報道発表資料

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1997年03月06日

播磨灘北西部等の全窒素及び全燐に係る環境基準の水域類型の指定に関する中央環境審議会答申について

中央環境審議会(会長:近藤次郎 前日本学術会議会長)は、平成8年5月27日に諮問された播磨灘北西部等6海域の全窒素及び全燐に係る環境基準の水域類型の指定について、同審議会水質部会(部会長:村岡浩爾 大阪大学工学部教授)において検討してきたところであるが、3月6日付けで、中央環境審議会会長から環境庁長官に対して答申が行われる予定である。
 この答申は、播磨灘北西部等6水域の各水域ごとに、全窒素及び全燐に係る環境基準の類型をあてはめるとともに、それぞれの達成期間と必要に応じ暫定目標を定めるものである。
 環境庁では、本答申を踏まえ、播磨灘北西部等6海域の全窒素及び全燐に係る環境基準の水域類型の指定について速やかに告示を行うよう手続きを進める予定である。

1.経緯
 

(1) 海域の富栄養化の防止の観点から、平成5年8月27日付けで海域の全窒素及び全燐に係る水域の利用目的ごとの環境基準(別表1)が設定された。この環境基準は、水域の利用目的(水産、水浴等)に対応して複数の類型が設けられており、個々の水域にいずれかの類型をあてはめることによって、当該水域の具体的な水質目標が示されることとなっている。また、類型指定は、政令で都道府県知事に委任された水域については都道府県知事が行い、それ以外の水域については環境庁長官が行うこととされている。
(2) 環境庁長官が類型指定することとされている水域のうち、既に、東京湾及び大阪湾については平成7年2月28日に、伊勢湾については平成8年2月27日にそれぞれ類型指定を行ったところであるが、これらに引き続き、今回、瀬戸内海の6海域(播磨灘北西部、備讃瀬戸、燧灘東部、燧灘北西部、広島湾西部、響灘及び周防灘)の類型指定について、平成8年5月27日付けで中央環境審議会に対して諮問を行った。
(3) 中央環境審議会においては、諮問を受け、同審議会水質部会において鋭意審議を進めてきたところであり、これら6水域の全窒素及び全燐に係る環境基準の水域類型の指定について3月6日に開催される予定の水質部会における最終的な審議を経て、同日環境庁長官に対して答申が行われる予定である。
 

2.答申の概要(別表2及び別図参照)

(1)播磨灘北西部の水域及び該当類型
 「播磨灘北西部」水域については、主な利用は水産1種に該当する水産、水浴、工業用水であること等から、全窒素及び全燐の環境基準は類型[2]をあてはめるものとする。

(2)備讃瀬戸の水域及び該当類型
 水島港を含む「水島港区」水域については、主な利用は工業用水であること等から、全窒素及び全燐の環境基準は類型[3]をあてはめるものとする。
 備讃瀬戸の北部に該当する「水島地先海域」水域については、主な利用は、水浴、水産1種に該当する水産、工業用水であること等から、類型[2]をあてはめるものとする。
 福山港を含む「箕島町地先海域」水域については、主な利用は生物生息環境保全であること等から、類型[4]をあてはめるものとする。
 備讃瀬戸の東部に該当する「備讃瀬戸(イ)」水域については、主な利用は、水産1種に該当する水産、水浴等であること等から、類型[2]をあてはめるものとする。
 備讃瀬戸の北西部に該当する「備讃瀬戸(ロ)」水域については、主な利用は、水産1種に該当する水産、水浴等であること等から、類型[2]をあてはめるものとする。
 備讃瀬戸の南西部に該当する「備讃瀬戸(ハ)」水域については、主な利用は、水産1種に該当する水産、水浴等であること等から、類型[2]をあてはめるものとする。

(3)燧灘東部の水域及び該当類型
 「燧灘東部」水域については、主な利用は、水産1種に該当する水産、水浴、工業用水であること等から、全窒素及び全燐の環境基準は類型[2]をあてはめるものとする。

(4)燧灘北西部の水域及び該当類型
 「燧灘北西部」水域については、主な利用は、水産1種に該当する水産、水浴、工業用水であること等から、全窒素及び全燐の環境基準は類型[2]をあてはめることとする。

(5)広島湾西部の水域及び該当類型
 大竹港及び岩国港を含む「大竹・岩国地先海域」水域については、主な利用は工業用水、水産1種に該当する水産であること等から、全窒素及び全燐の環境基準は類型[2]をあてはめることとする。
 「広島湾西部」水域については、主な利用は、水浴、水産1種に該当する水産であること等から、類型[2]をあてはめるものとする。

(6)響灘及び周防灘の水域及び該当類型
 「洞海湾」水域については、主な利用は工業用水であること等から、全窒素及び全燐の環境基準は類型[4]をあてはめるものとする。
 宇部港を含む「響灘及び周防灘(イ)」水域については、主な利用は工業用水及びノリ等の養殖であること等から、類型[3]をあてはめるものとする。
 小野田港を含む「響灘及び周防灘(ロ)」水域については、主な利用は工業用水及びノリ等の養殖であること等から、類型[3]をあてはめるものとする。
 周防灘北部の「響灘及び周防灘(ハ)」水域については、主な利用は水産1種に該当する水産、工業用水等であること等から、類型[2]をあてはめるものとする。
 周防灘南部の「響灘及び周防灘(ニ)」水域については、主な利用は水産1種に該当する水産、水浴、工業用水等であること等から、類型[2]をあてはめるものとする。
 響灘の「響灘及び周防灘(ホ)」水域については、主な利用は水産1種に該当する水産、水浴、工場用水であること等から、類型[2]をあてはめるものとする。

(7)環境基準の達成期間及び暫定目標
 将来の水質の予測結果に基づき、現在見込み得る対策を行ったとしても、5年後において全窒素又は全燐に係る環境基準値を達成することが困難と考えられる水域については、環境基準の達成期間を「段階的に暫定目標を達成しつつ、環境基準の可及的速やかな達成に努める。」とし、平成13年度における暫定目標を、当該予測結果を踏まえ設定する。また、それ以外の水域については「直ちに達成する。」とする。
 なお、現状の技術のもとで諸対策を鋭意進めるとしても、一部の水域では全窒素又は全燐に係る環境基準の達成が容易でないことを考慮すると、今後とも、全体として均衡のある実施可能な削減対策を検討していくことが必要である。このため、暫定目標については、水質の改善状況、施策の進捗状況等を踏まえて、概ね5年ごとに必要な見直しを行うものとする。

3.今後の予定

 播磨灘北西部等6水域の水域類型の指定については、答申を踏まえ、今後、関係県の意見を聴取した上で、環境庁告示を速やかに行う予定である。
 なお、国指定水域のうち残る有明海についても、今回の水域の指定後速やかに、中央環境審議会に諮問を行い、議論を行って頂く予定である。


別表1 海域の全窒素及び全燐に係る環境基準

項目
類型
利用目的の適応性 基準値

全窒素
 りん
全燐
1 自然環境保全、及び2以下の欄に掲げるもの(水産2種及び3種を除く) 0.2mg/l以下 0.02mg/l以下
2 水産1種、水浴、及び3以下の欄に掲げるもの(水産2種及び3種を除く) 0.3mg/l以下 0.03mg/l以下
3 水産2種、及び4の欄に掲げるもの(水産3種を除く) 0.6mg/l以下 0.05mg/l以下
4 水産3種、工業用水、
生物生息環境保全
1 mg/l以下  0.09mg/l以下
備考 基準値は、年間平均値とする。
水域類型の指定は、海洋植物プランクトンの著しい増殖を生ずるおそれがある海域について行うものとする。 

(注) 1 自然環境保全 自然探勝等の環境保全
2 水産1種
 
底生魚介類を含め多様な水産生物がバランス良く、かつ、安定して漁獲される
  水産2種
 
一部の底生魚介類を除き、魚類を中心とした水産生物が多獲される
  水産3種 汚濁に強い特定の水産生物が主に漁獲される
3 生物生息環境保全 年間を通して底生生物が生息できる限度



別表2 播磨灘北西部等6水域の全窒素及び全燐に係る環境基準

播磨灘北西部

水域 該当
類型
達成期間 暫定目標
(平成13年度)
播磨灘北西部 海域
2
段階的に暫定目標を達成しつつ、環境基準の可及的速やかな達成に努める。 全燐 0.033mg/l

備讃瀬戸

水域 該当
類型
達成期間 暫定目標
(平成13年度)
水島港区 海域
3
直ちに達成する。  
水島地先海域 海域
2
段階的に暫定目標を達成しつつ、環境基準の可及的速やかな達成に努める。 全燐  0.034mg/l
箕島町地先海域 海域
4
段階的に暫定目標を達成しつつ、環境基準の可及的速やかな達成に努める。 全窒素 1.1mg/l
備讃瀬戸(イ) 海域
2
直ちに達成する。  
備讃瀬戸(ロ) 海域
2
段階的に暫定目標を達成しつつ、環境基準の可及的速やかな達成に努める。 全燐  0.034mg/l
  海域
2
段階的に暫定目標を達成しつつ、環境基準の可及的速やかな達成に努める。 全窒素 0.34mg/l

燧灘東部

水域 該当
類型
達成期間 暫定目標
(平成13年度)
燧灘東部 海域
2
直ちに達成する。  

燧灘北西部

水域 該当
類型
達成期間 暫定目標
(平成13年度)
燧灘北西部 海域
2
直ちに達成する。  

広島湾西部

水域 該当
類型
達成期間 暫定目標
(平成13年度)
大竹・岩国地先海域 海域
2
直ちに達成する。  
広島湾西部 海域
2
直ちに達成する。  

響灘及び周防灘

水域 該当
類型
達成期間 暫定目標
(平成13年度)
洞海湾 海域
4
段階的に暫定目標を達成しつつ、環境基準の可及的速やかな達成に努める。 全窒素 2.0mg/l
響灘及び周防灘
(イ)
海域
3
直ちに達成する。  
響灘及び周防灘
(ロ)
海域
3
直ちに達成する。  
響灘及び周防灘
(ハ)
海域
2
直ちに達成する。  
響灘及び周防灘
(ニ)   
海域
2
直ちに達成する。  
響灘及び周防灘
(ホ)
海域
2
直ちに達成する。  

(注)該当類型については、別表1に示される海域の全窒素及び全燐に係る環境基準の類型に対応している。

連絡先
環境庁水質保全局水質管理課
課長    南川 秀樹(6630)
課長補佐  英保 次郎(6634)