報道発表資料

この記事を印刷
2001年09月27日
  • 総合政策

廃棄物分野における戦略的環境アセスメントの考え方の概要

(個別分野における戦略的環境アセスメントに関する研究会中間報告書概要)

 戦略的環境アセスメント(SEA)について、国や地方公共団体による具体的な実例の積み重ねの参考となるよう、個別の計画分野について計画類型に即して手続及び技術の両面からあり方を検討するため、「個別分野における戦略的環境アセスメントに関する研究会」(座長:井村秀文名古屋大学大学院教授)を設け、検討してきた。
 まず、廃棄物分野を取り上げて、SEAの導入可能性や手続や技術的手法等について検討してきたが、この度、その検討結果をとりまとめた報告書を公表する。
 本報告書では、廃棄物分野におけるSEAの考え方を整理し、具体的に、
 [1]都道府県の廃棄物処理計画
 [2]市町村の一般廃棄物処理計画
 [3]市町村の個別の一般廃棄物処理施設整備計画の構想段階
について検討し、意欲のある地方公共団体が先進的事例を実施する際の参考となるよう、複数案の設定、評価項目の選定、調査予測、比較評価などのSEAの進め方について例を示した。
1.背景・目的

<背景・目的>

 戦略的環境アセスメント(SEA)については、国内における事例が少なく、技術手法等が発展段階にあることから、計画等の策定主体の参考となるよう、具体的な計画分野に応じて、昨年8月の環境省戦略的環境アセスメント総合研究会報告書で示された基本的考え方を当てはめ、計画等の決定手続に即して環境面から経るべき手続や、評価のための技術手法、参考となるデータ等を提示することが必要である。

 このため、環境省では、個別分野における戦略的環境アセスメントのあり方について基礎となる調査を(株)パシフィックコンサルタンツに委託し、学識者からなる「個別分野における戦略的環境アセスメントに関する研究会」(座長:井村秀文名古屋大学大学院教授)を設置し、検討を行ってきた。

<廃棄物分野の検討>

 廃棄物分野は、住民等の関心が高く、一層の環境配慮の客観性、信頼性の向上が求められている分野であり、計画等の策定者にとっても、SEAを通じてその環境保全努力の適切な評価が期待できること、また、政策全般にわたり見直しが行われ、新たな計画策定等が見込まれることから、まず検討分野として取り上げ、検討を行ってきた。

 廃棄物分野の中にも、様々な計画の種類があるが、検討の中では、計画やプログラム段階である廃棄物処理関係の計画等(都道府県廃棄物処理計画、市町村一般廃棄物処理計画、市町村個別一般廃棄物処理施設整備計画の構想段階)について戦略的環境アセスメントの導入可能性を検討した。

2.本報告の概要

 1)廃棄物分野におけるSEA導入可能性とその意義

<廃棄物分野における政策・計画等の体系>

 廃棄物分野については、環境保全上の諸課題が生じており、近年「循環型社会形成推進基本法」を中核に、循環型社会の構築を目指す法体系が整備され、政策分野全体として見直しが行われている。廃棄物分野関係の政策・計画等については、法定計画だけでも、様々な主体による、政策段階から事業実施段階までの多様な政策・計画等が存在する。

<今回検討の対象とする計画等>

 今回検討の対象とする計画等として、計画・プログラム段階に当たる都道府県の廃棄物処理計画、市町村の一般廃棄物処理計画及び個別の一般廃棄物処理施設整備計画の構想段階を取り上げた。

<SEA導入の意義>

 SEAの導入により、廃棄物処理システム全体から生じる環境影響についてトータルに評価し、システム全体の環境負荷の低減が進むことが期待される。また、住民等との情報交流を通じて、環境配慮について客観性の向上が図られ、引いては計画等の信頼性、社会的支持の向上につながることが期待される。



各計画等の策定内容とSEAの導入概念図



 2)廃棄物分野におけるSEAの考え方

<計画等の策定プロセスとSEAの関係>

 計画等の策定という最終的な意思決定は、その策定プロセスの中で、経済性、地域性、技術的可能性などの要素に、適切な環境配慮がなされるようSEAの結果を反映しつつ、総合的に判断されるものである。

<手続きの基本的考え方>

 SEAの実施主体は、廃棄物処理に関する計画等の策定主体である都道府県や市町村である。

 SEAにおいては、スコーピング、調査・予測・評価の実施、評価文書の公開、住民・専門家等や環境影響評価担当行政機関からの意見聴取、複数案の比較検討等が実施される。SEAの手続きを具体的に考えるに当たっては、計画等の策定プロセス自体の手続きと調整を図りつつ、柔軟に対応すればよいと考える。

<スコーピング>

 スコーピングは検討範囲を明確にする上で重要であり、実行可能な範囲をカバーした上で環境保全上重要な複数案を検討することが必要である。

 また、環境基本法で扱われている環境要素の中から、スコーピング手続を通じて計画等の内容や地域特性に応じて論点を絞り込み、メリハリの効いた調査・予測・評価を行うことが必要である。

<環境影響の調査・予測・評価>

 スコーピングにより決定された評価項目及び手法に基づき、環境影響の調査・予測・評価を行う。計画等の諸元や前提条件の不確実性に応じた手法を用いることが重要である。また、複数案の比較検討、システム全体のトータルな視点での評価などが重要である。

 計画等の策定という最終的な意思決定は、その策定プロセスの中で、経済性、地域性、技術的可能性などの要素に、適切な環境配慮がなされるようSEAの結果を反映しつつ、総合的に判断されるものである。

<手続きの基本的考え方>

 SEAの実施主体は、廃棄物処理に関する計画等の策定主体である都道府県や市町村である。

 SEAにおいては、スコーピング、調査・予測・評価の実施、評価文書の公開、住民・専門家等や環境影響評価担当行政機関からの意見聴取、複数案の比較検討等が実施される。SEAの手続きを具体的に考えるに当たっては、計画等の策定プロセス自体の手続きと調整を図りつつ、柔軟に対応すればよいと考える。

<スコーピング>

 スコーピングは検討範囲を明確にする上で重要であり、実行可能な範囲をカバーした上で環境保全上重要な複数案を検討することが必要である。

 また、環境基本法で扱われている環境要素の中から、スコーピング手続を通じて計画等の内容や地域特性に応じて論点を絞り込み、メリハリの効いた調査・予測・評価を行うことが必要である。

<環境影響の調査・予測・評価>

 スコーピングにより決定された評価項目及び手法に基づき、環境影響の調査・予測・評価を行う。計画等の諸元や前提条件の不確実性に応じた手法を用いることが重要である。また、複数案の比較検討、システム全体のトータルな視点での評価などが重要である。



廃棄物分野の計画等の策定とSEAの関係図



 3)廃棄物分野の計画等におけるSEAの進め方の例


 本報告では、上記の計画や構想段階を対象に、SEAの進め方について、複数案を設定し、評価項目や調査予測手法の選定、複数案の比較評価等に関する例を示している。

 これらは、地方公共団体が自主的にSEAの先進的な取組を試みるに際して、参考となる進め方の一例を示すものであり、実際に地方公共団体がSEAを導入するに際しては、それぞれの計画等の特性や地域の特性に柔軟に対応しつつ実施することが適当である。

 また、ここで示した例は、説明のために単純化したモデルであり、実際には、複数案の設定において、全く別の案を設定したり、ここに提示した案を組み合わせたりすることが可能であるし、計画等の性格や前提条件によって、異なる項目や手法による調査・予測・評価も可能である。

 4)今後の課題(第4章)

廃棄物分野におけるSEAの具体的な実績の積み重ねを促進し、事例を蓄積することが必要。
技術手法の開発、データベースの整備が必要。
他の分野でのSEA導入の可能性の検討が必要。基本方針等政策レベルのSEAも課題。

 

進め方の例
例1都道府県廃棄物処理計画
例1-1廃棄物の排出抑制と処理方式の組み合わせからなる複数案を設定した場合・・・8ページ
例1-2一般廃棄物の広域処理のあり方に関する複数案を設定した場合・・・10ページ
例2市町村の一般廃棄物処理計画
一般廃棄物の排出抑制と処理方法の組み合わせからなる複数案を設定した場合・・・12ページ
例3市町村の一般廃棄物処理施設整備計画の構想段階
例3-1一般廃棄物焼却処理施設の処理方式の複数案を設定した場合・・・14ページ
例3-2一般廃棄物最終処分場の立地の複数案を設定した場合・・・16ページ

添付資料

連絡先
環境省総合環境政策局環境影響評価課
課 長:小林 正明(内6230)
課長補佐:小森 繁 (内6234)

Adobe Readerのダウンロード

PDF形式のファイルをご覧いただくためには、Adobe Readerが必要です。Adobe Reader(無償)をダウンロードしてご利用ください。