報道発表資料

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1999年11月22日

HFCの破壊処理方法等に関する調査の結果について

オゾン層破壊物質であるCFC等の代替物質として近年使用量が増加しているHFCの排出抑制対策を進めるため、HFCの回収、破壊、再利用についてその課題等の検討を行ってきたが、今般、調査結果が取りまとめられた。調査の中で、HFCの破壊処理について、既存のCFC等の破壊処理技術を用いてHFCが破壊できるかどうかについて検証を行ったが、可能であること等が確認された。
 当庁では、今回の調査結果をもとに、HFCの破壊処理方法を自治体に示すこと等により、HFCの排出抑制対策を一層推進していくこととしている。
1.調査の背景

 HFC(ハイドロフルオロカーボン)は、オゾン層破壊物質であるCFC(クロロフルオロカーボン)等の代替物質として開発され、冷蔵庫、空調機器等の冷媒等として近年使用が急増しているが、強い温室効果をもつことから、97年12月の「地球温暖化防止京都会議(COP3)」で採択された「京都議定書」で削減目標の対象物質とされている。

 このため、今年4月に閣議決定された「地球温暖化対策に関する基本方針」では、代替フロン等3ガス(HFC、PFC、SF6)の排出抑制対策としては、代替物質の開発、回収・再利用・破壊等の対策を推進することとしている。

 これらを受け、当庁では、CFC等の排出抑制対策の経験を踏まえ、HFCの回収、破壊、再利用についてその課題等を検討するとともに、特に、HFCの破壊処理については、既存のCFC等の破壊処理技術を用いてHFCが破壊できるかどうかについて検証実験等を行った。

 調査の実施に当たっては、検討会(座長:浦野紘平横浜国立大学工学部教授)を設けて指導助言を得た。

2.調査結果の概要

 本調査の結果の概要は以下のとおり。

 [1] HFCの回収

ア) CFC等及びHFCの回収の状況
 
 CFC等については、オゾン層保護対策として既に回収が進められており、都道府県・政令指定都市ごとに設置されている「フロン回収等推進協議会」が構築した回収システムと、関係業界団体が機器の種類ごとに構築した回収システムが平行する形で運用されている。回収率については、平成9年度現在では低い水準となっていたが、その後、回収システムの整備が進んでいることから、今後回収率が高まることが期待されている。
 
 HFCについては、まだHFCを使用した機器の廃棄量が少ないことから回収は
進んでいないが、CFC等の回収システムにより家庭用冷蔵庫等からHFC 134a を
回収している例などがみられた。
 

イ) HFCの回収に係る課題
 
 CFC等の回収については、回収作業に時間や人手がかかること、回収装置が高価であること等の課題が指摘されている。
 
 HFCの回収についても、今後、同様の課題が指摘されることになると考えられるが、さらに、回収の現場でCFCとHFCが混在することになるため、回収作業が煩雑になること、異種冷媒が回収容器内に混入する可能性があること、追加的な回収装置の導入に費用がかかること等が問題点として指摘されている。
 
 また、CFC等の回収では、回収システムに参加していない事業者による回収の実態が不明となっており、HFCの回収システムを構築する際には、そのような事業者の参加を得る方策について検討する必要がある。
 
 さらに、回収に係る費用負担についても、CFC等では回収装置の導入等の費用は回収事業者が、回収及び破壊処理の作業に伴うランニングコストは排出者が負担するとの考え方が定着しつつあるため、HFCについても、費用負担のルールを確立し、関係者へ周知を徹底していく必要がある。

 [2] HFCの破壊

ア) HFCの破壊処理技術の検証結果
 
 環境庁大気保全局が策定した「CFC破壊処理ガイドライン」を踏まえ、ロータリーキルン炉、都市ごみ焼却炉、高温水蒸気分解炉及びセメントキルン炉を用いた破壊処理方法について、
 
a. 最終排ガス中の HFC 濃度が 1 ppm 以下であること、または分解率が99.99 % 以上であること、
b. 破壊処理施設からの排ガス等に含まれる有害物質等が、それぞれの施設について法令等で規定されている基準を満たしていること
 
  の2つの判断基準をもとに検証調査を行った。
 
 この結果、今回調査を行った破壊処理方法については、HFCの破壊においても適正なものであると評価することができた。
 
 また、破壊処理に係るコストの評価を行ったところ、弗素の処理に必要なコストが若干高くなるものの、CFC12の破壊処理コストとほぼ同じであった。 

イ) 破壊処理に関する今後の課題
 
 今回の調査の結果、今後の課題として以下のような点が挙げられた。
 
副生成物の発生の抑制
  高温水蒸気分解炉では、添加水蒸気量が多く、水素源となる炭化水素(燃料のプロパン)濃度が低い場合に排ガス中のPFC14の濃度が高くなったため、PFCの副生が少なくなる運転条件(水素源となるプロパンの添加率)を検証しておく必要がある。
 
 処理施設の運転管理指標の確立
 HFCの破壊処理を行うに当たっては、処理施設の運転管理を適正に行う必要があることから、運転管理指標の設定についても検討の必要がある。
 
破壊処理の確認方法の確立
 破壊処理は委託により行われる場合が多く、CFCの場合には処理証明書の発行などにより処理の確認を行っているが、HFCについても、処理が確実に行われるよう確認方法を確立するための検討が必要と考えられる。

[3] HFCの再利用
ア) CFC等及びHFCの再利用の状況
 
 カーエアコンや業務用冷凍空調機器では、機器の点検・整備時に一度回収したCFC等を再利用しているほか、業務用冷凍空調機器では、関係業界団体が設置したプラントで回収したCFC等を再生し、再利用している事例もある。
 
 ただし、CFC等は、再利用先が徐々に少なくなっていること等の理由により、再利用量は多くないと考えられる。
 
 HFCについては、回収量がまだ少ないこと等の理由により、機器の点検・整備時
等一部の場合を除き再利用量は多くないと考えられる。 

イ) HFCの再利用の課題
 
 HFCを冷媒として利用した機器の使用時の漏洩対策が進んできているため、破損した配管の修理等の特殊な場合を除き、補充用のHFCの需要は少なくなっていると考えられる。したがって、回収したHFCの再利用を推進する場合には、新製品への利用を含めた再利用先の確保方策を検討する必要がある。
 
 また、回収した冷媒の品質により、再利用した機器の性能に影響が出ることが考えられるため、再利用しようとする際には、その品質を確認し、場合によっては再生することが必要となる。品質の確認のためには、回収したHFCについて、用途ごとに品質基準等を設定する必要もあると考えられる。
 
 さらに、本調査でのコスト試算によれば、HFCを蒸留再生設備で再生する際のコストは、破壊処理の費用や新品のHFC134aの取引き価格よりかなり高く、現状ではHFCの再生・再利用の経済性は低いと考えられる。このため、再生・再利用を推進する場合には、HFCの再生費用の低減策等、経済性を高める方策について検討する必要がある。

 [4] HFCの代替物質の開発

    HFCの代替物質の開発状況について文献調査等を行ったところ、一部ではHFCを炭化水素、アンモニア等の代替物質等に転換した事例が見られたが、エネルギー効率や安全性の確保等の課題もあることから、全面的な導入には至っていないことがわかった。


3.今後の取組

 当庁では、今回の調査結果をもとにHFCの破壊処理方法を自治体に示すこと等により、HFCの適正な処理を促進し、HFCの回収・破壊を一層推進していくこととしている。

連絡先
環境庁企画調整局地球環境部地球温暖化対策制度化推進室
室 長 :谷津 龍太郎(内線6283)
 補 佐 :藤田 賢二  (内線6286)
 担 当 :有留 茂人  (内線6285)