報道発表資料

この記事を印刷
1998年06月15日

気候変動枠組条約補助機関(SBSTA及びSBI)の第8回会合の結果について

6月2日から12日まで、ドイツ(ボン)において、気候変動枠組条約の実施を 補助する二つの機関(「科学上及び技術上の助言に関する補助機関(SBSTA 」及び「実施に関する補助機関(SBI)」)の第8回会合が開催された。
 会合では、吸収源の取扱いについての今後の作業スケジュールがまとめられ たほか、排出量取引制度等の国際的仕組みのルール制定等に向けた検討の課題 整理が行われるなど、本年11月の第4回条約締約国会議に備え、京都議定書の 実施準備作業などに一定の成果が得られた。

1. 今回の補助機関会合の概要

  • 126の条約締約国、その他関係国際機関等オブザーバーの参加を得て開催。
  • {1}京都議定書の実施のために必要なルール整備、{2}条約上の既存の義務の履行促進等 の課題について議論。議論が盛んであった点は、「メカニズム」(排出量取引、クリーン 開発メカニズム(CDM)、いわゆる共同実施(JI))、吸収源(シンク)、途上国の参加 の問題等。
  • 以上の点についての交渉は、会議前からの予想通り難航したが、今次会合の結果、メカ ニズムや吸収源についての今後の検討課題整理やスケジュールの明確化、途上国問題の取 扱いのための手がかり等いくつかの点で実質的な進展がみられ、COP4の準備を促進するた めに一定の役割を果たしたと評価できる。

2. 各論点についての検討結果

  • 議定書の実施に向けた各論点についての議論は以下のとおりであり、一定の進展がみら れた。
    (1)

    国際的仕組み(メカニズム)

    • 排出量取引等の議論の促進を期待する日、米、加等に対し、EU諸国は、技術的な課題 や報告、検証、遵守措置の議論を優先課題と位置づけた上、排出量取引により削減し得る 量の上限を設けることを主張。途上国は、むしろ条約上の課題の議論を優先すべきとして 、今次会合におけるこららのメカニズムの検討には慎重。議論の結果、排出量取引、CDM 及びいわゆるJIについては、途上国を含め、各国から今後検討すべき課題が提出された。 途上国が議論を開始する姿勢を見せたことは歓迎すべきことであり、今後、各国は、今後 の検討のワークプログラム等について意見を事務局に提出した上、これを参照しながら、 COP4での議論の準備が行われる。
    • なお、排出量取引については、その概要をまとめたペーパーを加が提出し、我が国も このペーパーの作成、提出に加わり、議論の促進に貢献した。また、EUもこれを受け、排出量取引の在り方についてのペーパーを提出した。
    (2)

    吸収源(シンク)

    • 吸収源については、EU諸国が広範囲な検討を早急に開始することには慎重な姿勢をとり、主に米国と対立したが、米欧の間の妥協が成立し、方法論や科学・技術的に検討が必 要な事項について、IPCCに検討を依頼するとともに、COP4前後にIPCCの専門家の参加を得 てSBSTAのワークショップを開催し、また、各国からコメントを求めて、今後の議論に反 映させることが決められた(詳細は参考のとおり)。
    (3)

    途上国の自主的参加問題

    • COP4ホスト国のアルゼンチンがCOP4の議題に加えることをかねてより主張しているが 、途上国側の反発が強く、今後のビューロー会議に持ち越された。
    (4)

    その他

    • 議定書を実施するために必要なその他の諸課題(排出量推定のための国内制度整備の ガイドライン、議定書実施のために各国が提出する情報に関するガイドライン、非遵守の 措置に関する手続等)の検討の進め方については、第9回補助機関会合(COP4に併せて開催)の議論に持ち越された。
  • 条約の執行に関し、途上国への技術移転、気候変動や気候変動対策が途上国に及ぼす影響の対処方法等についても活発な議論を行ったが、他の項目のまとめと「パッケージ」で あると考える参加各国の対応から、結論はCOP4に持ち越された。
    (1) 技術移転 ・ 途上国が対策を講じる上で必要な技術の開発・移転について話し合われ、特に国際技 術センター構想を含め、COP4決議案の形で議論がなされたが、結論は次回会合に持ち越された。
    (2) 途上国への影響への対処 ・ 気候変動や気候変動対策が途上国に及ぼす影響の対処方法については、途上国が強く その議論の進展を求め、COP4決議案の形で議論したが、産油国を中心にして対策実施の悪影響が強く主張されたことなどのため、取りまとめにはいたらず、第9回補助機関会合の 議論に持ち越した。
    (3) 資金問題等 ・ 途上国の国別報告と資金問題については、非公式の協議が行われたものの、取りまと めのための時間が足りなかったために結論には至らず、第9回補助機関会合での議論に持 ち越するとともに、今後、各国からコメントを求めることとなった。
    (4) 既存の約束の見直し(途上国の参加問題) ・ 先進国の約束の2回目の見直しについては、先進国からは次回の見直しにおいては、そ の結果として、途上国の約束も含めて全締約国の約束が見直されることもあり得べしとしたのに対して、途上国は強くこれに反対し、各国から意見を求めて、第9回補助機関会合 で再度議論することとなった。しかしながら、この結果、第9回補助機関会合において、 途上国の参加問題を議論する足がかりができることとなった。
    (5)

    その他

    • 附属書I及び附属書IIの見直しについては、トルコをこれらの附属書から削除する提案について議論が行われ、次回会合で引き続き議論を行うこととされた。
    • NGOの会合への出席については、締約国の反対がない限り原則としてこれを認めることが概ね合意され、詳細な手続等については、次回会合で決定することとなった。
    • その他、今後の会議日程、事務局予算及び決算、財政手続等について議論され、事務局提案が承認された。
  • 条約第4回締約国会議(COP4)等については、以下のような進展があった。
    • COP4については、ホスト国であるアルゼンチン政府から、その準備状況について説明があり、11月2日から13日までの会期のうち、後半の2~3日間にハイレベルセグメント( 閣僚級)を行うこととなった。
    • COP5(1999年10月~11月に開催予定)については、ヨルダンから招致の意向が示され、 各国から歓迎されたが、引き続き他の国からの招致の申し出を受け付けることとなった。 (COP5の議長国は、通常の順番であれば、旧東欧、旧ソ連地域から選出される。)
  • 条約13条に関する特別会合(AG13)
    • 補助機関会合に合わせて開催された条約13条(多国間の協議手続)に関する特別会合 では、条約13条の規定に基づく多国間の協議手続の機能及び手続について議論がなされ、大筋では合意を得たものの、多国間の協議手続として設置する委員会の構成について先進国と途上国の対立が解決せず、未解決のままCOP4へ報告することとなった。

3. 今後のCOP4に向けた準備について

  • COP4まで、公式会合の予定はない。今後のビューロー会合(7月及び10月に予定)において、COP4の最終的な議題調整等が行われる予定。
  • また、COP4に向けた準備として、
    • 種々の論点について、各国から事務局へコメントを提出して、COP4と同時に開催され る補助機関会合における今後の交渉の材料とされる。
    • また、9月に我が国において、10月にはアルゼンチンにおいて、主要国間の非公式な交 渉のための会合をハイレベルで開催することが検討されている。
    • 吸収源の問題については、京都議定書の3条3に定める吸収源(植林、再植林、森林伐採)の具体的な算定方法については、COP4までにIPCCの専門家が参加するSBSTAのワーク ショップを開催する予定。その結果は、第9回補助機関会合やCOP4において提出され、議論される可能性がある。我が国としては、この専門家会合をサポートすることとしている 。

(参考)

今回の補助機関会合で決められた吸収源関係の検討内容やスケジュール等

(1) 京都議定書3条3の吸収源の定義等 ・ 議定書上の吸収源の取扱いの解釈として、いわゆるグロス・ネット方式が確定したこと(グロス・ネット方式とは、1990年の基準年には吸収源を考慮せず、第1約束期間では吸収源による吸収を考慮できるとする方式)。

(2) 京都議定書3条3の吸収源の算定方法等についての国際的検討スケジュール

  • 京都議定書3条3の用語の定義や算定方法について、SBSTAワークショップを9月にIPCC総会と連携してヨーロッパで開催する方向で検討すること。
  • 日本政府がこのワークショップの一部をサポートすること。

(3) 京都議定書3条4の吸収源の追加的活動の取扱いについての国際的検討スケジュール

  • 京都議定書3条4に規定する土地利用変化及び林業に関する追加的活動に関するワークショップをCOP4の後に開催すること。
  • 米国政府がこのワークショップをホストすること(非公式に表明)。

(4) 土地利用及び林業に関するIPCCによる検討

  • 土地利用及び林業に関する議論を科学的根拠に基づき客観的に進めるため、SBSTAはIP CCに、土地利用、土地利用変化及び林業と京都議定書に関する「スペシャルレポート」の 作成を依頼することととしたこと。
  • IPCCは、スペシャルレポートを2000年の半ばを目途に作成し、それに基づき、COP6(2 000年開催予定)で、吸収源に関する議論を行うようにすること。

連絡先
環境庁企画調整局地球環境部環境保全対策課
課 長 :小林  光(内線6740)

環境庁企画調整局地球環境部環境保全対策課温暖化国際対策推進室
室 長 :梶原 成元(内線6741)
 補 佐 :田中 聡志(内線6758)
 担 当 :岩佐 健史(内線6763)