報道発表資料

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1999年03月24日

平成10年度環境モニター・アンケート 「総合的体系的な廃棄物・リサイクル対策について」の調査結果

 環境庁は、平成10年度環境モニター・アンケートとして、「総合的体系的な廃棄物・リサイクル対策について」の調査を行った。
 その結果、廃棄物・リサイクル対策の問題は、様々な環境問題の中でも特に差し迫った問題であると意識されていること、そのため、廃棄物・リサイクル対策は、行政・産業界・市民が協力して、さらに積極的に推進すべきであると認識さ れていることが分かった。
 また、そのためには、市民もある程度のごみ処理経費を負担すべきであるとの意識を持つとともに、産業界だけでなく市民自身が自分の問題として身近な取組みを実践する必要があること、それらの意識向上のため、行政に対しては市民に 対する環境教育のさらなる充実の必要性を感じていることなどが示された。
 環境庁としては、本調査の結果を、廃棄物・リサイクル対策をさらに進めるための検討資料として活用することとしている。

1.調査の目的及び実施方法

(1)調査目的
 環境保全上健全な物質循環を促進する、総合的体系的な廃棄物・リサイクル対策については、国民一人ひとり、あらゆる主体の経済活動に深く関わる問題である。 政府は、ごみの減量化やリサイクルをすすめる社会(循環型社会)の構築に向けた検討を行っているが、この調査は、廃棄物・リサイクル対策に関する問題意識や役割分担 のあり方等について、今後の検討に活かすために実施したものである。

(2)実施方法
 環境庁が委嘱している全国1,500人の環境モニターを対象とし、平成10年11月に総務庁管区行政監察局等を経由して、郵送によるアンケート調査を実施した。回答者は1,315人で、回答率は87.7%であった。

2.調査結果の概要

(1)環境に関して差し迫った問題だと思うもの(問1)
 様々な環境問題の中で、早急に対策をとる必要があり、差し迫った問題だと思うものについて、提示した12項目の中から順番に3つを選択してもらったところ、第1位に 挙げられたものは「地球温暖化問題」(38.3%)、「廃棄物問題」(31.1%)、「環境ホルモン(外因性内分泌かく乱化学物質)問題」(11.7%)の順であった(図1)。 しかし、3つの回答を総合した結果(図2)をみると、「廃棄物問題」(72.5%)が最も多く、目に見える形で現れるこの問題が、大きな関心事であることを示している。

(2)廃棄物に関して差し迫った問題だと思うもの(問2)
 廃棄物問題に限定して、さらにその詳細内容に関して差し迫った問題だと思うものについて、提示した9項目の中から順番に2つを選択してもらったところ、第1位に挙げ られたものは「廃棄物の焼却に伴うダイオキシンなどの有害物質汚染問題」(48.8%)、「不法投棄問題」(23.5%)の順であった(図3)。
 2つの回答を総合した結果(図4)をみると、「有害物質汚染問題」(64.1%)が同様に最も多く、最近取り上げられることの多いこの問題が、廃棄物問題の中でも特 に大きな関心事であることを示している。また、第2位として「汚染土壌の発生など、将来にわたる環境汚染のツケ回し」が挙げられており、現在差し迫った問題のみならず、 長期的な問題としての関心も高いことを示している。

(3)リサイクルについての考え方(問3、問4)
 リサイクルについての考え方として、提示した7分類の中から1つだけ選択してもらったところ、「今以上に進めるべき」(84.9%)との回答が群を抜いて多かった (図5)。
 さらに、リサイクルを進めるべきだと考える理由について5項目の中から1つを選択してもらったところ、第1位は「環境保全の観点から廃棄物の焼却量をもっと減らす 必要がある」(58.1%)、第2位は「木材や鉱物資源などの採取による環境破壊が進むのを防ぐ必要がある」(22.1%)との理由を挙げており、環境保全上の課題とし てリサイクルをとらえる意識が高いことを示している(図6)。

(4)一般廃棄物の全国総排出量及びリサイクル率について(問5、問6)
 一般廃棄物の全国総排出量を提示し、この量の多寡についての感じ方を5項目から1つ選択してもらったところ、「もっと少ないと思っていた」(45.4%)、「この 程度だと思っていた」(21.1%)、「もっと多いと思っていた」(15.4%)の順であった(図7)。廃棄物問題に関心が高くても、日常生活の中で定量的な問題として は把握されにくいことを示している。
 また、一般廃棄物の中から再利用されるものの割合を示すリサイクル率を提示し、この率の多寡についての感じ方を5項目から1つ選択してもらったところ、「もっと 多いと思っていた」(40.5%)、「この程度だと思っていた」(29.8%)、「もっと少ないと思っていた」(19.5%)の順であった(図8)。リサイクルと いう言葉が浸透している現状と実際との格差を示していると思われる。

(5)一般廃棄物の最終処分場の残余年数について(問7、問8)
 一般廃棄物の最終処分場の残余年数と言われている年数を提示し、これについての感じ方を4項目から1つ選択してもらったところ、「切迫した問題だと思う」(92.5 %)との回答が圧倒的に多かった(図9)。
 また、切迫した問題だと思うと回答した人を対象に、その解決策として提示した5項目から1つを選択してもらったところ、「ごみの発生量を減らす」(64.0%)、 「ごみのリサイクルを進める」(28.0%)の順であった(図10)。

(6)ごみの減量化、リサイクルへの身近な取組みについて(問9)
 ごみの減量化、リサイクルに関して、一般に実施されていることを11項目提示し、回答者自身が実行していることを複数可として回答してもらったところ、「市町村の分別収集のルールを守ってごみを出している」(83.1%)、「食べ残しや料理くずなどをなるべく減らすようにしている」(57.6%)、「家電製品などをなるべく大事 に使い、ごみにならないようにしている」(55.7%)の順となった(図11)。市民団体や地域の活動に参加しているなどの積極的な取組みを行っているとの回答も少な からず見られたが、まずは身の回りで実践できることから取組もうという人が多いことを示している。

(7)ごみ処理費用の負担者について(問11)
 ごみ処理費用を誰が負担すべきかについて、7項目から1つを選択してもらったところ、「一部であれば、ごみの量に応じて排出者が負担すべき」(27.1%)、 「処理のしにくいものは、製造メーカーが引き取って処理費用も負担すべき」(25.4%)、「粗大ごみだけなら、排出者が負担すべき」(14.2%)の順となった (図12)。「市町村が税金によって処理すべき」(11.2%)との意見もあったが、上記(5)に示した問8の結果と同様、ごみ問題が住民自身の問題であり、排出者 としての住民にできることは住民が負うべきだとする意識を示しているとともに、製品メーカーにも責任を求める声が強いことを示している。

(8)容器包装リサイクル法及び家電リサイクル法の周知度について(問12、問13)
 容器包装リサイクル法について5項目を提示し、1つを選択してもらってその周知度を回答してもらったところ、「その仕組みの内容なども含めて知っていた」(46.0 %)、「名前くらいは知っていた」(38.1%)の順であった(図13)。また、家電リサイクル法についても同様に回答してもらったところ、「その仕組みの内容なども含めて知っていた」(23.5%)、「名前くらいは知っていた」(36. 6%)の順であった(図14)。

(9)ごみの減量化、リサイクルへ推進のため特に必要だと思うもの(問14)
 ごみの減量化、リサイクルへ推進のために考えられる政策的手法を9項目提示し、特にその実行が必要と思われるものについて、複数可として選択してもらったところ、 「容器や電池などについてのデポジット制度の導入」(64.6%)、「製品の製造時における有害物質やリサイクルしにくい材料の使用制限」(62.8%)、「意識向上 のための積極的な環境教育の実施」(58.6%)の順であった(図15)。全体的に、ごみの減量化のために、リサイクルのしやすい仕組みづくりが必要だと考えている人が 多いことが示されている。

(10)自由意見
 自由回答として、6項目に分けた記述形式で意見を記載してもらった。

{1}ごみの減量化、リサイクルへ推進のため、産業界に望むこと(問15)
 1,012人から延べ1,604件の回答が寄せられ、その内容を分類すると、耐久性の長い製品を作る、コスト増となっても積極的に取り組むべきなど、企業姿勢・意識 の改善、向上を望むもの(299件)、企業のリサイクルを義務化するなど、回収と再利用の推進を望むもの(292件)、過剰な包装をやめるべきなど、容器・包装についての要望(274件)等が指摘されている。

{2}ごみの減量化、リサイクルへ推進のため、行政(政府)に望むこと(問16)
 898人から延べ1,127件の回答が寄せられ、その内容を分類すると、取組みのさらなる積極化など、取組み姿勢に関する要望(205件)、リサイクル関連産業への 助成制度や優遇措置の充実など、企業・団体の育成、支援に関する要望(167件)、罰則や規制の強化、法整備に関する要望(131件)等が指摘されている。

{3}ごみの減量化、リサイクルへ推進のため、地方自治体に望むこと(問17)
 848人から延べ1,074件の回答が寄せられ、その内容を分類すると、取組みのさらなる積極化など、取組み姿勢に関する要望(197件)、住民への環境教育を始め とする環境教育の充実への要望(176件)、分別収集の徹底に基づくリサイクルのさらなる推進への要望(149件)等が指摘されている。

{4}ごみの減量化、リサイクルへ推進のため、市民として行動すべきこと(問18)
 906人から延べ1,788件の回答が寄せられ、その内容を分類すると、ごみの分別収集や生ごみの堆肥化など、ごみ処理に関すること(450件)、無駄なものの不買 や買物袋の持参など、物品の購入に関すること(391件)、実行、協力の姿勢などについて(306件)等が挙げられている。

{5}「総合的体系的な廃棄物・リサイクル対策の基本的考え方」について(問19)
 アンケート質問票と同時に、中央環境審議会廃棄物部会が平成10年8月にとりまとめた「総合的体系的な廃棄物・リサイクル対策の基本的考え方(たたき台)」を配布し、 この内容について意見を求めたところ、503人から延べ587件の回答が寄せられた。回答を分類すると、よい資料である等とする、内容について(189件)、ただち に実行・実現するのみ等とする、実現について(188件)、言葉の分かりにくさの指摘等の、編集について(126件)等が挙げられている。

{6}その他、自由な意見について(問20)
 その他の意見として、449人から延べ463件の回答が寄せられ、その内容を分類すると、一人一人の意識改革が必要であるなど、教育やPRの必要性に関するもの(118件)、国・自治体、産業界、市民が協力して取組むことや次世代まで残さずに解決 をする必要性など、今後の取組みに関するもの(82件)、さらなる環境保全への取組み強化など、環境・資源に関するもの(53件)等が挙げられている。

3.今後の対応

 環境庁としては、本アンケートの調査結果を一般住民の意識等としてとらえ、廃棄物・リサイクル対策をさらに進めるための検討を継続することとしている。

 

添付資料

連絡先
環境庁水質保全局海洋環境・廃棄物対策室
室 長:太田  進(内6620)
 担 当:鮎川 智一(内6627)

環境庁長官官房総務課環境調査管室
上席環境調査官:鶴田 唯夫(内6142)
 担 当:白井 邦彦(内6145)