報道発表資料

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1997年02月25日

国連持続可能な開発委員会(CSD)森林に関する政府間パネル(IPF)第4回会合の結果について

国連持続可能な開発委員会(CSD)森林に関する政府間パネル(IPF)第4回会合が、2月11日から21日までニューヨークの国連本部にて開催された。
 今次会合はIPFの最終会合であり、過去3回の会合での議論を踏まえて、本パネルの各検討項目について事務局が作成した文書に基づき討議が進められ、最終的にIPFからCSDに提出されるレポートが採択された。本レポートでは、{1}世界の森林の減少・劣化原因の究明のための世界的に共通な手法を開発し、及びそのケーススタディを実施することや、現在地域的な取組として行われている森林の保全と持続可能な管理の判断規準・指標の作成・適用の取組について、現在こうした取組に参加していない国に対しても参加を喚起すること等の多数の具体的な「行動の提案」が盛り込まれた。また、{2}IPF後の森林分野の国際的な取組に関して、IPFの成果について今後はレビューを行うべしとしたほか、各国の異なる意見を反映して、今後の国際的に共通した取組のあり方について森林条約の制定を含めて複数の案を提示するものとなった。
 本パネルの成果は本年4月に行われる第5回CSD会合へ提出され、これを基礎にして当該会合及び本年6月に行われる国連環境特別総会において、今後の森林分野に関する国際的な取組のあり方等についての一層ハイレベルでの検討が行われる予定。
  1. 日時等
     
    日 時 2月11日(火)から21日(金)
    場 所 国連本部(米国・ニューヨーク)
    参加国 CSDメンバー国及びメンバー国以外のオブザーバー国を合わせて計60ヶ国程度が参加。また関連国際機関、NGO等から多数が参加。
    我が国からは、国連代表部柴田参事官を代表に、外務省、環境庁及び林野庁が出席。
     
  2. 経緯
     95年4月に開催された第3回国連持続可能な開発委員会(CSD)会合は、92年の地球サミットで合意されたアジェンダ21のうち第11章「森林の管理、保全及び持続可能な開発」についてのレビューを主要検討課題の一つとしていた。当該会合では、森林に関する様々な既存の取組及び今後必要な取組についての包括的な検討を行う必要性についてのコンセンサスが得られたことから、第5回CSD会合(1997年)へのレポートの提出を目的として、CSDの下に森林分野の広範な課題の検討を行うための、全ての関係者が参加しうる政府間のパネル(IPF)を設置することが決定された。設置されたIPFは過去3回の会合を行い、本パネルに検討が求められていた12の項目について検討を行ってきた。
     今回会合はIPFの最終会合であり、CSDに提出するレポートの作成に向け各検討項目について活発な議論が行われた。最終日にはこれらの議論を反映したIPFレポートの採択がなされ、具体的な取るべき行動の提案がまとめられたが、特に検討項目V(国際機関、多国間機関及び森林原則の更なる実施に向けた合意形成)では、行動の提案の一部で最終合意にいたらなかったものがあり、これらの提案については対立する文案を併記する形で決着が図られた。
     
  3. 今時会合での議論の概要
    (1)今次会合の検討の経過
     今次会合は、実質会期は8日間であったが、まず最初の2日間には、今回会合で実質検討等を行うこととなっていた検討項目V(国際機関、多国間機関及び森林原則の更なる実施に向けた合意形成)についての各国からの意見提出が行われた。その後は、各検討項目について、本パネルの過去の会合での議論に基づいて事務局が事前に作成した文書(共同議長テキスト)及び検討項目Vについて各国が提出した意見に基づき事務局が作成した文書を基に、IPFのレポート作成に向けて、内容についての活発な議論が行われた。
     最終日には、議論の結果を受けて作成されたIPFの報告書が採択された。報告書は各検討項目について、IPFでの検討の概要(結論)と、「行動の提案」の2部により構成されている。各項目の「行動の提案」では、各国、国際機関等に対し、森林の保全と持続可能な管理の達成に向けて実施すべき行動が提示された。なお、一部の検討項目では、行動の提案の内容についての完全な合意が得られなかったものがあり、これらについては対立する複数の意見を併記する形で決着が図られた。
     採択されたIPFの報告書は、インターネット等により配布される予定。

    (2)議論の主な焦点
     今次会合では、IPFの後の森林問題に対する国際的な取組のあり方についての検討が主要な課題となった。
     本件については、各国が
    森林問題への総合的かつ包括的な対処のため、森林に関する法的拘束力のある国際的取決め(森林条約)の作成に向けての交渉に早急に入るべき(EU、カナダ、コスタリカ等)
    森林条約については、現状ではその目的、内容等が明確になっておらず、その作成に向 けた交渉を開始するのは時期尚早であるものの、最終的に条約交渉にはいることを念頭に置きつつ、IPFの成果のレビューと、条約の内容等をも含めて検討を続けるための国際フォーラムを設置して取組を続けるべき(日本、マレーシア、ブラジル等)
    森林条約が森林の持続可能な管理の達成のために有効であるかどうかについては疑問があり、現状ではIPFの成果のレビューと、未解決の問題についての検討を続けるための国際フォーラムを設置して取組を続けるべき(米国、オーストラリア等)
    との3つの意見に分かれ、意見の統一に向けての議論が行われたものの各国の主張が強固であったために合意形成にいたらず、これらの意見を併記する形で決着が図られた。
     
  4. 今後の予定
     IPFの報告書は本年4月の第5回国連持続可能な開発委員会(CSD)会合に提出されることとなっており、当該会合及び第5回CSD会合を受けて行われる本年6月の国連環境特別総会の場において、森林問題に関する今後の国際的な取組のあり方についてのハイレベルでの議論が行われる予定である。
     
  5. その他
    IPFの最大の成果としては、森林問題に対する総括的な議論の場が提供されたことにより、各国、関係国際機関、NGO等の間での相互対話が大きく進展し、これまでの意見・状況等の違いによる関係者間の相互不信感が払拭されるとともに、今後の国際的に協調した取組に向けての具体的な方向性が明確になったことが挙げられる。具体的には、論争が絶えない熱帯林などの減少・劣化原因につき、その究明のための共通手法の開発とケーススタディの実施が合意されたこと、「森林の保全と持続可能な管理の判断規準・指標」と「林産物の認証・ラベリング」との関連性や、「世界共通の判断規準・指標」の作成の是非などについて考え方の整理がなされたことなどがある。
    森林に関する法的拘束力のある国際的取決め(森林条約)についての各国の対応姿勢については、もはや旧来の先進国対途上国という対立の図式ではなく、各国の様々な情勢に応じて意見の相違が生じていることが明らかとなった。現状では森林条約作成に向けた国際的なコンセンサス形成にまでは至らなかったが、途上国においても積極的な姿勢を取る国が増えていることから、いずれ条約作成に至ることをにらみつつ、個別の課題についての対話を継続していくことになるものと思われる。一方で、現状では条約の目的・内容についての明確なビジョンがないことから、NGOの間には、現時点では条約交渉に直ちに入ることについては疑問とする意見が多く見られた。



連絡先
環境庁企画調整局地球環境部環境保全対策課
課長 :小林 光  (6740)
 補佐 :島田 幸司 (6737)
 担当 :常冨 豊  (6739)