報道発表資料

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1999年10月29日

今後の海洋環境保全のあり方に関する懇談会中間報告書について

今後の海洋環境保全施策の方向を検討するため、環境庁水質保全局長の委嘱により設置している「今後の海洋環境保全のあり方に関する懇談会」(座長清水 誠 東大名誉教授)において、今般、海洋環境保全に向けた視点、必要な施策等に関する提言を中間報告書として取りまとめた。

1.背景等

 国際的な海洋に関する管轄等を定めた「国連海洋法条約」の我が国での発効(平成8年7月)により、我が国は、排他的経済水域(原則として領海基線から200海里の範囲内)における海洋環境の保全に関する管轄権を有することとなった。

 この動きに対応すべく、排他的経済水域内とその外側を視野に入れた今後の海洋環境保全施策の方向を総合的に検討するため、「今後の海洋環境保全のあり方に関する懇談会」(水質保全局長委嘱)を平成7年12月に設置した。

 この懇談会においては、21世紀における我が国として取り組むべき海洋環境保全施策の方向性等について、海域としては沿岸域、沖合域から広域までを、また、時間的には短期から中長期までを視野において検討を進め、今般、その検討結果を中間報告書として取りまとめた。

 <懇談会検討員>

  池田 正之 (財)京都工場保健会常務理事(京都大学名誉教授)
  宇野 佐 (財)海中公園センター理事長
  菊池 泰二 九州ルーテル学院大学人文学部教授(九州大学名誉教授)
  小早川 光郎 東京大学法学部教授
座長 清水 誠 日本大学生物資源科学部海洋生物資源科学科教授(東京大学名誉教授)
  須藤 隆一 東北大学大学院工学研究科教授
  平  啓介 東京大学海洋研究所所長
  中谷 和弘 東京大学法学部教授
  菱田 昌孝 海洋科学技術センター特別参事
  森田 昌敏 国立環境研究所地域環境研究グループ統括研究官
  山田 久 水産庁瀬戸内海区水産研究所環境保全部長
  横濱 康継 志津川町自然環境活用センター所長
  渡辺 正孝 国立環境研究所水土壌圏環境部長

.中間報告書の概要

(1)海洋環境保全の必要性

 ・  人類や生物の生存の基盤である海洋は、
  ○ 水の貯蔵庫
炭素の貯蔵庫
物質循環の担い手
多様な生態系成立の場
などの多様な機能を有しており、地球環境の重要な構成要素としてその保全と次世代への継承は、人類共通の課題。
 ・  我が国周辺の海域についてみると、
[1] 日本海及び東シナ海側は閉鎖性が強い海域であるとともに、周辺国の人口密度や経済成長率が高いことから、海洋環境への負荷が高まる可能性が大きい。
[2] 太平洋側は、人口・産業の密集した太平洋ベルト地帯沿岸の環境保全と沖合域からその外に広がる海域を対象とした太平洋全体の環境保全が大きな課題。


(2)提言のポイント

沖合域までの幅広い海域を対象とする海洋生態系を含めた環境保全目標の検討


海域に関する環境保全目標として、

[1] 現在、沿岸域を対象とした水質環境基準が設定されているが、
[2] 今後、沖合域まで対象域を広げ、海洋生物、海洋生態系及び環境汚染に敏感な動植物が存在している海域並びに底質の保全に係る目標を設定できるよう、まず、海洋環境モニタリングの一層の充実を図り、モニタリングにより集積される各種データをもとに、海洋環境について生態系の観点も含めた新たな環境保全目標の検討に着手する。


海洋環境モニタリングの充実強化                             

[1] 現行のモニタリング対象は、水質、底質が中心。
[2] 今後、海洋生態系はピラミッド構造にあることから、プランクトン、魚類、海産哺乳類等各段階での有害物質濃度、プランクトン、底生生物、魚類等の群棲の状況、藻場、サンゴ礁等の存在状況などを「海洋環境モニタリング調査」の対象に追加するための検討を開始する。


近隣諸国との連携・協力の強化                              

日本海及び黄海を対象に、中国、韓国、ロシアと協力して国連環境計画傘下の北西太平洋地域海行動計画(NOWPAP)に基づき海洋環境保全上の取組を実施。
特に、(財)環日本海環境協力センター(富山市)を核としたリモートセンシング等のモニタリング及び沿岸環境評価を展開する。



3.政策検討における本中間報告書の活用

 当面、[1]環境基本法に基づく「環境基本計画」の見直し、[2]生物多様性条約に基づき我が国で策定されている「生物多様性国家戦略」の見直し等に活用する予定。また、地球サミットから10年目(2002年)に開催される国連環境会議「リオ+10」に向け、海洋環境保全分野に関しても我が国として国際貢献策を検討していく際にも活用する。

連絡先
環境庁水質保全局企画課海洋環境・廃棄物対策室
室 長 :伊藤 哲夫(6620)
 補 佐 :島田 幸司(6622)

環境庁自然保護局計画課
課 長 :小林 光  (6430)
 補 佐 :中島 慶二 (6432)