報道発表資料

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2001年10月11日
  • 自然環境

生物多様性保全のための国土区分ごとの重要地域情報(再整理)について

環境省では、日本の多様な生態系を保全するため、生物学的特性から国土を10地域に区分した国土区分ごとに、注目すべき生態系(区域ごとの生物学的特性を示す生態系)として、396地域のリスト(重要地域情報)を整理したので公表する。このリストは、陸域の自然植生を主な対象として検討をすすめたものであり、北海道東部のエゾマツ・トドマツ林や本州北部のブナ林、本州中部太平洋側のスダジイ林など、各区分の生物学的な特性を示す重要な植生がまとまった面積で分布している地域があげられている。
 また、併せて標高や地形などの環境要因によって成立する注目すべき生態系についても1,195地域のリストについて整理した。
 これらの情報は、現在進めている生物多様性国家戦略の改定作業の参考とするほか、国土の保護地域施策の総合的な検討等の様々な取組に活用していくとともに、今後もこれらの資料の継続的な情報収集と見直しを進めていくこととしている。
 
1. 重要地域情報の整理の経緯
 
   生物多様性国家戦略(平成7年10月地球環境保全に関する関係閣僚会議決定)では、生物多様性の保全と持続可能な利用に係わる政府の施策を体系的にとりまとめ、その目標と取組の方向を示している。 この中では、21世紀半ばまでに策定すべき長期的目標の一つとして、「日本全体として及び代表的な生物地理区分ごとに多様な生態系及び動植物が保全されていること」が掲げられている。
 これを受けて、環境庁(当時)では、国土の地域区分を行い、さらにその区分ごとに国土の生物多様性保全上重要な生態系を明らかにするための調査検討を開始し、平成9年12月には、中間とりまとめを行った。中間とりまとめでは、[1]日本列島の地史的成立経緯、[2]生態系の基盤である植生に強く影響する気候要素といった特性に着目して「生物多様性保全のための国土区分(試案)」として、国土を10の地域に区分した。(次頁図1)さらに、これらの区分ごとに、区域の生物学的特性を示す植生等、注目すべき生態系のタイプを定め、全国の研究者、都道府県に対するアンケート調査等による抽出・整理を行い、「重要地域情報(試案)」として公表したものである。
 今般、このリストについて、さらに基準の具体化等による追加・統合等の精査を進め、整理を行ったものであり、これらの情報は、各区域の特性を踏まえた生態系レベルでの生物多様性保全の基盤となる情報として整理されたものである。 
 


  図1 生物多様性保全のための国土区分(試案)

 

2. 重要地域情報の再整理結果
 
   今回の再整理の結果、10地域の国土区分ごとに、区域の生物学的特性を示す生態系として計396地域が整理された。(表1)
 これらは、国土区分の10地域それぞれに典型的に見られる自然植生がまとまって残されている地域であり、各地域の代表的な動植物等を将来にわたって保全していくために中心的な役割を果たす等、日本の多様な生態系を国土全体にわたって保全していく上で注目すべき地域と考えられる。具体的には、北海道の針葉樹林(エゾマツ・トドマツ林等)、東北地方等の夏緑樹林(ブナ林、ミズナラ林)、西日本や中部太平洋側の照葉樹林(スダジイ林、カシ林等)などが把握された。
 なお、今回それらの地域の概略的な範囲等の把握も行っている。
 【区域の生物学的特性を示す生態系:396地域】
 
 [選定の要件]
 [1] 区域の特性を示す気候条件によりある程度のまとまりを持って成立している植物群集が見られる地域。
[2] 生物学的特性を示す動物相が存続できるようなまとまりを有する地域。

 
表1 区域ごとの生物学的特性を示す生態系 再整理結果一覧

生物群集タイプ 区域番号
[1] [2] [3] [4] [5] [6] [7] [8] [9] [10]
北方針葉樹林生物群集 26                   26
夏緑樹林生物群集     20                 20
北方針広混交林生物群集   5                 5
夏緑樹林(太平洋側型)生物群集     53               53
夏緑樹林(日本海側型)生物群集       98 1           99
照葉樹林生物群集           17 61 20 79     177
亜熱帯林生物群集                   13   13
亜熱帯林(海洋島型)生物群集                   3 3
総   計 26 25 53 98 18 61 20 79 13 3 396
_  なお、標高や地形などの区域内の環境要因の違いにより特徴づけられる注目すべき生態系についても、再整理を行い、全国で1,195件の地域が整理された。具体的には、高山植生、山地植生(西日本のブナ林等)、海浜植生、マングローブ林等、全国各地から多様な生態系が把握された。

 

 【区域内の環境要因の違いにより特徴づけられる重要な生態系:1,195地域】
 

 [選定の要件]
 以下の例に示す環境要因によりある程度のまとまりを持って成立している植物群集や動物群集が見られる地域
 ア) 垂直、気候条件
イ) 地形条件(特異な地形等)
ウ) 水条件(湖沼、湿原、河川等)
エ) 地質、土壌条件(母岩の特性、土壌の物理化学的特性、厚さ等)
オ) 複合条件(複数の環境要因の複合)

 

  ※ これらの重要地域情報については、今後も引き続き、地方自治体や全国の研究者の協力を得ながら情報収集・見直しなどの作業を進めることとしている。

添付資料

連絡先
環境省自然環境局自然環境計画課
課   長:小野寺 浩(6430)
 課長補佐:堀  上 勝(6428)
 担当係長:長  田 啓(6434)
 

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