報道発表資料

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2002年02月07日
  • 保健対策

平成12年度化学物質環境汚染実態調査結果について

環境省は、1月28日開催の中央環境審議会環境保健部会化学物質評価専門委員会(鈴木継美委員長、東京大学名誉教授)での審議を経て、化学物質環境汚染実態調査をとりまとめた。調査は、化学物質環境安全性総点検調査、指定化学物質等検討調査、有機スズ化合物に関する環境調査及び非意図的生成化学物質汚染実態追跡調査からなり、調査結果の主な内容は以下のとおりである。
 なお、調査結果の詳細については、平成13年度版「化学物質と環境」(通称「黒本」)として公表することとしている。
1.平成12年度化学物質環境安全性総点検調査の結果
 
   化学物質による環境汚染の未然防止と汚染の早期発見及び適切な化学物質環境安全対策の立案に資するため、化学物質の環境残留性等の安全性について総点検を行ったものである。
 
(1)  化学物質環境調査
   水系・大気系の一般環境において、平成12年度は合計27物質(うち新規12物質)について環境残留性の調査を実施したところ、結果は次のとおりであった。なお、同年度を含むこれまでの調査の累計では、794物質について調査が行われ、そのうち333物質が一般環境から検出されたこととなる。
 
[1]  水系調査
   水系環境中に残留していると予測されるジオクチルスズ化合物等14物質(群)について、それぞれ残留が予測される媒体(水質・底質・魚類)を選び、全国56地点で調査を実施した。
 その結果、4物質(群)が検出された。このうちヘキサブロモベンゼン(大気系調査と併せて評価)及びフタル酸ブチルベンジルについては、今後も環境調査等を行う必要がある。また、ジオクチルスズ化合物については、一定期間をおいて環境調査等を行う必要がある。
[2]  大気系調査
   大気系環境中に残留していると予測される1,4-ジオキサン等14物質(群)について、全国22地点で調査を実施した。
 その結果、14物質(群)すべてが検出された。このうち有機合成反応溶剤等の各種溶剤に広く使用されている1,4-ジオキサンについては、本調査における環境大気中の検出状況、これまでの環境水中の検出状況及びスクリーニング的に実施した文献調査の毒性情報により、発生源周辺を含めた詳細な環境調査を行い、あわせてリスク評価を行う必要がある。
 また、α-メチルスチレン、2-エトキシエタノール等11物質については、今後、環境調査を行い、その推移を監視する必要がある。
 
[注 1,4-ジオキサンについては、環境リスク初期評価を実施する化学物質の候補として優先的に扱うこととしている。]
 
(2) 底質モニタリング(底質の経年監視)
 
[1]  環境中に残留する物質の底質中の濃度を経年監視する調査であり、平成12年度は化学物質審査規制法第一種特定化学物質を中心に、p,p'-DDT等20物質について全国17地点で調査を実施した。
[2]  その結果、底質からは20物質すべてが検出された。
 
(3) 生物モニタリング(指標生物の経年監視)
 
[1]  生物を対象に、環境中に残留する物質の濃度を経年監視する調査であり、平成12年度は第一種特定化学物質を中心とする18物質について全国20地点の魚類8種、貝類2種、鳥類2種について調査を実施した。
[2]  その結果、魚類からはPCB、p,p'-DDE等18物質すべて、貝類からはtrans-クロルデン、p,p'-DDE等11物質、鳥類からはβ-HCH、p,p'-DDE等8物質が検出された。これらの物質を中心に今後とも監視を継続することとする。
 
 
2.平成12年度指定化学物質等検討調査結果
 
 化学物質審査規制法の指定化学物質又は第二種特定化学物質について、環境中での残留性及び人への暴露状況を調査したものである。
(1) 環境残留性調査
 クロロホルム等9物質について、全国の水質・底質34地点、大気31地点で調査を行ったところ、9物質すべてが検出された。
 
(2) 暴露経路調査(日常生活における媒体(室内空気、食事等)別の化学物質人体暴露量に関する調査))
 室内空気について、全国8地区各3世帯でクロロホルム等6物質の調査を行ったところ、全6物質が8地区すべてで検出され、食事について、全国8地区各3世帯でクロロホルムの調査を行ったところ、8地区すべてで検出された。
 
(3) 環境残留性調査及び暴露経路調査の結果からの考察
   クロロホルム、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン、1,2-ジクロロエタン、1,2-ジクロロプロパン及び1,4-ジオキサンは、環境中に広範囲に残留している。これらの物質については、環境汚染の状況を監視するため、今後とも引き続き調査を実施していくことが必要である。
 
 
3.平成12年度有機スズ化合物に関する環境調査結果
 
 トリブチルスズ化合物及びトリフェニルスズ化合物について、「生物モニタリング」において生物(魚類、貝類、鳥類)を、「指定化学物質等検討調査」において水質及び底質を対象として実施した調査結果をもとに評価したものである。
 
(1) 調査結果
 トリブチルスズ化合物の汚染レベルは、近年では水質については改善、生物については横ばいないし改善、底質については概ね横ばいの傾向にある。
 トリフェニルスズ化合物の汚染レベルは、近年では水質については改善、底質については横ばいないし改善、生物については横ばいの傾向にある。
 
(2) 評価
 両物質については、現在、我が国での生産、開放系用途の使用はほとんどないことから、汚染状況は更に改善されていくものと期待されるが、未規制国等の存在に伴う汚染も考えられることから、引き続き、環境汚染状況を監視していく必要がある。また、内分泌かく乱作用を含め毒性関連知見の収集に努めることも必要である。
 
 
4.平成12年度非意図的生成化学物質汚染実態追跡調査結果
 
 PCB類及び臭素化ダイオキシン類(ポリ臭化ジベンゾ-p-ジオキシン:5種類、ポリ臭化ジベンゾフラン:4種類)について、環境中(PCB類は水質、底質、生物及び大気、臭素化ダイオキシン類は底質)の存在状況の調査を行ったものである。
 
(1) PCB類の評価
 PCBは、昭和47年までに製造、輸入及び開放系用途の使用が中止されたが、依然として広範な地点の環境中に存在しており、平成12年度調査結果でも、全地点の全媒体において検出された。
 PCBについては、全地球的な汚染監視の観点からも、モニタリングを継続しその消長を追跡する必要がある。また、PCBの環境中の組成等を調査することにより、非意図的生成割合、環境中挙動などの汚染機構の解明に努める必要がある。
 
(2) 臭素化ダイオキシン類の評価
 12年度調査により臭素化ダイオキシン類が一般環境中の底質からごく微量ながら36地点中5地点で検出されたが、塩素化ダイオキシン類と比較して存在量は少ない。臭素化ダイオキシン類に関する他の関連情報が少ないことから、毒性や暴露実態に関する知見を収集、解析するとともに、測定感度の一層の向上に努めつつ、存在状況の把握を進める必要がある。
[注 臭素化ダイオキシン類に関しては、ダイオキシン類対策特別措置法を踏まえ新たな調査研究事業が開始されていることから、汚染実態調査についても今後、同事業により継続することとしている。]
 
[注:]は、環境省としての今後の取り組み方針である。
連絡先
環境省総合環境政策局環境保健部環境安全課課     長:安達 一彦
保健専門官:中嶋 徳弥(内線6355)
 調 査 係 長:平木 利一(内線6355)