報道発表資料

この記事を印刷
2001年04月09日
  • 保健対策

平成12年度環境モニター・アンケート「化学物質対策に関する意識調査」の結果について

平成11年7月13日に公布された「特定化学物質の環境への排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律」に基づき平成13年4月からPRTR制度が実施されるため、環境省は平成12年度環境モニター・アンケートとして、1,500人を対象に「化学物質対策に関する意識調査」を実施した。その結果、化学物質に対する不安感は7割以上と高いことが明らかとなった。
 PRTRについては、環境中に排出された化学物質がどれくらい人や生態系に悪影響を与えるのかを示してほしいという要望が8割を超えていた。排出量データを入手したい事業所については、自分の居住地と同一市区町村内の事業所を挙げる人が33.4%と最も多かった。
 リスクコミュニケーションについては、必要である又は必要になるかもしれないという人が99%を超えており、その相手としては地方自治体が約8割と最も多かった。
  1. 調査の目的
     本アンケート調査は、化学物質による環境汚染の未然防止に関する国民の関心が急速に高まっているなか、PRTRやリスクコミュニケーションといった、今後の新しい化学物質対策の方向性について、国民の一人としての環境モニターからの意見等を把握するために行ったもので、今後の環境行政施策を進めるに当たっての参考資料とするものである。

  2. 調査対象・調査方法
     環境省が委嘱している全国1,500人の環境モニターを対象とし、総務省各管区行政評価局等を経由して、郵送の形式でアンケート調査を行った。
      回答率 84.0%(1,260人/1,500人)

  3. 調査結果の概要
    (1) 化学物質について
    [1] 身近に存在する化学物質の不安感について
     身近に存在する様々な化学物質に対する不安感についてみると、「工場や廃棄物焼却施設などから排出されている化学物質」と答えた人が83.1%と最も多く、このほか「自動車排ガスに含まれている化学物質」(77.5%)、「農薬に使用されている化学物質」(77.0%)、「家庭用品に含まれている化学物質」(75.4%)などが7割以上の人にあげられている。一方、「不安は感じていない」と答えた人は0.9%となっている。
     なお、「その他」を具体的に回答してもらったところ、「食料品に含まれる化学物質」「住宅の建材等に含まれる化学物質」などがあげられている。

    図1 身近に存在する化学物質の不安感

    [2] これらの化学物質を不安に感じる理由について
     質問(1)[2]で、不安を感じる化学物質等をあげた人に、それらについて不安に感じる理由をたずねたところ、「これらから有害な化学物質が排出されていることが明らかだから」と答えた人が39.3%と最も多く、次いで「これらによる影響が報道されているから」(25.2%)、「これらからどういう化学物質が排出されているかわからないが、有害な化学物質も含まれているかもしれないから」(23.1%)などが25%前後の人にあげられている。また、「これらによる影響を実際に受けているから」と答えた人は9.2%となっている。
     なお、「その他」を具体的に回答してもらったところ、「これから有害な化学物質の排出が明らかになる可能性があるから」「既知の化学物質と未知の化学物質の両方に対する不安」などがあげられている。

    図2 これらの化学物質を不安に感じる理由

    (2) PRTRについて
    [1] PRTRの結果の公表について
     PRTRの結果について、対象化学物質の環境中への排出量などを物質別、都道府県別、業種別等に集計した数値を表にまとめた『報告書』以外に、どのような表現や内容があればよいかたずねたところ、「環境中に排出された化学物質がどれくらい人や生態系に悪影響を与える状況にあるのかをPRTRの結果から示す」と答えた人が81.4%と最も多く、このほか「化学物質の毒性に関する情報や環境中の濃度測定結果などの関連する情報を併せて知ることができるようにする」(62.9%)、「『報告書』の結果の数値の意味や解釈のし方についてわかりやすく説明する」(62.0%)、「地図上に化学物質の排出量の程度をグラフや色分けなどで表し、一目でどこからどれだけ化学物質が排出されているかがわかるようにする」(58.3%)などが6割前後の人にあげられている。
     なお、「その他」を具体的に回答してもらったところ、「排出企業名の公表」「誰にでもわかりやすく情報を提供する」「危険を回避するために講じている方策を知らせる」などがあげられている。

    図3 PRTRの結果の公表

    [2] 排出量データを入手したい事業所について
     排出量データを入手したい事業所についてみると、「自分の居住地と同一市区町村内の事業所」と答えた人が33.4%と最も多く、次いで「自分の居住地の近隣の事業所」(26.0%)となっており、このほか「全国どこでも」と答えた人が18.3%、「自分の居住地と同一都道府県内の事業所」と答えた人が17.0%となっている。

    図4 排出量データを入手したい事業所

    [3] 開示請求する際の手数料額について
     個別の事業所の排出量データの開示請求をする際の手数料について、1事業所あたりの金額と複数事業所を一括して請求する場合の合計金額に分けて、いくらぐらいまでなら入手してもよいと思うか具体的な金額を記入してもらった。

    1事業所あたりの手数料額
     はじめに、1事業所あたりの手数料額についてみると、「500円以下」と答えた人が22.1%と最も多く、このほか「100円以下」(16.0%)、「1,000円以下」(13.5%)、「300円以下」(12.5%)、「200円以下」(12.0%)などが比較的多くみられ、平均は659.6円である。

    図5 開示請求する際の手数料額(1事業所あたり)

    複数事業所の場合の合計手数料額
     複数事業所を一括して請求する場合の合計手数料額についてみると、「1,000円以下」と答えた人が28.6%と最も多く、以下「500円以下」(20.0%)、「5,000円以下」(14.8%)、「2,000円以下」(11.5%)などの順となっており、平均は3,034.4円である。

    図6 開示請求する際の手数料額(複数事業所の場合の合計)

    (3) 化学物質情報の入手、リスクコミュニケーションについて
    [1] 入手したい化学物質情報について
     身の回りで使われている、あるいは環境中に排出されている化学物質について、どのような情報を入手したいと思うかたずねたところ、「人の健康や生態系に対し、どのような有害な影響を与えるかという化学物質の性質」と答えた人が88.1%と最も多く、次いで「身近な環境中にある化学物質による危険性が、実際どれだけあるのか」(79.8%)、「身の回りで化学物質による影響があった場合の対処の仕方」(71.6%)、「どんな化学物質が、身の回りでどこにどれだけ使われているのか」(70.9%)などが続き、このほか「身近な環境中には、どのような化学物質がどれだけ存在しているのか」と答えた人が64.5%、「化学物質に対する規制や対策の状況」と答えた人が54.3%となっている。
     なお、「その他」を具体的に回答してもらったところ、「海外の化学物質の使用や規制の状況」「化学物質による被害の実例」などがあげられている。

    『リスクコミュニケーション』とは、
    化学物質による環境リスク(※)に関する正確な情報を行政、事業者、国民、NGO等の各主体が共有しつつ、相互に意思疎通を図ることを指す。『リスクコミュニケーション』の推進により、環境リスクに関する相互理解が深まり、環境リスクの削減につながっていくことが期待される。
    (※)環境リスク……環境を通じ人体や生活環境に有害な影響を及ぼすおそれのこと。


    図7 入手したい化学物質情報

    [2] リスクコミュニケーションの必要性について
     リスクコミュニケーションを自ら進んで行う必要性を感じるかたずねたところ、「感じる」と答えた人が54.6%と多く、「今のところは感じないが、将来必要となることがあるかもしれない」と答えた人が44.4%となっており、「必要ない」と答えた人は0.9%となっている。

    図8 リスクコミュニケーションの必要性

    [3] リスクコミュニケーションの対象について
     リスクコミュニケーションしたい相手をみると、「地方自治体(都道府県、市区町村)」と答えた人が79.4%と最も多く、次いで「事業所を総括している企業(企業の本社)」(53.8%)、「近隣住民や自治会など」(47.8%)などが5割前後の人にあげられている。このほか、「国(環境庁、通商産業省、厚生省など)」(42.2%)、「近隣の事業所」(40.1%)と答えた人が約4割となっている。
     なお、「その他」を具体的に回答してもらったところ、「学識経験者・専門家」「大学等の専門研究機関」などがあげられている。

    図9 リスクコミュニケーションの対象

    [4] リスクコミュニケーションを行う動機について
     リスクコミュニケーションを行う動機としてどのようなことが考えられるかたずねたところ、「排出・廃棄されている化学物質の内容を知りたい」(73.2%)、「環境リスクがどれくらいなのか知りたい」(72.2%)と答えた人が多く、以下、「行っている化学物質対策の内容について説明を受けたい」(60.2%)、「関係する人たちの環境リスクについての意見を聞きたい」(47.9%)、「化学物質による不安を感じていることを伝えたい」(47.7%)、「化学物質対策を強化するよう要望を伝えたい」(38.5%)などの順に多くなっている。
     なお、「その他」を具体的に回答してもらったところ、「国民が環境リスクに対する意識を高め、生活を変える意識を持つ」「化学物質を減らすための方策を一緒に考えたい」「環境リスクは長い目でみないと結果が見えない怖さを理解してほしい」などがあげられている。

    図10 リスクコミュニケーションを行う動機

添付資料

連絡先
環境省総合環境政策局環境保健部環境安全課
課   長:上田 博三(内線6350)
 課長補佐:森下 哲  (内線6353)
 担   当:相澤 寛史(内線6358)

Adobe Readerのダウンロード

PDF形式のファイルをご覧いただくためには、Adobe Readerが必要です。Adobe Reader(無償)をダウンロードしてご利用ください。