報道発表資料

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2001年01月11日
  • 自然環境

「身近な生きもの調査 2001」参加者募集について

環境省自然環境局生物多様性センター(山梨県富士吉田市)は、春から夏にかけて実施する「身近な生きもの調査 2001」の参加者を募集する。
 この調査は、第6回自然環境保全基礎調査(緑の国勢調査)の一環として、広く自然愛好家のボランティア参加を得て2000年秋より1年間をかけて実施している「身近な生きもの調査 2000(身近な林調査)」の後半部分にあたるものである。
 今回の調査では、調査参加者が自ら調査の対象とする「身近な林」を選び、春には「タンポポと黄色い花」、夏には「セミの抜け殻と夏の虫」を観察してその結果を環境省に送付、環境省では、それらの分布情報やアンケートなどから、全国各地の「身近な林」の環境診断を行い、2000年の秋・冬に実施した「ドングリ調査」、「赤い実」の調査結果と合わせて報告書にとりまとめ参加者に配布する。
 2000年秋・冬の調査には、全国1,400市町村からおよそ2万人が参加した。今回の春・夏調査ではこれらの参加者に引き続き調査協力を求めるほか、新規の参加者を広く募集して参加者の倍増を目指す。
 調査の案内、中間集計、とりまとめ結果など調査に関する情報は、生物多様性センターWebページに逐次掲載し、公開する予定。
調査概要
 「身近な生きもの調査」は、居住地周辺の(身近な)自然環境の動向を表している種(環境指標種)について、その分布や生態等を調べ、国土の身近な自然環境を診断するとともに、調査を通じて国民の身近な自然への関心を高め、その保全の必要性について理解を深めていくことに役立てる目的で実施している。
 第3回自然環境保全基礎調査の一環として昭和59年度に初めて実施して以来、第4回(平成2年度)、第5回自然環境保全基礎調査(平成7・8・9年度)でも実施され、今回が4期目で、昨年秋・冬調査に引き続き調査を実施するものである。
 これまでの調査では、環境庁(現・環境省)が募集した一般ボランティア(延べ30万名余り)の参加を得て、数少ない専門研究者だけでは困難な、いわゆる普通種や広域分布種の分布状況等が全国一律・一斉の調査によって把握されるとともに、調査への参加を通じた環境教育や保全意識の醸成に寄与してきた。

今回調査の特徴
 今回調査は、調査者自らが「身近な林」を選び、半年~1年間継続して観察・調査を行うことを特徴としている。また、調査を円滑に進めるため、既存出版物ではあまり見られない動植物の検索図など判りやすい調査内容の解説を盛り込んだ「調査のてびき」を新規作成した。
 さらに、実物(タンポポの花・実、セミの抜け殻)や写真などの証拠を基に集計・解析するため、精度の高い確かな結果が得られることが期待される。
 調査結果については、動植物の分布状況と林のようすに関するアンケートを合わせて解析することにより、生きものからみた全国各地の身近な林の状況、身近な林における自然環境と人との関わりや利用実態等を明らかにし、身近な自然とその保全について考えるための材料として活用されることを目指す。

調査内容
春の調査(タンポポ・黄色い花)

 代表的な春の花であるタンポポは、都市化の程度を示すとも言われている。これまで各地で行われた調査によって、古くから改変されずに残っている場所や、昔からある田んぼや畦などには在来タンポポが多くあり、宅地開発や造成などで近年、土地の様子が大きく変わった場所には外来タンポポが多く生育することが明らかにされてきた。今回調査では「身近な林」の環境が周辺の都市化の影響をどれほど受けているかを推定するため、タンポポの花・実を収集してその種類を同定する。

 また、春の林では黄色い花はよく目立ち、黄色は虫を引きつける色なので、花が咲くとハナアブやハナバチのような虫の仲間が集まってくる。虫は花から蜜を吸ったり花粉を食べ、花粉を他の花に運んでいる。様々な黄色い花が見られる林は、虫たちにとっても豊かな林と考えられる。「身近な林」の生態系の豊かさを知る手がかりを得る目的で、春に黄色い花を咲かせる植物の写真を撮影し、それぞれの林における種数などを比較検討する。

夏の調査(セミの抜け殻・夏の虫)

 「セミの抜け殻」については、平成7年度の調査で、セミの種類別の全国分布図を作成した。今回のねらいは「身近な林」の豊かさを考えようとするものであり、例えばアブラゼミしか見つからなかった林とたくさんの種類が見つかった林とでは、どのような自然環境の違いがあるのか等を考察するため、セミの抜け殻を収集してその種類を同定する。

 セミと一緒に「身近な林」で出会う夏の虫たちは、食べ物一つとっても樹液を吸うものや葉を食べるもの、けものの死骸を食べるものなど種によってずいぶん違う。また、葉の上にいるもの、地面を歩いているもの、飛んでいるものなど暮らしぶりも様々である。多種多様な虫が見られることは、それらの暮らしを支えている「身近な林」の自然の豊かさの証明と言えることから、観察された虫の写真を撮影し、それらの顔ぶれの属するグループや暮らしぶりから林の自然の豊かさを考察する。

 なお、前回調査報告書では、「クマゼミ」の分布の北進傾向、「コエゾゼミ」の北日本の平地での発生状況や公園などの人工的環境で発生を繰り返すかなどについて、今後注目すべき課題として指摘されているので、今回調査における情報の集積が期待される。

調査者
 調査者は、本調査の趣旨を理解し、ボランティアとして参加協力する一般の自然愛好家とし、参加形態は、個人、団体を問わない。
なお、自然保護団体、自然研究会、自然学習施設・団体、博物館あるいは民間企業の協力を積極的に求めるとともに、昨年秋冬の調査で参加者のいなかった市町村への呼びかけを行うほか、学校の行事・授業、地方公共団体の自然観察会などの行事にも取り込んでもらうように働きかける。

調査期間
 平成13年春から平成13年夏までの約半年間(3月~8月)

調査の内容
(1)調査参加者は、環境省から送付する「調査のてびき」に沿って下記の調査を行い、その結果を季節ごとに環境省に送付する。
[1]参加者が手軽に出かけられる「身近な林」を調査対象として選ぶ。
[2]「身近な林」の環境を把握するための材料として、タンポポ、セミの抜け殻の実物を収集する。また、マンサク、ヤマブキ、キジムシロなどの黄色い花、アゲハチョウや赤っぽいトンボの仲間、クワガタムシやオサムシなどの夏の虫の写真等を撮影。
[3]「身近な林」の季節により移り変わりを知る材料として、決まった場所から定期的(およそ1ヶ月ごと)に林の写真を撮影。
(2)環境省及び専門家は、調査参加者から送付された資料を集計、同定、解析し、生物の多様性、人との関わりなどの視点から「身近な林」の環境診断を行う。

調査結果
 調査結果は、身近な林の環境やそこに生息する動植物の情報等を盛り込んだ報告書の形にまとめ、調査参加者に配布するとともに、生物多様性センターWebページなどを用いて公表する。
 報告書は、身の回りの自然環境の状況や変化について知り、今後の保護や管理のあり方を考えていただく基礎的資料となる。
 なお、案内パンフレットの他、調査のてびき、調査票、中間集計等もWebページに順次掲載する。

Webページアドレス:http://www.biodic.go.jp/

参加申し込み方法
(1)案内パンフレットの入手方法
 案内パンフレット入手希望者は環境省自然環境局生物多様性センター「身近な生きもの調査」係まで郵便、電話、FAXまたはe-mailで申し込む。
 (郵便、FAXまたはe-mailには、「身近な生きもの調査案内パンフレット希望」と書き、郵便番号、住所、氏名、電話番号明記のこと。)
 申込者には環境省自然環境局生物多様性センターから案内パンフレット、申し込みカードなどを送付する。
 また、Webページでも案内パンフレットを見ることができる。

(2)参加の申し込み
 参加希望者は、案内パンフレットに添付の、あるいはWebページからダウンロードした申し込みカードに必要事項を記入し、返信用切手を同封の上3月31日までに環境省自然環境局生物多様性センターあてに返送する。
 生物多様性センターにおいて参加者登録した後、調査に必要な「調査のてびき」、「調査票」等を2月下旬から順次送付する。

(3)調査の開始
 参加申込者は、調査のてびきと調査票が届き次第、調査に着手できる。

注意事項:
 Webページで案内パンフレット、調査のてびき、調査票等を掲載しますが、3月31日までに申し込みカードによる参加の登録をしないで調査されても結果に反映できません。
 なお、Webページに関する詳細な注意は、Webページの案内を参照して下さい。

申込先・問い合わせ先
 〒403-0005 山梨県富士吉田市上吉田剣丸尾5597-1
  環境省自然環境局生物多様性センター(身近な生きもの調査係)
  電話 0555(72)6033 FAX 0555(72)6035
  e-mail mijika@biodic.go.jp

(電話でのお申し込みやお問い合わせは、平日9時から17時の間にお願いします。)

本調査の企画検討
自然環境保全基礎調査検討会身近な生きもの分科会

えんじゅ まさし
槐   真史厚木市郷土資料館主任兼学芸員
おおば ひであき
座長大場 秀章東京大学総合研究博物館教授
おおもり ゆうじ
大森 雄治横須賀市自然・人文博物館学芸員
はまぐち てついち
浜口 哲一平塚市博物館学芸員
もちづき けんじ
望月 賢二千葉県立中央博物館分館・海の博物館分館長

(五十音順)

添付資料

連絡先
環境省自然環境局総務課生物多様性センター
センター長 笹岡 達男
〒403-0005
山梨県富士吉田市上吉田剣丸尾5597-1
Tel:0555-72-6033