報道発表資料

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1997年02月14日

「統合評価モデルに関するIPCCアジア太平洋ワークショップ」の開催について

日本政府は、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)及び国際連合大学と共に、平成9年3月10日(月)~12日(水)の3日間、国連大学(東京・青山)において「統合評価モデルに関するIPCCアジア太平洋ワークショップ」を海外より約50か国、約100名の専門家及び政府関係者の参加を得て開催する。
 ワークショップでは、温暖化対策を推進するため、二酸化炭素の排出から、生態系や経済社会等への影響、排出削減目標、対策の効果までを一貫して評価することを可能にする統合評価モデルについて意見交換や議論が行われる。その結果は二酸化炭素の削減目標に科学的な根拠を与えるものであり、「気候変動に関する国際連合枠組条約」の究極の目標である温室効果ガスの大気中濃度の安定化水準やそこに至る排出量の推移の検討に資するほか、本年12月に予定されている地球温暖化防止京都会議(COP3)や同会議で合意予定の法的文書の交渉にも寄与することが期待される。
 本日より一般参加者の申し込みの受付を開始する。

1.会議の名称: 統合評価モデルに関するIPCCアジア太平洋ワークショップ

2.会議の背景:
 IPCC(気候変動に関する政府間パネル)は、各国政府を代表する科学者、社会・経済学者等により構成され、温暖化に関連する学術的な知見を取りまとめ「気候変動に関する国際連合枠組条約」等の地球温暖化の防止対策に大きく貢献している。平成7年12月には、第2次評価報告書を作成し、様々な根拠を総合すると人間活動の影響による地球温暖化が既に起こりつつあることが示唆されること等を指摘している。
 我が国は、このようなIPCCの活動を重視し、報告書の作成にあったて専門家を派遣する等の貢献を続けており、今般、我が国での地球温暖化防止京都会議の開催を前に「統合評価モデルに関するIPCCアジア太平洋ワークショップ」を我が国に招致し、IPCC、国際連合大学及び日本国政府の主催により開催することとした。
 IPCCがこのような統合評価モデルに関する国際ワークショップを開催することは初めてのことである。

3.会議の趣旨
 本ワークショップでは、温暖化に係わる様々な知見を統合し、二酸化炭素の排出から、生態系や経済社会等への影響、温室効果ガスの排出削減目標、対策の効果までを一貫して予測・評価することを可能とする統合評価モデルに関する学術的な議論や意見交換が行われる。特に、現在急激な人口増加と経済発展を続けているアジア太平洋地域に焦点をあて、同地域における21世紀の二酸化炭素の排出量、社会経済状況、対策の可能性等についての将来予測及びその方法について討議される。
 このため、本ワークショップには、統合評価モデルの作成を行っている世界の主要な研究者のほとんどが参加し、この分野における最新動向についての情報が交換されるほか、アジア太平洋地域の国々からも多くの研究者が参加し、アジアの途上国への統合評価モデルの適用可能性等についても議論される予定である。
 その検討結果は、二酸化炭素の削減目標に科学的な根拠を与えるものであり、「気候変動に関する国際連合枠組条約」の究極の目標である温暖化ガスの大気中濃度の安定化水準やそこに至る排出量の推移の検討に資するほか、本年12月に予定されている地球温暖化防止京都会議や同会議で合意予定の法的文書の交渉にも寄与することが期待される。
 環境庁としては、このような国際ワークショップを開催することにより、地球温暖化の防止対策の基礎となる科学的・社会経済的な情報を集約し、地球温暖化防止京都会議の成功に資することとしている。

4.日  時:平成9年3月10日(月)9時より12日(水)17時まで

5:開催場所:国際連合大学本部ビル3階国際会議場
       (東京都渋谷区神宮前5-53-70)

6.主  催:気候変動に関する政府間パネル(IPCC)、日本政府、国際連合大学

7.内  容:
  3月10日(月)
    1)開会/概要説明
    2)気候変動に関するコンピューターモデルの現状
        統合評価モデルの概観
        /社会経済モデル/気候モデル/生態系及び気候変動影響モデル
    3)統合評価モデル研究の最新動向
 統合評価モデルの最新の研究成果の概観
        /統合評価モデルと開発途上国との間のギャップ
        /開発途上国における統合評価モデルに対する政策ニーズ
   4)開発途上国の現状の社会経済構造をいかに適切に統合評価モデルの中に反映させるか
 開発途上国の経済構造/中国の構造変化とエネルギーシステム
  3月11日(火)
   1)先進国と開発途上国に同様の政策手段を適用することは可能か
 開発途上国のための政策手段/開発途上国における政策統合
   2)統合評価モデルに地域の特性は十分反映されているか
 開発途上国の価値システムの反映/開発途上国の固有文化の反映
   3)統合評価モデルは開発途上国に対する気候変動の影響をどの程度現実的に予測しているか
 市場を通じた気候変動の影響/開発途上国への気候変動の影響
        /アジア太平洋地域への気候変動の影響
  3月12日(水)
   1)統合評価モデルの研究成果は開発途上国と先進国にどのように適用できるか
 政策対応のタイミングとコストの分担
        /協同的意思決定と南北間の公平性/安全排出コリドー
        /気候変動における技術の役割/開発途上国における技術の変化
   2)アジア太平洋地域の将来の共同研究を推進するために統合評価モデルをど
    のように用いることができるか
 アジア太平洋地域における研究ネットワーク
        /アジア太平洋地域のための米国のネットワーク
        /アジア太平洋地域のための欧州のネットワーク
   3)結果とりまとめ

8.主な参加者(予定):

   バート・ボリン    IPCC議長(スウェーデン)
   ロバート・ワトソン  IPCC次期議長(米国)
   ホーセン・リー    IPCC第3作業部会共同議長(韓国)
   ジェームス・ブルース IPCC第3作業部会共同議長(カナダ)
   天野明弘 関西学院大学総合政策学部長
   茅 陽一 慶応義塾大学大学院政策メディア研究科教授

9.参加対象者及び参加費:
  ・ワークショップは公開で行われます。
   英語・日本語の同時通訳を予定しています。
  ・参加無料
ただし、会場警備の都合上、必ず事前の登録が必要です(プレス関係者を含む)。申し込みなき場合は入場できませんのでご注意願います。また、人数に限りがありますので定員に達した場合お断りする場合があります。平成9年3月3日(月)<必着>までに参加申込書(別添)に必要事項を記入の上、郵便またはファクスで申し込み願います。

  (参加申込先)国立環境研究所 地球環境研究センタ-
         IPCCワークショップ事務局
         〒305 茨城県つくば市小野川 16-2
              FAX:0298-58-2645
              E-mail:ipccws@nies.go.jp

<参考> 統合評価モデルについて

○ 地球温暖化問題の解決のためには、
・将来の経済状況やエネルギー消費量はどう変化するか、
・それにより二酸化炭素排出量はどの程度になるか、
・二酸化炭素排出量の増加により気温はどの程度上昇するか、
・気温の上昇は生態系、農業生産、経済活動にどの程度の影響を与えるか、
・影響を防止するための対策による効果はどの程度か、
といった要因を総合的に予測、評価しなければならない。

○ そのためには上記を統合して扱うコンピュータ・シミュレーションが有効な手段であるとの考え方が近年広がりつつある。こうした統合モデル作成を行う研究は、統合評価(Integrated Assessment)と呼ばれる、自然科学から人文社会科学までの広範な領域を含む研究領域において、学際的な研究者グループにより実施されている。

○ これまで世界で20以上のモデルが開発され、地球温暖化問題を中心にして政策分析等に用いられ、各担当研究者間でも活発な議論が行われているが、これらのモデルに共通する特徴は、科学的な知見を政策立案に有効に活用するため、科学と政策の相互関係を緊密にすることを目的としている点にある。

○ 「気候変動に関する国際連合枠組条約」が目標とする、「気候系に対して危険な人為的影響を及ぼさない大気中の温室効果ガス濃度」についての判断等に利用することが既に進められている。

○ IPCCでは、今回のワークショップでの検討内容を踏まえて、統合評価モデルの研究成果を2000年に完成予定の第3次評価報告書に初めて含める予定である。1995年に公表されたIPCC第2次評価報告書の作成段階から統合評価モデルの重要性が指摘されていたが、検討が不十分でありまだ共通認識が得られていないとして同モデルを利用した計算結果は報告書に含まれていない。

連絡先
環境庁企画調整局地球環境部環境保全対策課研究調査室
なとり
 室 長: 名執 芳博 (内線6743)
       うにすが
 補 佐: 宇仁菅伸介 (内線6746)
       かわまた
 担 当: 川真田正宏 (内線6747)

環境庁国立環境研究所地球環境研究グループ
統括研究官 西岡 秀三 (0298-50-2331) 
 地球環境研究センタ-
 担 当:    福渡  潔 (0298-50-2347)