置)
広島県 5~ 地球環境対策室(庁内マトリックス組織:関係26課38名)          
・事業者・消費者としての計画 東京都 事業者・消費者としての取組の率先実行計画
 (エコアップ計画)
福島県 事業者・消費者としての取組の率先実行計画
・市民・事業者のルール 神戸市 (8) 地球環境への負荷低減を含め、事業者との環境保全協定を締結及び市民行動計画の策定
・市民・事業者支援 静岡県 事業者を対象とした環境管理・監査制度の普及啓発
広島県 地域産業技術改善費補助に地球環境枠を設置
・調査研究等 三重県 6~8 開発と環境の経済評価に関する調査研究と海外への提供
・普及啓発・環境教育 名古屋市 地球環境保全に力点を置いた環境学習センターの整備
北九州市 公害対策史の編纂と海外(途上国)への普及
         

 

 

 

 

 

・温暖化防止計画 埼玉県 意欲的な目標を掲げた地球温暖化対策地域推進計画の策定
・都市・地域構造の形成 大阪府 環境共生建築技術の検討及び建築工事への活用
仙台市 公共施設における断熱構造化、照明設備の効率化
・交通体系等の形成 愛知県 環境にやさしい自動車利用指針の策定
名古屋市 パークアンドライド駐車場の整備、公共交通機関の利用促進
・生産構造の形成 長野県 環境調和型産業技術推進事業
名古屋市 インバース・マニュファクチャリング・システム研究会の設立
・エネルギー供給構造の形成 京都市 地下鉄の車両制動時の回生電力の吸収、有効利用
大阪市 UNEP国際環境技術センターに燃料電池、太陽光発電の設置
・ライフスタイルの実現 京都市 ごみ減量、リサイクル行動計画策定
・二酸化炭素の吸収源 北海道 5~9 森林の炭酸ガス固定能力調査
川崎市 (8) 屋上緑化等の手引き作成
・CO2以外の温室効果ガス抑制 愛知県 亜酸化窒素等の発生を少なくする施肥法の研究
兵庫県 固定発生源からのメタン等温室効果ガス排出係数調査
・その他 兵庫県 温暖化防止メニュー毎に抑制効果の推計方法、評価方法の開発
       
オゾン層保護対策
 ・フロンガス使用中止 山梨県 脱有機塩素系洗浄システム開発による洗浄装置の産学官共同研究
 ・フロンガス回収 宮城県 特定フロン回収モデル事業(自治体に対し回 収機購入の助成)       
 ・フロンガスの破壊 滋賀県 ロータリーキルン方式焼却炉での破壊実験
       
酸性雨対策 秋田県 5~7 森林地帯における酸性雨調査、酸性雨等森林衰退調査等
福岡県 5~ 日韓海峡沿岸環境技術交流の推進(酸性雨共同調査研究等)
       
海洋汚染対策 東京都 漁場環境保全対策(漂着廃油処理対策)
       
生物多様性の保全
 ・生態系の多様性 宮城県 伊豆沼・内沼環境保全対策整備事業等
 ・生物種の多様性 千葉県 レッドデータブック作成
       
森林の保全対策
 ・森林の保護・整備 岡山県 新岡山県自然保護計画策定
 ・木材資源の有効利用 山梨県 (8) 建築解体廃材を利用した木質系ボードの開発(産学官共同研究)
       
途上国等との環境問題
 ・環境問題全般 北九州市 人材バンク及び専門家養成プログラムの整備
北九州市 6~ 中国大連市環境モデル地区計画への協力
 ・国際会議の開催等 埼玉県 第3回気候変動に関する世界自治体サミットをICLEIと共同開催
仙台市 第5回地球温暖化アジア太平洋地域セミナーの開催
       
連絡先
環境庁企画調整局地球環境部環境保全対策課
課長:小林 光 (6740)
 補佐:清瀬和彦 (6758)
 担当:酒巻弘和 (6738)