報道発表資料

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2002年12月11日
  • 地球環境

地球環境研究総合推進費による研究の中間・事後評価結果について

環境省では、地球環境保全政策を科学的側面から支援することを目的として、地球環境研究総合推進費(以下「推進費」という)による研究を推進しているところ。 このたび、推進費により現在継続中の研究課題に対する中間評価と、13年度に終了した研究課題に対する事後評価を実施したのでその結果を公表する。
  • 評価方法

(1)評価の目的及び評価対象課題

 今回の評価対象は33件の研究課題。評価時期は以下のとおり。

中間評価(2年度目)
 本年度が研究開始2年目にあたる研究課題13件が対象。
 3年度目の研究費や研究計画の見直し、最終的な研究成果取りまとめ方針に活用することを目的とする。
中間評価(3年度目)
 昨年度の中間評価にて非常に高い評価を受け、かつ研究課題代表者が研究期間の延長を希望する研究課題2件が対象。
 研究期間を2年間延長するか否かの判断を行うほか、延長期間の研究計画策定に活用することを目的とする。
事後評価
 平成13年度で研究期間が終了した研究課題18件が対象。
 今後の新規課題の事前評価や研究制度の見直しに活用することを目的とする。
 

(2)評価者及び評価手順

 評価者は、地球環境研究に関する専門家・有識者で構成される地球環境研究企画委員会、及びその下部組織となる第1~第4研究分科会。

 

 評価対象課題の研究分野(温暖化、酸性雨、自然資源の劣化等)に応じ、地球環境研究企画委員会第1~第4研究分科会において評価を実施した後、地球環境研究企画委員会において、全研究分野を通した評価結果の調整及び総括を行った。

 

 評価の仕方は、研究グループの作成した研究成果報告書を対象とした"書面評価"と、研究者による説明や質疑応答等を対象とした"ヒアリング評価"の2つがあり、評価時期に応じて下表のとおり実施した。なお、ヒアリング評価の際は、行政担当部局も評価に参加し、それらを加味した上で最終的な評価結果として集計した。


 

  書面評価 ヒア評価
中間評価(2年度目) 実施 実施
中間評価(3年度目) 実施
事後評価 実施

  (3)評価方法の詳細
 評価方法と評価基準の詳細は、評価の際に評価者へ通知するとともに、評価の透明性の確保の観点から被評価者に対しても事前に通知した。なお、ヒアリング評価時の評価結果集計については、全研究課題のヒアリング終了時点で直ちに集計し、その場で評価者へ評価委員会全体の評価結果を提示して総合的な評価結果の調整に努めた。
 
  

  • 評価結果

 以下、評価結果全般に関する概要を示す。具体的な評価結果は添付資料を参照のこと。

(1) 中間評価(2年度目)
 評価対象課題の13件は、概ね高い評価のものが多かった。全体として、研究を中断すべきとの評価を受けた研究課題はなく、全ての研究課題について3年度目も研究を継続する予定とする。評価結果については、15年度の研究費の増減に反映させるほか、低い評価を受けた研究課題については、特に研究計画の見直し等に努めるものとする。

 なお、今回の中間評価において、特に次に示す2課題については、その研究成果と今後の波及効果・発展性が極めて高く評価された。

 

・B-9 太平洋域の人為起源二酸化炭素の海洋吸収量解明に関する研究(H13~H15、研究代表者:国立環境研究所 野尻幸宏、共同研究機関:水産総合研究センター、産業技術総合研究所、北海道大学)

・C-5 中国北東地域で発生する黄砂の三次元的輸送機構と環境負荷に関する研究(H13~H15、研究代表者:国立環境研究所 西川雅高、共同研究機関:埼玉大学、筑波大学、長崎大学、東京商船大学)

 上記B-9課題は、商船の太平洋航路を利用した海洋表層のCO2吸収・排出量の季節変化・経年変化等の解明のほか、様々な機関で取得された海洋のCO2関連観測データの統合的解析を国際的に試みる研究であり、今後の地球温暖化の将来予測に関する不確実性低減に向けた貢献の可能性が高く評価された。
 一方、C-5課題は、近年大きな問題となりつつある黄砂に対して、発生源からわが国までの動態を観測・評価する技術を確立し、その発生機構、わが国への輸送機構及び輸送過程における化学的な動態変化機構の解明を試みる研究であり、研究成果に対する社会的なニーズの大きさのほか、今後の黄砂防止対策への直接の貢献、並びに黄砂防止対策後の影響評価に欠かせない科学的知見として高く評価された。

(2) 中間評価(3年度目)
 評価対象課題の2件とも、昨年度の中間評価に引き続き極めて高く評価された。このため、いずれの研究課題とも、平成14年度に終了する予定であった当初の研究期間を2年間延長し、研究終了予定年度を平成16年度までとする。

・B-54 アジア太平洋地域統合モデル(AIM)を基礎とした気候・経済発展統合政策の評価手法に関する途上国等共同研究(H12~H14、研究代表者:国立環境研究所 甲斐沼美紀子、共同研究機関:気象研究所、京都大学、(社)システム総合研究所)

・C-3 東アジアにおける民生用燃料からの酸性雨原因物質排出対策技術の開発と様々な環境への影響評価とその手法に関する研究(H12~H14、研究代表者:国立環境研究所 畠山史郎、共同研究機関:京都大学、埼玉大学、佛教大学、(社)国際善隣協会、(社)大気環境学会)


 B-54課題は、地球温暖化に関する各種の政策がもたらす環境保全効果と経済的影響を総合的に評価するための数値モデルであるアジア太平洋地域統合モデル(AIM)を、アジア地域へ幅広く適用するために改良を進め、アジア地域における温室効果ガス削減方策、地域環境対策や経済発展施策との両立の可能性等を探ることを目的とした研究であり、アジア各国における政策ニーズへの貢献や国際的な温暖化防止施策の評価方法論への貢献の実績と今後の発展性が高く評価された。
 一方、C-3課題は、中国を主な対象として、低品位の石炭をクリーン化する技術であるバイオブリケット技術について、乾式選炭技術の実用化・適正化、健康改善効果及び経済性の評価等を行い、中国における石炭利用からの酸性雨原因物質の排出削減を図ることを目的とした研究であり、乾式選炭技術等に関し普及の可能性の高い具体的な研究成果が得られつつあること、社会的な情勢と効果を含め、総合的に技術開発が進められているという点が高く評価された。
 
(3) 事後評価(平成13年度終了課題)
 評価対象課題の18件は概ね高い評価の研究課題が多かった。今回の評価対象課題のうち幾つかのものについては、既に14年度新規課題として新たな研究をスタートしている場合がある。代表者及び研究内容等から判断して後継課題(今回の事後評価対象課題との継続性が大きい課題)とみられる場合は、今回の事後評価結果を、後継課題の15年度の研究費に反映させるものとする。
 
 なお、今回の事後評価において、以下に示す課題については極めて高く評価された。

・ B-11 地球温暖化による生物圏の脆弱性の評価に関する研究(H11~H13、研究代表者:国立環境研究所 原沢英夫、共同研究機関:農業環境技術研究所、森林総合研究所、石川県白山自然センター、筑波大学、東邦大学、龍谷大学、東京大学、静岡大学、宮崎公立大学、京都大学、広島大学、国土環境株式会社)

 上記B-11課題は、わが国をはじめとしたアジア地域の陸域生態系について地球温暖化に対する脆弱性を地域レベルで評価する手法を開発し、また、生態系への影響を指標とした温暖化モニタリング手法を検討することを目的とした研究であり、温暖化に対する共通のシナリオを用いて生態系への温暖化影響を、科学的側面から総合的に評価する基礎を確立したという点で、先導性と研究成果の社会的・経済的価値が高く評価された。

添付資料

連絡先
環境省地球環境局総務課研究調査室
室 長: 高橋 康夫(内線6730)
 補 佐: 小林 郁雄(内線6732)
 担 当: 小口 陽介(内線6732)
 

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