報道発表資料

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1999年06月11日

浮遊粒子状物質総合対策に係る調査・検討結果について

わが国における浮遊粒子状物質(SPM)の大気環境濃度は、大都市圏を中心に高い濃度を示し、環境基準達成率も低い水準で推移している。
 このため、環境庁では平成9年度に有識者で構成する「浮遊粒子状物質総合対策検討会(座長:芳住邦雄 共立女子大学教授 )」を設置し、発生源別に原因物質の削減を図る「総合対策」の確立に向けた調査・検討を行ってきた。
 同検討会によって、この度まとめられた報告書の要点は、以下のとおり。
 環境庁では、本報告等を踏まえ、制度改正が必要な事項も含め、具体的かつ有効な削減対策について早期に検討を行い、順次施行していくこととしている。
1. SPMに係る大気汚染の現状
平成9年度におけるSPMの環境基準達成率は、全国の一般大気環境測定局で62%、自動車排出ガス測定局で34%と低く、特に、自動車NOx法特定地域にある
2. SPM発生・生成メカニズムの解明
 
SPMは、ばいじんなど既に粒子としての性状を持つ「一次粒子」と窒素酸化物、硫黄酸化物、塩化水素、炭化水素類などガス状の物質が大気中での光化学反応等により粒子化する「二次生成粒子」とに分類される。また工場・事業場の煙突から出た直後の高温のガスが冷却等により粒子化する「凝縮性ダスト」の存在もあり、SPMの発生・生成のメカニズムは複雑かつ多岐にわたっている。
このため、SPM濃度が高い関東・関西地域を対象に予測シミュレーションモデルを開発し、平成6年の現況シミュレーション(年平均寄与濃度の算出)を行った結果、
SPM濃度は、関東地域の方が関西地域に比べ20%程度濃度が高い。
人為的発生源と自然界に由来するものとの寄与割合は、両地域とも人為的な寄与が大きく、70~76%を占める。
工場・事業場と自動車の寄与割合は、関東地域がそれぞれ29%、35%、関西地域が21%、41%。両地域とも自動車の占める割合が大きい。
一次粒子と二次生成粒子の割合は、自動車が両地域とも2:1であるのに対し、工場・事業場の場合は1:3~5と二次生成粒子の寄与が極めて大きく、その削減対策が重要である。
凝縮性ダストの占める寄与割合は、工場・事業場全体で7%程度。
3. SPM総合対策に向けた取り組み
 
平成22年頃に大部分の大気環境測定局において、SPMに係る環境基準を達成することを目標に将来予測シミュレーションを行った結果、
工場・事業場と自動車の寄与割合は、関東地域がそれぞれ35%、21%、関西地域が27%、24%となり、ディーゼル車の排出ガス規制強化など既定の削減対策により、両地域とも工場・事業場の占める割合が大きくなる。
目標達成には既定の削減対策に加え、工場・事業場を中心に、関東地域で概ね50%、関西地域で概ね10~20%寄与濃度を低減することが必要。
今後、主に次の削減対策を総合的かつ効果的に推進する必要がある。
[1] 既定の施策の着実な推進
(廃棄物焼却炉のばいじん規制、ディーゼル車の排出ガス規制)
[2] 工場・事業場に対する規制強化等
(ばい煙発生施設の排出規制強化、小型廃棄物焼却炉等の法規制規模のすそ下げ の検討)
[3] 制度改正による新たな規制方策等の検討
(SPMに係る総量規制の導入や炭化水素類の排出抑制等の検討)
[4] 局地対策として、交通量の適切な抑制及び道路粉じんの低減
4. 今後の課題
 
ガス状物質の排出量と二次生成粒子への変換量に関する定量的解明
炭化水素類の排出実態調査及び実効性ある規制方法
燃料の品質や性状の改善に関する成分分析及びSPM抑制効果
大都市圏を対象に、SPM対策としての総量規制の導入
PM2.5の測定方法の確立、健康影響評価、排出実態調査及び環境基準等に関する検討
連絡先
環境庁大気保全局大気規制課
課  長  飯島 孝  (6530)
 課長補佐 佐藤健二  (6533)
 課長補佐 佐々木裕介(6547)