報道発表資料

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1999年04月09日

中央環境審議会水質部会及び地盤沈下部会「環境保全上健全な水循環に関する基本認識及び施策の展開について」(意見具申)

中央環境審議会水質部会(部会長:村岡浩爾・大阪大学工学部教授)及び 地盤沈下部会(部会長:高橋 裕・東京大学名誉教授)は、4月13日(火) に、「環境保全上健全な水循環に関する基本認識及び施策の展開について」 の最終報告をとりまとめ、近藤次郎中央環境審議会会長に報告することとし ている。また、4月14日(水)に、近藤会長は真鍋環境庁長官に意見具申を 行う予定である。
 なお、最終報告のとりまとめにあたっては、国民から意見を募集し、内容 に反映させた。
 今後、環境庁においては、本報告において具申された意見の内容を具体化 するため、健全な水循環に係る指標及び診断・評価手法の開発など環境庁が 中心となって行うべき施策を実施するとともに、「健全な水循環系構築に関 する関係省庁連絡会議」における「健全な水循環系の構築」に向けた施策の 検討や環境基本計画の見直しなどに反映させることとしている。

最終報告の概要は、次のとおりである。

[1] 環境保全上健全な水循環に関する基本認識

 我が国では、水は基本的に「降水→土壌水→地下水→地表水(河川・湖沼)→海洋 (→蒸発→降水)」という循環系を形成している。この水循環は、

  1. 自然の水循環系をその基盤としつつも、水の利用と水害の防止という面から様々な工夫により人工的な水循環系が付加されてきた。
  2. また、水循環は、流域を単位として成り立っているとともに、地表水と地下水とを結ぶ立体的・三次元的広がりをもったものである。

 しかしながら、水環境を巡っては、20世紀後半以降、都市への人口集中に伴う急激な都市域の拡大等を背景に、森林、水田等の減少や荒廃、都市での雨水の不浸透域の拡大が進んだり、水需要が増大した結果、様々な障害が生じている。

<障害の例>

  • 湧水の枯渇
  • 河川の平常時流量の減少
  • 水質の悪化の進行
  • 生態系の劣化
  • 地盤沈下の発生
  • ヒートアイランド現象
  • 都市型水害の発生

 このような障害を克服していくに当たっては、以下のような考え方の下、環境保全上健全な水循環の回復を図ることが不可欠である。

[2] 環境保全上健全な水循環の確保に向けた施策の展開

1.現状、課題、目標の共通認識の形成

 水循環の現状、課題、目標等についての共通認識の形成を図るため、流域の水循環の健全性について水量、水質のみならず水生生物、水辺地の保全を含む水循環機構の定量的把握を行い、診断評価を行う。また、水循環機構に関する情報に加え、水循環に密接に関連する土地利用に関する情報なども併せ、情報を共有する。

2.体系的な施策の追求

 今後、水に関係する各省庁間で健全な水循環の概念と、現状認識、今後の課題について共通認識を形成した上で、国が行うべき施策の基本的方向、留意すべき事項等をとりまとめ、政策大綱といった形で、展開すべき政策を体系化し早急に提示すべきである。
  特に、地下水の涵養域や利用域の観点を導入して開発行為の適否を判断するなど、土地利用に関する計画を利用した地下水涵養の面的取組を実施したり、地下水の環境保全に支障を与えるような地下水の採取や排水などに対する公的関与を強化すること等について検討を行うべきである。
  また、施策展開の際の上下流での連携や、環境学習活動、水辺の清掃、家庭での水質浄化の取組など住民自らが行う活動やナショナルトラスト等による住民の協力なども推進する必要がある。
  さらに、事業展開において支障となることが多い費用負担の問題について、水循環の回復、促進を図る上で、受益者負担や汚染者負担の考えも含めた公平な負担のあり方についても検討を行うべきである。

3.流域における施策の具体化

 施策を展開する上では、住民、利水者、企業、学識経験者、行政など流域における関係者が行政区分を超えて環境保全上健全な水循環の確保を自らの問題として捉え、各自が主体的な対応をすることが求められる。
  このため、流域ごとに「健全な水循環回復計画」といった形で計画を取りまとめることが考えられる。計画のとりまとめに当たっては、こうした関係者から構成される協議の組織を設置し、関係者の意見を集約し、十分な調整とコンセンサスづくりを行う方法が考えられる。

4.地域別にみて推進すべき施策の方向

流域を単位とした水循環は、主として上流部に位置する森林地域から中流部の農村地域へ、そして下流部の都市地域へ流れるという物理的特性を有している。
  したがって、流域内各地域で取り組むべき具体的な施策について検討していくことが適切であり、森林、農村、都市等の地域別にみて推進すべき施策の方向について整理を行った。

連絡先
環境庁水質保全局企画課地下水・地盤環境室
室長:安藤 茂(6670)
 補佐:内田 勉(6671)
 係長:丸山 将吾(6674)

環境庁水質保全局水質管理課
課長:一方井誠治(6630)
 補佐:竹内 純一(6637)