報道発表資料

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1997年02月06日

第4回東アジア酸性雨モニタリングネットワークに関する専門家会合の結果について

第4回東アジア酸性雨モニタリングネットワークに関する専門家会合は、2月4日から6日までの3日間、広島市の広島国際会議場(平和記念公園内)で開催された。
 今回の会合の目的は、一昨年11月に新潟市で開催された第3回会合において西暦2000年までに東アジア地域に酸性雨モニタリングネットワークを設立することが合意されたことを受け、1)ネットワークの設計(基本的内容)を決定すること、2)ネットワークの設立に向けたスケジュールについて検討すること及び3)酸性雨モニタリングのための技術マニュアル等を採択することであった。

 会議においては、活発な議論が行われ、ネットワークの設計について合意がなされるとともに、ネットワークを正式に設立するための政府間会合を開催することが提案され、参加者は、それぞれの国において、その実現に向けて努力することとされた。
 また、技術マニュアル等に関しては準備された草案について最終的な検討が行われ、採択された。

1. 会議の正式名称
  第4回東アジア酸性雨モニタリングネットワークに関する専門家会合
  The Fourth Expert Meeting on Acid Deposition Monitoring Network in East Asia

2. 主催  環境庁、広島県及び広島市
  共催  (社)海外環境協力センター(OECC)、(財)広島県環境保全公社

3. 会期  1997年2月4日(火)~2月6日(木)

4. 場所  広島国際会議場(広島市中区、平和記念公園内)

5. 参加者
 我が国を含む東アジア地域の10カ国の専門家(行政官及び研究者)62名及び5関係機関の専門家5名の総計67名が本会合に参加した。また、地方公共団体等から約150名がオブザーバーとして参加した。

  (参加者内訳)

国名 人数 機 関 名 人数
中国 4 国連環境計画国際環境技術センター 1
インドネシア 3 世界銀行 1
日本 42 オーストラリア連邦科学産業研究庁 1
韓国 3 ノルウェー大気研究所 1
マレーシア 3 米国国家海洋大気局 1
モンゴル 1 小計 5
フィリピン 2
ロシア 1
タイ 2
ベトナム 1
小計 62


6. 主たる成果
 会合の成果は、議長サマリー(別紙)としてとりまとめられたが、その概要は次のとおりである。

(1) ネットワークの設計
 ネットワークの基本的事項(目的、設立時期、対象地域、データの公開、発生源情報の整備等への取組等)、ネットワークの運営のための組織(事務局、ネットワークセンター等)などを定めた「東アジア酸性雨モニタリングネットワークの設計」が採択された。

(2) ネットワークの設立に向けたスケジュール
 ネットワークの設立に向けて、次のようなスケジュールで準備を進めることが合意され、参加者は、この実施に向けて、それぞれの国において努力を行うこととされた。

 1997年
 1998年
 1998-1999年
 2000年
政府間会合の準備のための作業グループの設置
第1回政府間会合の開催(ネットワークの最終設計)
ネットワークの試行的稼働
第2回政府間会合の開催(試行結果の評価及びネットワークの設計の合意)
ネットワークの正式稼働


(3) 酸性雨モニタリングのための技術マニュアル及びガイドラインの採択

   以下のガイドライン及び技術マニュアルが採択された。

  ア ガイドライン(酸性雨モニタリングのための技術上の指針)
    乾性沈着モニタリングのためのガイドライン

  イ 技術マニュアル(ガイドラインの解説的な手引)
   ・湿性沈着モニタリングのための技術マニュアル
   ・土壌・植生モニタリングのための技術マニュアル
   ・陸水モニタリングのための技術マニュアル

7. その他
  前回会合において日本に設置することが望ましいとされたネットワークセンター(モニタリングデータの集約・解析等酸性雨モニタリングネットワークにおいて中核的業務を担う機関)に関し、環境庁から当該センターを新潟に設置することとし、そのための準備を開始する旨報告され、了承された。


第4回東アジア酸性雨モニタリングネットワークに関する専門家会合議長サマリー(仮訳)
                 1997年2月6日

1. 第4回東アジア酸性雨モニタリングネットワークに関する専門家会合は、環境庁、広島県及び広島市の共催により、1997年2月4日から6日にかけて広島市で開催された。会合には、中国、インドネシア、日本、韓国、マレーシア、モンゴル、フィリピン、ロシア、タイ及びベトナムの10か国から62名の専門家が、国連環境計画国際環境技術センター(UNEP/IETC)、世界銀行、オーストラリア連邦科学産業研究庁(CSIRO)、ノルウェー大気研究所(NILU)及び米国国家海洋大気局(NOAA)の5機関から5名の専門家が出席した。
2. 本会合の議長は加藤三郎氏(日本)が務め、カン氏(中国)及びスタミハルジャ氏(インドネシア)が副議長を務めた。議題6「酸性雨モニタリングのための技術マニュアル及びガイドラインに関する議論」については、秋元肇教授(日本)及びエイヤーズ氏(CSIRO)がそれぞれ議長及び副議長を務めた。
3. 本会合の目的は、東アジア酸性雨モニタリングネットワークの設計(基本的内容)及びその具体化のスケジュールについて検討を行うこと並びに酸性雨モニタリングのための技術マニュアル及びガイドラインを採択することであった。
4. 会議の冒頭、各国における酸性雨モニタリングの強化・拡充のために実施され、又は、進行中の努力について、中国、インドネシア、日本、韓国、モンゴル、ロシア、タイ及びベトナムの専門家から報告が行われた。その中で、東アジア酸性雨モニタリングネットワーク構想への支持が表明された。
5. 東アジア酸性雨モニタリングネットワークに関する議論においては、多くの参加者からネットワークの設立を支持する旨の表明がなされた。また、ネットワークの実現のためにはステップ・バイ・ステップ・アプローチが必要であることが強調された。
6. 積極的な議論の末、専門家会合は別添のとおり「東アジア酸性雨モニタリングネットワークの設計(以下単に「設計」という。)」を採択した。
7. 設計においては、ネットワークの設立に向けて、次のようなスケジュールが提案された。
1997年
1998年
1998-1999年
2000年
政府間会合の準備のための作業グループの設置
第1回政府間会合の開催(ネットワークの最終設計)
ネットワークの試行的稼働
第2回政府間会合の開催(試行結果の評価及びネットワークの設計の合意)
ネットワークの正式稼働
参加者は、この実施に向けて、それぞれの国において努力することとされた。

8.

技術マニュアル及びガイドラインの採択に関しては、暫定コーディネーターの原氏、福山氏、戸塚氏及び小倉氏から、最終草案の内容及び草案起草のための作業グループの活動経過について報告がなされた。熱心な議論の後、草案に一部修正が施された上で、次のマニュアル及びガイドラインが採択された。

(i)  湿性沈着モニタリングのための技術マニュアル
(ii)  乾性沈着モニタリングのためのガイドライン
(iii) 土壌・植生モニタリングのための技術マニュアル
(iv) 陸水影響モニタリングのための技術マニュアル

なお、これらの技術マニュアル及びガイドラインには、地域の特性や研究の進捗状況等を踏まえ、さらに改善すべき点もあることから、これらの点について今後も引き続き検討を行い、マニュアル等の改訂に努めていくことが必要である旨確認された。
9. 会議の参加者は、日本国環境庁からネットワークセンターを東京の北約300kmにある新潟に設置することとし、そのための準備を開始する旨の報告を受けた。また、日本環境庁から、上記7の作業グループの会合を日本で開催することについて、積極的に検討する旨の提案があった。参加者はこれらの報告及び提案を了承した。
10.   会議の参加者は、今回の会議を主催した環境庁、広島県及び広島市に対して感謝の意を表した。




        「東アジア酸性雨モニタリングネットワークの設計」の概要

1 序
 第4回専門家会合は1997年2月4日から6日かけて広島で開催され、東アジア地域の10カ国及び関係5機関から67名の専門家がこれに参加した。第4回専門家会合は、ネットワークの内容、その実現の方途等について検討を行い、その結果を「東アジア酸性雨モニタリングネットワークの設計」として、次のとおりとりまとめた。

2 基本的事項

(1) 目的
 ネットワークは、(i)東アジア地域各国及び機関の間に酸性雨の状況に関して共通の理解を形成すること、及び(ii)酸性雨による健康と環境への悪影響の未然防止・軽減を目的とした種々のレベルにおける政策決定過程に有益な情報を提供することを目的とする。

(2) ネットワークの要素
   ネットワークは6つの次の要素により構成される。

 (i)   参加国による自国内の酸性雨及びその影響のモニタリングの実施
 (ii)  QA/QC(測定データの質の保証及び管理)プログラムの実施
 (iii) モニタリング・データの集約・解析・保管・提供
 (iv)  東アジアの酸性雨の状況に関する定期報告書の作成及び公表
 (v)   上記(i)から(iv)に関する参加国間の国際協力の推進
 (vi)  その他ネットワークの目的のために必要な事項の実施

(3) 設立
 ネットワークは可能な限り早期に、遅くとも2000年までに設立する。

(4) 対象地域
 ネットワークは、北東アジア及び東南アジアを含む東アジア全域に存在する国のうち、ネットワークに参加する意思を表明した国により構成される。

(5) データの公開
 ネットワークの活動によりネットワークセンターに集約された測定データは、一定の条件のもとに、参加国以外の個人、組織又は国に対しても公開される。

(6) 発生源情報の整備等への取組
 酸性雨の状況を正確に把握するため、発生源インベントリー(汚染物質の排出源情報)の整備、酸性関連物質の中長距離輸送に係る数値モデルの開発等に関する国際作業グループを設置し、ネットワークとして今後どのように取組むべきかについて、早急に検討を開始する。

3 ネットワークを運営するための組織

  ネットワークを運営するため次の組織を設置する。

 (1) 管理理事会      ネットワークの運営に関する意志決定を行う。
 (2) 科学諮問委員会    ネットワークの科学的側面について検討する。
 (3) ネットワーク事務局  管理理事会、科学諮問委員会の開催等の事務を行う。
 (4) ネットワークセンター モニタリングデータの集約等の中核的機能を担う。
 (5) 国内センター     各国内の酸性雨モニタリングに関するセンター機能を担う。

  ネットワーク事務局及びネットワークセンターは日本に設置される。

4 ネットワークの活動の要素(略)
 (上記2のネットワークの要素について詳述されている。)

5 財政的事項
  ネットワークの活動に必要な経費については、原則として参加国全体で負担する。

6 ネットワークの実現のための方途
  ネットワークの設立に向けて、次のようなスケジュールで準備を進めるべきである。

 1997年
 1998年
 1998-1999年
 2000年
政府間会合の準備のための作業グループの設置
第1回政府間会合の開催(ネットワークの最終設計)
ネットワークの試行的稼働
第2回政府間会合の開催(試行結果の評価及びネットワークの設計の合意)
ネットワークの正式稼働

7 終わりに(略)

連絡先
環境庁大気保全局大気規制課
課長:飯島(6530)
 担当:岸部(6532)

環境庁水質保全局水質管理課
課長:南川(6630)
 担当:関  (6631)

環境庁水質保全局土壌農薬課
課長:西川(6650)
 担当:川村(6652)