報道発表資料

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1998年05月25日

自然環境保全審議会野生生物部会の答申等について

 自然環境保全審議会野生生物部会が5月25日(月)午後2時から開催され、環境庁は次の4案件を諮問する。

  1. 生息地等保護区等の指定について(絶滅のおそれのある野生動植物の種の 保存に関する法律に基づく諮問)
  2. 保護増殖事業計画の策定について( 同 上 )
  3. 狩猟鳥獣の捕獲の禁止及び制限の廃止及び変更について (鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律に基づく諮問)
  4. 人と野生鳥獣との共存を図るため緊急に講ずべき保護管理方策について (自然環境保全法に基づく諮問)

 なお、1、2及び3の諮問案件については、当日答申がなされる予定である。

1. 生息地等保護区等の指定
 種の保存法に基づき、沖縄県久米島に生息する国内希少野生動植物種であるキクザトサワヘビの生息地保護区等を指定する。
  ※今回の指定により、計6カ所の生息地等保護区が指定されたことになる
2. 保護増殖事業計画の策定
 種の保存法に基づき、沖縄県北部に生息する国内希少野生動植物種であるノグチゲラ について、保護増殖事業計画を策定する。
  ※今回の策定により、計17種の国内希少野生動植物種について保護増殖事業計画が策定されたことになる
3.

狩猟鳥獣の捕獲禁止及び制限を廃止及び変更
 鳥獣保護及狩猟ニ関スル法律に基づき、タヌキ、キツネ、テン(ツシマテンを除く。 )、オスイタチ、アナグマ及びシカの捕獲を禁止及び制限する期間の廃止、シカの捕獲 を禁止及び制限する頭数の変更及びメスジカの捕獲を禁止する区域の変更を行う。

4. 人と野生鳥獣との共存を図るため緊急に講ずべき保護管理方策について
 自然環境保全法に基づき、「人と野生鳥獣との共存を図るため緊急に講ずべき方策」 について諮問を行い、本年内の答申を目途に、野生鳥獣保護管理方策小委員会を設置して、制度のあり方に関する専門的な検討を開始する。

宇江城岳キクザトサワヘビ生息地保護区等の指定案の概要

名  称 宇江城岳キクザトサワヘビ生息地保護区(同管理地区)
所 在 地 沖縄県島尻郡仲里村及び具志川村
面  積
(ha)
  • 生息地等保護区:600ha
  • うち管理地区:255ha
予定地の概要
  • 久米島は、沖縄本島の西方約100kmに位置している。島の北部と南部に山塊があり、保護区予定地概要は、北部の宇江城岳を中心とする地域である。宇江城岳の周辺は、台地が広がっており、スダジイ群落が発達しており、山麓部にはリュウキュウマツやリュウキュウチクなど 代償植生が見られる。
  • 宇江城岳一帯は島の水源地とされており、山腹部には取水用のダムが設置されている。宇江城岳を源流とする白瀬川は島内最長の河川である。
  • 予定地の大部分は村有地であり、水源涵養林として管理されており、周辺には農地も見られる。また、宇江城岳の山頂付近には、航空自久衛隊米島分屯基地が設置されている。
保護に関する指針(概要)
  • キクザトサワヘビは、水環境への依存度が極めて高いことから、渓流、沢等の水質を適切に保つとする指針ともに、集水域の地形及び森林を維持し、水量の安定的な供給を確保することが必要。
  • 水面の埋立、水量の変更、工作物の設置等の各種行為は、生息環境に著しい影響を及ぼすことのないよう配慮する必要がある。

 

【参考】  ※キクザトサワヘビの概要

学   名: オピストトロピス キクザトイ
形   態: 全長55cm。鱗は滑らかで光沢があり、胴後部と尾部の鱗に顕著な粒状をもつ。背面は暗褐色でオレンジ色の小斑点が体側線上に並ぶ。
生息状況等: 本種は、1956年に発見され、これまでに20個体が得られたのみ。沖縄県久米島にのみ分布し、生息地は極めて狭い。同種の別種は14種ほどあり 、中国から東南アジアにかけて分布する。

※既に指定されている生息地等保護区(5ヶ所)

羽田ミヤコタナゴ生息地保護区(栃木県大田原市) 平成6年12月26日指定
北岳キタダケソウ生育地保護区(山梨県中巨摩郡芦安村) 平成6年12月26日指定
山迫ハナシノブ生育地保護区(熊本県阿蘇郡高森町) 平成8年 6月 3日指定
北伯母様ハナシノブ生育地保護区(熊本県阿蘇郡高森町) 平成8年 6月 3日指定
藺牟田池ベッコウトンボ生息地保護区(鹿児島県薩摩郡祁答院町) 平成8年 6月3日指定

 

ノグチゲラ保護増殖事業計画(案)の概要

種 名
策 定 者
目      標
事業の区域
事業の内容(項目)
ノグチゲラ 環境庁長官農林水産大臣 生息状況等の把握・モニタリングを行い、その結果等を踏まえ、本種の生息に必要な環境条件の維持・改善及び生息を圧迫する要因の軽減・除去等を図ることにより、本種が自然状態で安定的に存続できる状態になること。 主として沖縄県北部の本種の分布域
  1. 生息状況等の把握・モニタリング
  2. 生息地における生息環境の維持・改善
  3. 飼育下での繁殖
  4. 生息地における監視
  5. 普及啓発の推進
  6. 効果的な事業推進のための連携の確保
ノグチゲラ  沖縄本島北部のやんばる地域にのみ分布する1属1種の中型のキツツキで全長約30cm 。全体的に黒褐色で、オスは頭頂から後頭まで赤いが、メスは褐色である。
 スダジイで代表される成熟した広葉樹林に生息し、大径木を利用して主に4月頃から巣 を造り、5月下旬から6月初旬に巣立ちをする。産卵数は1~3個である。

 

[参考]

既策定の保護増殖事業計画(括弧内は策定省庁)

  • 平成5年11月策定
    1. アホウドリ(環境庁)
    2. トキ(環境庁)
    3. タンチョウ(環境庁、農林水産省、建設省)
    4. シマフクロウ(環境庁、農林水産省)
  • 平成7年7月策定
    1. ツシマヤマネコ(環境庁、農林水産省)
    2. イリオモテヤマネコ(環境庁、農林水産省)
    3. ミヤコタナゴ(環境庁、文部省、農林水産省、建設省)
    4. キタダケソウ(環境庁)
  • 平成8年6月策定
    1. イヌワシ(環境庁、農林水産省)
    2. アベサンショウウオ(環境庁、建設省)
    3. イタセンパラ(環境庁、文部省、農林水産省、建設省)
    4. ベッコウトンボ(環境庁、文部省、農林水産省)
    5. レブンアツモリソウ(環境庁、農林水産省)
    6. ハナシノブ(環境庁)
  • 平成9年4月策定
    1. ヤンバルテナガコガネ(環境庁、文部省、農林水産省)
    2. ゴイシツバメシジミ(環境庁、文部省、農林水産省)
     


狩猟鳥獣の捕獲の禁止及び制限の廃止及び変更について

1、 タヌキ、キツネ、テン(ツシマテンを除く。)、オスイタチ、アナグマ及びシカの捕獲を禁止及び制限する期間を廃止することについて
{1} 改正内容
 タヌキ、キツネ、テン(ツシマテンを除く。)、オスイタチ、アナグマ及びシカの狩猟期間を、他の狩猟鳥獣と同じ期間にするもの。
 【参考:現行の狩猟期間】
タヌキ等の狩猟期間
他の狩猟鳥獣の狩猟期間
北海道
 11月15日~1月15日(2ヶ月)
北海道以外
  12月1日~1月31日(2ヶ月)
北海道
 10月1日~1月31日(4ヶ月)
北海道以外
 11月15日~2月15日(3ヶ月
                    *猟区等における狩猟期間は一部異なる。
{2} 改正理由
 近年、毛皮の確保を目的とした狩猟需要が少なくなってきており、毛皮獣の保護蕃殖の観点から、当該6種について他の獣類と狩猟期間を異にして捕獲の制限を図る必要性が低くなったため。
2、

シカの捕獲を禁止及び制限する頭数を変更することについて

{1}

改正内容
 狩猟によるシカの1日当たりの捕獲頭数制限を、北海道の区域について2頭に変更するもの。

【参考:シカの捕獲を禁止及び制限する頭数】
 
[ 現 行 ]
[ 改 正 案 ]
頭 数
1頭 1頭(平成12年9月30日まで北海道の区域においては2頭)
{2} 改正理由    
  近年、生息数が著しく増加し、深刻な農林業被害等をもたらしているエゾシカについて、適正な保護管理を図る観点から狩猟による捕獲を推進し、その生息数の計画的なコントロールを図るため。
3、

メスジカの捕獲を禁止する区域を変更することについて

{1}

改正内容
  メスジカの捕獲を禁止する区域以外の区域に、熊本県を追加するもの。

【参考:メスジカの捕獲を禁止する区域以外の区域(平成12年10月31日まで)】
 
[ 現 行 ]
[ 改 正 案 ]
捕獲を禁止する区域以外の区域
北海道、岩手県、栃木県、京都府、兵庫県、長崎県、大分県及び宮崎県 北海道、岩手県、栃木県、京都府、兵庫県、長崎県、熊本県、大分県及び宮崎県
{2} 改正理由
  近年、生息数が著しく増加し、深刻な農林業被害等をもたらしている熊本県のシカについて、適正な保護管理を図る観点から狩猟によるメスジカを含めた捕獲を推進し、その生息数の計画的なコントロールを図るため。

 

「人と野生鳥獣との共存を図るため緊急に構ずべき保護管理方策」の諮問について

1、概要
 自然環境保全法(昭和47年法律第85号)第13条第2項の規定に基づき、人と野生 鳥獣との共存を図るため緊急に講ずべき保護管理方策について環境庁長官から自然環境保 全審議会野生生物部会に対して諮問を行い、本年内の答申を目途に、野生鳥獣保護管理方 策小委員会を設置して、制度のあり方に関する専門的な検討を開始しようとするもの。

2、諮問理由
 野生鳥獣については、近年、その保護に対する国民の要請が高まっている一方で、シカ の増加などの野生鳥獣の生息状況の変化、農林作物の被害や自然環境の悪化等の問題の深 刻化が生じているところである。稠密な国土利用が行われている我が国においては人間活 動と鳥獣の生息域は重複しており、環境基本計画の基本理念である「自然と人間との共生 」を踏まえて人と野生鳥獣との共存を図っていくためには、科学的知見に基づいて保護管 理を進めていくことが求められている。とりわけ特定の鳥獣については、合意形成を図り つつ適正な目標及び手法の設定を行うなどにより計画的に保護管理することができる仕組 みを緊急に整備することが求められている。
 また、地方分権推進法に基づき設置された地方分権推進委員会においては、地方分権を 総合的かつ計画的に推進していくため、我が国に生息する野生鳥獣の保護管理について国 と都道府県が適切に役割分担すべき旨の勧告が平成8年及び平成9年になされており、当 該勧告を踏まえて速やかに所要の対応を図っていくこととされている。
 これらの喫緊の課題について適切に対応するためには、鳥獣の保護管理制度のあり方に ついて所要の検討を行う必要があることから、人と野生鳥獣との共存を図るため緊急に講 ずべき保護管理方策について、自然環境保全審議会に対して諮問するものである。

※参考
    野生鳥獣保護管理方策小委員会の設置について(案)


1 諮問事項
「人と野生鳥獣との共存を図るため緊急に講ずべき保護管理方策について」


2 検討スケジュール
 平成10年 5月  第1回 諮問及び小委員会の設置、趣旨説明
 平成10年 7月  第2回 現状と課題の整理
 平成10年 8月  第3回 現地調査
 平成10年 9月  第4回 講ずべき方策の検討
 平成10年10月  第5回 報告書スケルトンの検討
 平成10年11月  第6回 報告書(案)の検討及び部会報告、答申


3 小委員
 飯村  武   (財)日本鳥類保護連盟監事
 磯部  力   東京都立大学法学部教授
 市田 則孝   (財)日本野鳥の会常務理事
 岡島 成行   読売新聞社解説部次長
 古宮 英明   全国森林組合連合会専務理事
 斉藤  勝   東京都恩賜上野動物園園長
 中井  勉   全国町村会政務調査委員
 永野 幸人   (社)大日本猟友会会長
 藤巻 裕蔵   帯広畜産大学教授
◎渡辺  修   環境事業団理事長
(臨時委員)
 三浦 慎悟   森林総合研究所東北支所保護部長
 管原 敏夫   (社)日本植物防疫協会理事長

連絡先
環境庁自然保護局野生生物課鳥獣保護業務室
課     長  :森 康 二 郎 (6460)
 室     長  :守 口 典 行 (6470)
 案件 1 担当  :井上・柴田 (6463)
 案件 2 担当  :植田・長田 (6464)
 案件 3 担当  :半田・廣瀬 (6472)
 案件 4 担当  :東海林・前島(6471)