報道発表資料
1.背景
近年、化学物質による環境汚染の未然防止に関する国民の関心が急速に高まっているため、環境庁では、昨年11月の中央環境審議会答申「今後の化学物質による環境リスク対 策の在り方について(中間答申)ー我が国におけるPRTR(環境汚染物質排出移動登録)制度の導入ー」を受け、また、通商産業省においても、昨年9月の化学品審議会中間報 告「事業者による化学物質の管理の促進に向けて」を受け、両省庁が共同で必要な対応の検討を行ってきた。
その結果、環境庁及び通商産業省は、人の健康や生態系に有害な性状を有する化学物質について、それによる人体等への悪影響との因果関係の判明の程度に係わらず、事業者に よる管理活動を改善・強化し環境の保全を図るための新たな法制度を設けることが必要であるという認識が一致したため、共同で法案の作成作業を行い、今般、政府部内の調整を 終えて、「特定化学物質の排出量の把握等及び管理の改善の促進に関する法律案」を取りまとめたものである。
2.法律案の概要
(1)法の目的
環境の保全に係る化学物質の管理に関する国際的協調の動向に配慮しつつ、化学物質に関する科学的知見及び化学物質の製造、使用その他の取扱いに関する状況を踏まえ、事業 者及び国民の理解の下に、化学物質の環境への排出量等の把握に関する措置(PRTR)並びに事業者による化学物質の性状及び取扱いに関する情報の提供に関する措置(MSDS)等を講ずることにより、事業者による化学物質の自主的な管理の改善を促進し、環境の保全上の支障を未然に防止すること。
(PRTRとは、PollutantReleaseandTransferRegisterの略)
(MSDSとは、MaterialSafetyDataSheetの略)
(2)対象物質の選定(政令で指定)
環境庁長官、厚生大臣及び通商産業大臣は、法の対象物質を選定するにあたり、あらかじめそれぞれの審議会の意見を聴かなければならない。
環境庁;中央環境審議会厚生省;生活環境審議会通商産業省;化学品審議会
(3)化学物質の排出量等の届出の義務づけ(PRTR制度)
{1} | 事業者(注1)は、化学物質の環境への排出量及び移動量を把握し、事業所管大臣に届出(義務化)。(注1)政令で定める業種に属しかつ取扱量等を勘案して政令で定める要件に該当する者 |
{2} | 国は、届け出られた情報について営業秘密(注2)を確保した上でファイル化(電子計算機で処理できる情報にすること)し、それを物質ごとに、業種別、地域別等に集計し公表するとともに都道府県に提供(注3)。(注2)営業秘密は、「不正競争防止法」の営業秘密の判断基準、すなわち、「秘密として管理されている生産方法その他の事業活動に有用な技術上の情報であって公然と知られ ていないもの」の基準に従い、厳格に判断。営業秘密の判断は、事業者の生産方法等に係る技術的な情報を有する事業所管大臣が行うが、環境庁長官は、環境行政上必要があれば事業所管大臣に説明を求めることができる 。(注3)都道府県は、ファイル化された事業所ごとの情報をもとに、地域のニーズに応じて集計・公表。 |
{3} | 国は、{1}で届け出られた排出量以外の、家庭、農地、移動発生源(自動車等)からの排出量を推計して集計し、{2}と併せて公表。 |
{4} | 国は、{2}でファイル化された事業所ごとの情報について、請求に応じて開示。 |
{5} | 事業者は、国が定める技術的な指針に留意しつつ化学物質の管理を改善・強化するとともに、その環境への排出や管理の状況等について関係者の理解の増進に努力。 |
(4)国による調査の実施
{1} | 国は、PRTRの集計結果等を踏まえて環境モニタリング調査及び人の健康等への影響に関する調査を実施。 |
{2} | 都道府県は、国が行う{1}の調査について意見を述べることができる。 |
(5)化学物質安全性データシート(MSDS)の交付の義務づけ
事業者が対象化学物質の譲渡等を行うに際し、相手方に対して当該化学物質の性状及び取扱いに関する情報を提供(義務化)
(6)国及び地方公共団体の措置
{1} | 化学物質の有害性等に関する科学的知見の充実に努める。 |
{2} | 化学物質の性状等に関するデータベースの整備と利用の促進に努める。 |
{3} | 事業者に対する技術的な助言等の措置を講ずるよう努める。 |
{4} | 化学物質の管理状況等に関する国民の理解を深めるよう努める。 |
{5} | {3}及び{4}のために必要な人材の育成に努める。 |
添付資料
- 連絡先
- 環境庁企画調整局環境保健部保健企画課
課長:南川秀樹(6310)
補佐:菊池英弘(6309)
環境庁企画調整局環境保健部環境安全課
課長:吉田徳久(6350)
補佐:早水輝好(6353)