報道発表資料

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1999年05月07日

国連持続可能な開発委員会第7回会合(CSD7)の結果について

 4月19日(月)から4月30日(金)まで、ニューヨークの国連本部で国連持続可能な開発委員会第7回会合(CSD7)が開催された。4月21日(水)から4月23日(金)まで開催された 閣僚級ハイレベル会合には、田中環境事務次官等が出席した。

1.概 要

 今回の会合においては、1997年の国連環境開発特別総会において合意された持続可能な開発委員会(以下CSD)の多年度作業計画に基づき、「海洋」「消費生産パターン」「観光」を主なテーマとして議論が行われた。主な日程は以下のとおりであった。

  • 4月19日(月)から21日(水)「持続可能な観光」をテーマとした多主体間対話(マルチ・ステークホルダー・ダイアログ)

  • 4月21日(水)から23日(金)主なテーマに関する閣僚級ハイレベル会合

  • 4月26日(月)から29日(木)CSD7の採択文書を作成するための事務レベルの交渉

  • 4月30日(金)CSD7決定の採択、CSD7の閉会、CSD8議長団(CSD8議長として、コロンビア環境大臣のJuanMayrを選出)の決定

2.今回会合の主たる採択文書

 今回の会合では、閣僚級ハイレベル会合の議長サマリー及び持続可能な観光に関する多主体間対話の議長サマリーがまとめられたほか、以下の主な文書が採択された。なお、確定した採択文書については近日中にCSDのホームページ(http://www.un.org/esa/sustdev)に掲載される見込み。

 1)海洋
 2)消費生産パターン
 3)観光
 4)エネルギー(CSD9(2001年開催)へ向けた準備プロセスに関する決定)

3.各テーマの議論の概要

(1)海洋

 CSD会期間作業部会で採択された決定素案文書を土台として、閣僚級ハイレベル会合の議論及び各国の関心要素を付加して事務レベルの交渉によりCSD7の決定文書が採択された。決定のポイントは以下のとおり。

 1) 総論・海洋は地球の大部分を占め、生命を維持し、気候循環の原動力となり、現在と将来の世代に必要な資源を提供する。海洋生物資源の利用は、貧困を撲滅し、食料の安全を保障し、海洋生物の多様性を保全し、地球の生命維持機能を保持するよう行われるべきである。
 2)

国、地域、世界レベルでの主要な課題・CSDは、海洋生物資源の過剰搾取と海洋の汚染を防止するため、特に以下の4点を重要な課題として位置付ける。

  1. 海洋生物資源の保全、統合された管理、持続可能な使用
  2. 陸上活動等に起因する海洋環境の汚染・悪化の防止
  3. 海洋、海洋生物資源、汚染の影響、気候システムとの相互作用に関する科学的理解の促進
  4. 海洋法条約とアジェンダ21の効果的な実施に向けた国、地域、世界レベルでの取組の推進。
 3)

個別事項

  • 海洋生物資源:
     CSDは、FAOにおける責任ある漁業のための行動規範、漁獲能力管理に関する行動計画等の策定を支持し、各国に早期の実施を求める。また、CSDは国際サンゴ礁イニシアティブ(ICRI)を承認し、各国の支援を要請する。

  • 陸上起因の活動:
     CSDは、陸上活動からの海洋環境の保護のための行動計画(GPA)の推進を図ることを国、国連機関、援助国に要請するとともに、GPAの調整事務所がハーグに設置されたこと、UNEPが主要な陸上起因の汚染源としての下水に関する国際会議を2000年に計画していることを歓迎する。

  • 海洋科学:
     CSDは、海洋環境保護の科学的側面に関する合同専門家会合(GESAMP)に対してCSD4で求められた活動を実施することを要請し、UNESCOでの取組の検討を促すとともに、エルニーニョの影響に注目し、その機構解明のための取組を推進する。

  • 海洋におけるその他の活動:
     CSDは、IMOに対して海洋法条約を始めとする関連条約の義務を船籍国が履行するために必要な手段を提供するための法的なメカニズムを緊急に構築するよう促す。また、各国にマルポール条約、バーゼル条約その他関連する条約への加盟とその実施を求める。

  • 国際的な調整と連携:
     CSDは海洋に関する総合的な調整の場として国連総会が適切であると認識し、総会での議論を効果的なものにするため、既存の組織と予算の範囲で、以下の方法を採用することを提案する。即ち、毎年1回、非公式準備会合を開催し、海洋と海洋法に関する事務総長報告からその年に焦点を当てるべき事項を抽出し総会に報告するという方法を今後4年間試行する

(2)消費生産パターン

 消費生産パターンの変更については、CSD会期間作業部会で採択された決定素案を土台として閣僚級ハイレベル会合の議論、各国の関心要素を付加して交渉のうえCSD7の決定文書が採択された。決定のポイントは以下のとおり。

  • 消費生産パターンを持続可能なものとするために変更することが急務である。特に先進国がその実現に責任を有しており、途上国に向けたODAの実施、能力向上と技術移転の促進を強化すること。

  • 消費生産パターンの変更は貧困の撲滅とともにCSDの1998-2002年の5年間を通した課題であり、これらが個々の政策課題で統合的に取り扱われること。

  • 4つのサブ分野すなわち「効果的な政策の立案と実施」「天然資源管理とクリーナープロダクション」「グローバリゼーションと消費生産パターンへの影響」「都市化と消費生産パターンへの影響」について政府が主要グループ、国際機関等と協力して取り組むべき事項を確認。
     また、持続可能な消費の推進を盛り込んだ「改訂国連消費者保護ガイドライン」も本会合で採択された。

(3)観光

 観光についてはCSD会期間作業部会で採択された決定素案文書を土台として、多主体間対話及び閣僚級ハイレベル会合の議論、その他各国の関心事項を付加する形で文書の交渉が行われた結果、以下のポイントを盛り込んだ文書が採択された。

  • 観光と持続可能な開発にかかる国際ワークプログラムが策定され、その実施が開始されることとなり、さらに、実施状況が2002年にレビューされることとなった。

  • 3日間にわたって行われた産業界、労働組合、NGO、地方自治体といった主要グループより構成される多主体間対話での内容が強く反映され、主要グループの位置づけ、役割が採択文書で強調された。

  • 途上国グループ(G-77及び中国)は、規制的手段を拒否し、開発のための先進国からの援助を求めるという従来からのパターンを通し、米国も産業界の自由を束縛するような規制的手段には反発し、自主的な取組を強調した。

  • EUその他いくつかの先進国は、規制的手段を明文化しようと努め、微妙なニュアンスの言葉又は言い回しが選択され、採択された。

  • EUからは、セックスツーリズムの撲滅や女性、子供の人権が強調されたが、国連の他機関の所掌業務との重複の可能性も検討され、直接的な表現を避けることになった。

  • 多主体間対話で強調されていた地元共同体及び先住民に対する配慮及び参画については、各国が合意した。

  • エコツーリズムを含む持続可能な観光を促進するための「国際的ガイドライン」及び「国際的ネットワーク」を設立することとされた。

(4)エネルギー

  • 2001年開催予定のCSD9でのエネルギー問題の検討がなされることとなっており、その準備プロセスに関する決定がなされた。

  • 決定では、CSD9におけるエネルギー問題の検討の準備を行うために開催することとなっている政府間専門家会合について、その第1回会合を来年のCSD会期間作業部会の直前又は直後に開催することとし、この専門家会合の議長、ビューロー等に関して決定がなされた。また、この決定では、関係機関やCSD事務局、各国政府が、専門家会合に向けて積極的に貢献することが求められている。

(5)その他の事項

  • その他の事項として、いくつかの決定及び決議が採択された。

  • 主なものとしては、EUの提案に基づき、2002年に予定されているアジェンダ21の包括的レビューに向けて、来年のCSD8において、レビュープロセスの形式、範囲、性格等について、最初の概括的な議論を行うことが決定された。なお、レビュープロセスのあり方については、CSD8の議論を踏まえて国連事務総長が2000年の国連総会に提案することとなる。

連絡先
環境庁企画調整局地球環境部企画課
課 長:柳下正治(6731) 
 補 佐:尾川 毅(6721) 
 専門官:佐藤邦子(6736) 
 担 当:永山 透(6755)