報道発表資料

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2003年06月25日
  • 自然環境

平成15年のトキの繁殖結果等について

平成15年6月22日に、本繁殖期の19羽目のトキのヒナがふ化し、本年のトキの繁殖(産卵・ふ化)は全て終了しましたので、本年の繁殖結果等についてお知らせします。
 平成15年は、既存の2組の繁殖ペアに加え、新たに、佐渡トキ保護センター生まれの個体同士によるペアを1組形成し、3組のペアで繁殖に取り組んだ結果、合計33個の卵が産まれ、19羽のヒナがふ化しました。現時点におけるトキの総個体数は40羽となっています。
 また、トキの育雛能力について、トキの近縁種を用いて確認試験を行ったところ、繁殖ペア以外のメス2羽が育雛に成功し、巣立ちに至りました。自然育雛の確認試験は昨年から実施していますが、佐渡トキ保護センターでトキの個体の育雛能力が確認できたのは、今回が初めてです。
1.平成15年のトキの繁殖結果

(1)産卵状況
 平成15年は、例年より約1週間早い3月24日に初産卵(No.20(新新)・No.23(♀)ペア)があり、5月27日の最終産卵(No.19(優優)・No.18(美美)ペア)までのおよそ2ヶ月間(65日間)に、3組のペアから合わせて33個の卵が産まれました。これは、昨年の産卵数21個に比べ、12個多く(57%増)、1ペア当たりの産卵数は11.0個と前年並み(10.5個)でした。
 また、33個の卵のうち、有精卵は20個(60.6%)、無精卵は6個であり、他の7個は、巣外転落などにより破卵し、検卵に至りませんでした。
(別添、参考1及び4参照)
 
(2)ふ化状況
 本年産まれた20個の有精卵から、19羽のヒナがふ化しました。他の1卵は、ふ卵途中で発育を停止し、ふ化に至りませんでした。ふ化数は、昨年の 14羽に比べ5羽増(36%増)となり、全有精卵に対するふ化した卵の割合も95.0%と例年に比べ高い水準となっています。本年の19羽のヒナのふ化により、トキの総個体数は41に達しました。
  なお、6月25日(水)早朝、1羽のヒナ((NO.20(新新)・NO.23ペア)の第6子(66/C/03),6月11日ふ化)が死亡したため、現時点のトキの総個体数は 40羽となっています。死亡したヒナについては、佐渡トキ保護センターで死体の解剖を行い、原因分析等を行う予定です。
(別添、参考1~4参照)

(3)今後の課題
 本年は、繁殖ペアの増加に応じて、過去最大の33個の産卵があり、ふ化数も19羽と過去最大でしたが、全産卵数に対する有精卵の割合は60.6%に留まりました。これは、巣外転落等による破卵のため検卵できなかったものが例年に比べ多く発生(7個)したこと等によるものです。
 来期においては、卵の転落防止等の対策を講じる必要があると考えています。


2.育雛能力の確認試験の結果

 本年の繁殖期に併せて、佐渡トキ保護センターのトキの育雛能力について、トキの近縁種を用いて確認試験を行いました。この結果、繁殖ペア以外のメス2羽が育雛に成功し、ヒナの巣立ちに至りました。

(1)確認試験の対象個体
[1] No.19(優優)・No.18(美美)ペア
[2] No.20(新新)・No.23(♀)ペア
[3] No.26(♀), No.32(♀)[2001年生](注2)
(注1) No.17(友友)・No.16(洋洋)ペアについても確認試験の対象とする予定であったが、最終産卵日以降、巣に入らなかったため、対象から除外した。
(注2) 繁殖ペア未形成のNo.26(♀), No.32(♀)を一つのケージで飼育していたところ、無精卵を産んだため、追加的に試験の対象に加えた。

(2)確認試験の方法
 [1]及び[2]の2組のペアについては、各ペアの最終産卵日から6日~10日後に、抱卵中の卵を巣から採卵し、代わりにふ化後間もない近縁種(ホオアカトキ)のヒナを1羽ずつ両ペアの巣に入れ、両ペアの育雛行動を観察。
 
 [3]のメス(2羽)については、無精卵の産卵後に、近縁種(ホオアカトキ)の卵を抱卵させ、抱卵停止後、ふ化後間もない近縁種(クロトキ)のヒナ1羽を巣に入れ、2羽の育雛行動を観察。

(3)確認試験の結果
 [1]のペアについては、オス、メスともに巣に入ってヒナを抱く動作が見られず、約7時間後にヒナを回収。
 [2]のペアについては、メスが巣に入ってヒナを抱く動作が見られたが、約 30分後にオスが巣に入ってヒナを巣外に放棄。結果的にヒナは死亡。
 [3]のメス(2羽)については、交互にヒナを抱き、ヒナに給餌する行動が認められました。22日間、育雛した後、ヒナが巣立ち。その後、約1週間は2羽のメスがヒナに給餌していましたが、9日後からヒナが自力採餌を開始。
このヒナは、現在も2羽のメスと同じケージ内で飼育中。
 
(4)確認試験のまとめ
本年の繁殖期に、2組の繁殖ペアと無精卵を産卵したメス(2羽)を対象としてトキの近縁種を用いた育雛能力の確認試験を実施。
2組の繁殖ペアについては、育雛能力が認められませんでした。
繁殖ペア未形成のメス(2羽)については、育雛能力が確認されました。
佐渡トキ保護センターでトキの個体の育雛能力が確認されたのは、この2羽のメスのトキが初めてです。
  
(5)今後の対応
今年の育雛能力の確認試験の結果については、今後、検討会において分析・評価を行います。
今年の確認試験で一定の成果が収められたと認められることから、来年の繁殖期においても確認試験を実施する見込みです。



【参考】
 今年ふ化したトキのヒナの写真については、電子情報で準備していますので、必要な方は担当課まで御連絡下さい。

添付資料

連絡先
環境省自然環境局野生生物課
課長:黒田大三郎(6460)
 補佐:赤倉 正弘 (6469)
 担当:杉村 素樹 (6469)

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