報道発表資料

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2002年11月15日
  • 総合政策

岩国飛行場藻場・干潟回復検討報告書に対する環境省の見解について

環境省は、岩国飛行場藻場・干潟回復検討報告書に対する見解をとりまとめ、平成14年11月15日付けで、山口県知事に対し通知を行った。
 
<環境省見解の概要>
  報告書については、確実に安定した藻場・干潟を造成するとの観点に基づき、長期かつ慎重な議論を踏まえた適切なものと評価できるが、本事業は、埋立て等について環境保全上特別な配慮が必要な瀬戸内海海域における事業であることから、事業者が次の点に留意し、確実な藻場・干潟の維持・造成に努めるよう、特段の配慮をお願いした。
 [1] 本回復検討報告書を尊重した確実な藻場・干潟の回復
[2] 工事区域内にある残存する藻場・干潟の保全
[3] 藻場・干潟の回復に向けた更なる取組み
  
<概 要>
 岩国飛行場滑走路移設に伴う埋立事業は、在日米海兵隊岩国航空基地周辺における安全の確保と航空機騒音の緩和を図るため、防衛施設庁広島防衛施設局が平成8年度から平成20年度までの予定で、現基地の地先海面約213haを埋め立て、滑走路を約1km沖合に移設するものである。
 本事業については、平成7年8月に閣議決定要綱に基づく環境影響評価の手続が完了し、平成8年11月に公有水面埋立法に基づく承認がされ、南地区から埋立工事が行われている。
 平成8年の埋立承認の認可に際し、環境庁長官(当時)が、運輸大臣(当時)及び建設大臣(当時)に対して、藻場・干潟の造成、海洋性レクリエーションのための水際線の確保、航空機騒音に係る予測結果のレビュー、水質保全対策、道路交通騒音対策及び計画的な環境監視に関する意見を提出しているところである。
 特に藻場・干潟の造成については、「本事業の実施により、藻場及び干潟が一部消滅することから、専門家の指導、助言を得て、本埋立計画地周辺海域において、最大限、新たに藻場及び干潟の造成に努めるとともに、藻の定着状況及び干潟の形成状況を計画的に監視する等により極力維持に努めること」との意見を述べている。
 事業者である広島防衛施設局においては、平成8年8月に学識経験者からなる「岩国飛行場藻場・干潟回復調査研究委員会」を設置し、当省の意見等を踏まえ、同委員会の指導・助言を得て、本埋立計画地周辺を対象に消滅する藻場・干潟の適切な回復を図るための検討を進めてきたところである。今般、その検討結果を報告書として取りまとめ、平成14年9月20日付で公有水面埋立の承認権者である山口県知事に報告を行ったものである。
 このことについて、山口県知事から当省に対し、平成14年9月24日付けで報告があったことから、今回、報告書に対する見解を取りまとめ、本日、総合環境政策局長から山口県知事宛に通知を行ったものである。

[環境省見解]
 
 環境庁(当時)は、岩国飛行場滑走路移設に伴う埋立事業に係る公有水面埋立承認の認可に際して、環境保全上、万全の対応を事業者(防衛施設庁広島防衛施設局)がとる必要があるとの考えから、平成8年11月22日に水質保全対策、道路交通騒音対策、計画的な環境監視等とともに、「本事業の実施により、藻場及び干潟が一部消滅することから、専門家の指導、助言を得て、本埋立計画地周辺海域において、最大限、新たに藻場及び干潟の造成に努めるとともに、藻の定着状況及び干潟の形成状況を計画的に監視する等により極力維持に努めること」との藻場・干潟の造成に関する意見を運輸省(当時)及び建設省(当時)に述べた。
 今般、事業者である防衛施設庁広島防衛施設局が当省の意見等を踏まえ実施してきた藻場・干潟の適切な回復を図るための検討の結果が、岩国飛行場藻場・干潟回復検討報告書として取りまとめられ、平成14年9月24日、貴職(山口県知事)から報告があったところである。
 当該報告書では、a)藻場・干潟を回復する場合、現存する生態系を保全しつつ、周辺の藻場・干潟と同様な生態系となることが望ましい、b)地盤などの安定性を考慮し、台風などで衰退しても回復を繰り返す藻場・干潟をつくることが重要であるとの考えの下で、[1]「藻場・干潟形成の可能性」(必須条件)、[2]「周辺環境への影響」(重要条件)、[3]「事業性」(配慮条件)を基本条件として、回復案(対象エリアを地形的にA~Hの8つの候補区域に分け、幾つかの形状と面積を想定したもの)を絞り込んでいる。その結果、回復可能と想定した面積は、藻場で14ha、干潟で11ha、計画護岸で2haの計27haとしている。

 これらの検討については、専門家の指導・助言を得て、確実に安定した藻場・干潟を造成するとの観点に基づき、長期かつ慎重な議論を踏まえた適切なものと評価できるが、本事業は、[1]埋立て等について環境保全上特別な配慮が必要な瀬戸内海海域における事業であること、[2]対象エリア内に浚渫跡地が多数存在する特殊なケースであること等から、今後、本報告書に基づく藻場・干潟の回復に当たっては、下記の事項に留意の上、事業者において、万全の対応がなされ、当該地域の藻場・干潟の保全が図られるよう、特段のご配慮をお願いしたい。

  1. 本回復検討報告書を尊重した確実な藻場・干潟の回復
     
     報告書に掲げられた藻場・干潟の回復可能面積は、周辺の生態系と同様なかつての安定的な藻場・干潟として確実に回復できるものとして、浚渫跡地を中心に絞り込んだものであることから、これについては、達成すべき当面の目標として、専門家の指導・助言を得て、早期かつ確実に回復することが必要である。
     また、新たに造成した藻場・干潟については、安定的に維持されることが重要であることから、モニタリング調査を含め、その維持方策について、万全の対応を行うことが必要である。
     なお、モニタリング調査においては、新たな護岸の設置に伴う堆砂傾向、造成後の生物相の推移等の環境の変化を的確に把握し、回復計画に適切に反映させていく必要がある。
     
     
  2. 工事区域内にある残存する藻場・干潟の保全
     
     工事区域内にある残存する藻場・干潟については、回復させる藻場への種子の供給や当該藻場との連続性による生態系の形成にとって極めて重要である等から、工事による影響を最小限に留め、できる限り保全を図る必要がある。このため、今後とも、専門家の指導・助言を得て、埋立工事に伴い影響を受ける藻場・干潟の面積をできる限り最小限に留めるとともに、引き続き、残存する藻場・干潟の監視活動を行うなど、万全な保全対策を行う必要がある。
     
     
  3. 藻場・干潟の回復に向けた更なる取組み
     
     周辺の海域環境等における藻場・干潟の重要性に鑑み、本報告書に基づく藻場・干潟の回復に当たっては、引き続き専門家の指導・助言を得つつ、更なる藻場・干潟の回復の可能性についての検討を行う必要があり、具体的には、今後の回復事業の進展や技術の進展等に応じ、回復可能区域の拡大に努める必要がある。

添付資料

連絡先
環境省総合環境政策局環境影響評価課環境影響審査室
室  長:梶原 成元(6231)
 審査官:春原(すのはら) 武志(6253)

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