報道発表資料
環境庁では、死亡事故再発防止のため、同野生生物保護センターでの飼育管理方法について再点検を行う。
1.収容個体について
昨年11月9日、釧路湿原野生生物保護センターで、昨年6月から飼育していたシマフクロウ(雌:平成8年生まれ)が地上で死亡しているのが発見された。また、翌10日には、別のケージで平成6年6月から飼育していたシマフクロウ(雄:平成6年生まれ)が死亡した。
これら2羽については、死亡原因を明らかにするため、日本医学技術専門学校を中心に、病理解剖、細菌、ウィルス等の検査を行った。
なお、現在、釧路湿原野生生物保護センターでは、平成7年6月に収容した雄(平成7年生まれ)1羽を飼育しているが、異常は認められない。
2.死因についての検査結果
雌の死因は直接的には高所からの落下による内臓破裂、雄では電解質異常もしくは急性循環不全と推定された。なお、雌の血中及び雄の腸内から、ともに大量の大腸菌が検出された。同時に検査した餌等からはこの大腸菌は認められず、何らかのストレス等により、腸内の大腸菌が異常に増殖し、大腸菌体内の毒素(エンドトキシン)が放出、あるいは吸収されたことが死因の基礎になった可能性が疑われた。 この大腸菌の増殖をもたらした要因については、今回の検査では特定することができなかったが、ケージ内の一部土壌及び雄の排出物(糞便等)から高濃度の亜鉛が検出されており、採餌の際に餌に付着した亜鉛を含む土壌を摂取したことに起因する急性胃腸炎や、また、2羽が同時期に死亡していることを考慮すると、例えば、急激な天候の悪化(強い冷え込み等)などが引き金になった可能性がある。
なお、今回の検査では、餌からの大腸菌等の原因物質の検出はなく、ウィルス感染も否定された。また、臓器、血液検査では、異常な量の重金属(亜鉛を含む)等の検出もなかった。
3.今後の対応
(1) 飼育ケージの環境改善
今回の検査で、土壌中から高濃度の亜鉛が検出されたことから、ケージ内の土壌の詳細な検査を行い汚染状況を把握するとともに、その結果をもとに、汚染土壌の処理を行う等、亜鉛による汚染に対する必要な対策を専門家の意見を聞きつつ実施する。
(2) 飼育管理方法の再点検
野外放鳥を前提にした大型のフライングケージによるシマフクロウの飼育は他にほとんど例がなく、今までも、釧路市動物園等の多くの専門家と連携を図りながら適切な飼育に努めてきたところであるが、今回の死亡事故を踏まえ、環境庁に設置している検討会の意見を聞きながら、飼育管理全般について再度見直しを行い、死亡事故の再発防止等、安全な飼育管理の一層の徹底を図る。
- 連絡先
- 環境庁自然保護局野生生物課
課長:小林 光 (6460)
担当:安田、長田(6465)