報道発表資料

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2002年04月22日
  • 自然環境

生物多様性条約第6回締約国会議の結果について

4月7日~19日(うち17~18日は閣僚級会合)にオランダのハーグにおいて生物多様性条約(Convention on Biological Diversity:CBD)第6回締約国会議(COP6)が開催され、160以上の国及び120以上の閣僚級が参加した(これほど多数の閣僚級が参加したのははじめてのこと。)。我が方からは、山下環境副大臣及び岩永農林水産大臣政務官が閣僚級会合に出席した他、締約国会議には外務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省、環境省の代表が出席。
 閣僚級会合では、ヨハネスブルグ・サミットへ向けたメッセージ等を含む「閣僚宣言」(別紙1)が採択された。
 今次締約国会議では、優先課題である、[1]森林の生物多様性、[2]外来種、[3]遺伝資源へのアクセスと利益配分、[4]生物多様性条約戦略計画を中心とする36件の決議案が採択された。
  今次締約国会議が、条約発効後10年目の大きな節目にあたり、これまでの議論を集大成し、「対話から行動へ」を主題に具体的な行動を展開していく基盤を築いたことは評価できる。また、米国が本条約及びバイオセーフティーに関するカルタヘナ議定書の批准を目指す旨表明したことが注目された。

1 これまでの経緯

生物多様性条約(1992年の地球サミットにあわせて採択。現在までに183カ国が締約。米は未締約。)が1993年に発効して以来、これまでに5回の締約国会議を開催。
この中で、乾燥地、海洋・沿岸といった主題別の生物多様性に関する作業計画の作成や、エコシステムアプローチ原則など、横断的な課題に関する114の決議を採択。さらに、国別報告書を過去2回にわたり締約国より提出させ、条約の実施状況を把握。
バイオテクノロジーの環境安全性に関する議定書を検討することが条約に規定されたことを受けて、バイオセーフティに関するカルタヘナ議定書を2000年1月に特別会合で採択。現在14カ国が批准済(2002年3月15日現在)。同議定書は締約国数が50を超えた日から90日後に発効。

2 第6回締約国会議の結果

(1)開催地・会議期間 : ハーグ(オランダ) 平成14年4月7日(日)~19日(金)

 期間中、閣僚級円卓会合を17日~18日に開催。なお、我が国より、新生物多様性国家戦略を策定した旨表明した。

(2)閣僚級会合の結果

生物多様性の減少を緩和するための方策等を中心に閣僚が討議した結果、閣僚宣言がとりまとめられた。
我が国からは、[1]科学的データ整備の促進、湿地の保全・再生等を通じた生態的ネットワーク形成の重要性、[2]違法伐採対策を含む森林の生物多様性の保全と持続可能な利用の重要性について発言した。また、水鳥保全戦略やサンゴ礁イニシアティブの一層の推進など、生物多様性保全のための国内対策とアジアを中心とした国際協力を一体的に展開していく考えを表明した。
同閣僚宣言では、森林の生物多様性に関する新たな作業計画(森林法規の実行や貿易対策等の違法伐採に関する対策を含む)の実施等森林に関する記述が盛り込まれた。また、WSSDへのメッセージとして、上記のほか、[1]持続可能な開発のために生物多様性の観点が不可欠であること、[2]2010年までに生物多様性の損失を阻止し、逆転させること、[3]生物多様性に関する基礎調査・研究の強化、[4]生態系、特に浅海域を含む湿地等の保全と再生、[5]森林等の生物多様性という観点の他の開発政策・環境政策への統合、[6]関係する全ての主体の参加等が主たる内容となった。

(3)締約国会議の主な結果(決議事項一覧は別紙3参照)

○森林の生物多様性
 調査研究の推進等が中心の現行の作業計画を見直し、違法伐採に関する対策を含む、森林の生物多様性保全のための幅広い対策を盛り込んだ新たな作業計画の内容が検討され、採択された(別紙2)。今後、各国が自国の優先取組事項の特定を行うとともに、生物多様性条約事務局がエコシステム・アプローチ、他機関との協力、森林法規の実行と関連する貿易等の問題について、ケーススタディの収集やワークショップの開催等を行うこととされた。

○外来種
 生物多様性に世界的規模で悪影響を与えることが懸念されている外来種問題への対策として、第5回締約国会議において採択された「外来種の予防、導入、影響緩和のための中間指針原則」に修正を加え、最終的な指針原則が採択された。本指針原則は自発的なガイドラインであることが確認されるとともに、「外来種の侵入の予防」、「初期段階の発見と予防」、「定着した外来種の駆除・管理」の3つの段階に応じて優先順位をおくべき対策として、15の原則が本指針原則の中に規定された。

○生物多様性条約戦略計画
 条約の目的を更に推進するために必要な目標、優先すべき活動等を定めた、2010年までを計画年次とする生物多様性条約戦略計画が採択された。「現在の生物多様性の損失速度を2010年までに大きく低減させる」ことが本戦略計画全体の目的とされたほか、[1]生物多様性条約が担うべき主導的役割、[2]各締約国の能力開発、[3]各締約国における国家戦略の策定・実施及び関連セクターへの統合、[4]生物多様性の重要性に関する普及・啓発の推進を内容とする4つの戦略目標が規定された。

○遺伝資源へのアクセスと利益配分
 条約の第3番目の目的である、遺伝資源の利用から生じる利益の公正で衡平な配分に各締約国が取り組む際の国際的なガイドライン(ボン・ガイドライン)が採択された。

○世界分類学イニシアティブ(GTI:Global Taxonomy Initiative)
 分類学関連の情報及び専門家の不足が生物多様性条約を実施する上で大きな障害となっていることを受けて提唱されたGTIについて、その世界的な推進を図る作業計画が採択された。同計画の推進の一環として、我が国及びオーストラリア等が主体となり、本年9月にマレーシア・クアラルンプールにおいて、アジア太平洋地域におけるGTIの推進方策を協議することを目的としたワークショップを開催する予定であることを表明し、評価された。

○世界植物保全戦略
 地球上の植物種の約3分の2が21世紀中に絶滅する危機にさらされているとの指摘を踏まえて作成された世界的な植物保全のための戦略案につき協議を行った結果、2010年までに、[1]植物多様性の現状把握(データベース化)、[2]植物多様性の保全、[3]植物多様性の持続可能な利用、[4]植物多様性に関する普及・啓発の促進、[5]植物多様性の保全に必要な能力開発を進めるための16の具体的目標を定めた、世界植物保全戦略が採択された。

○特定、監視、指標及び評価
 各締約国が、生物多様性の観点から環境影響評価や戦略的環境アセスメントを行う際の指針を与えるガイドライン案が採択された。

※なお、次回の第7回締約国会議は2004年にマレーシア・クアラルンプールにて、開催されることが決まった。山地の生態系、保護地域等が議題となる見込み。

添付資料

連絡先
環境省地球環境局(旧)環境保全対策課
課長  鈴木 克徳(内線:6740)
補佐  田口 秀実(内線:6744)
担当  高木 丈子(内線:6747)

環境省自然環境局自然環境計画課
課長  小野寺 浩(内線:6430)
企画官 渡辺 綱男(内線:6490)
担当  添谷  稔(内線:6482)