報道発表資料

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1999年10月19日

平成10年度地方公共団体等における有害大気汚染物質モニタリング調査結果について

平成9年4月に施行された改正大気汚染防止法に基づき、平成9年度から地方公共団体では有害大気汚染物質の大気環境モニタリングを本格的に開始したところであるが、今般、平成10年度に地方公共団体が実施した有害大気汚染物質の大気環境モニタリング調査結果について、環境庁の調査結果と併せてとりまとめた。(ただし、ダイオキシン類(PCDDs・PCDFsを対象(注))については、平成10年度に環境庁が実施した「ダイオキシン類緊急全国一斉調査」の結果が既に公表済のため、ここではそれ以外の調査結果をとりまとめた。)
 大気汚染防止法に基づき指定物質に指定されている物質に係る測定結果の概要は以下のとおりである。
 
(単位:PCDDs・PCDFsはpg-TEQ/m3、その他はμg/m3)
 物 質 名 地点数 平均値 最小値 最大値
PCDDs・PCDFs  458  0.23  0.0   0.96
ベンゼン  292  3.3  0.2  11 
トリクロロエチレン  271  1.9  0.049  78 
テトラクロロエチレン  272  1.0  0.056  11

 PCDDs・PCDFsについて、夏期及び冬期を含め年2回以上測定した地点における測定結果を平成9年9月に設定された大気環境指針値(0.8pg-TEQ/m3)と比較すると、ほとんどの地点で指針値を下回っていた。(458地点中2地点で指針値を超過していた。)
      ベンゼンについて、月1回以上の頻度で1年間にわたって測定した地点における測定結果を平成9年2月に設定された環境基準値(3μg/m3)と比較すると、292地点中135地点について環境基準値を超過していた。
 トリクロロエチレン及びテトラクロロエチレンについては、全ての地点において環境基準値(ともに200μg/m3)を下回っていた。
 
(注)   ダイオキシン類対策特別措置法においては、ポリ塩化ジベンゾ-パラ-ジオキシン(PCDDs)及びポリ塩化ジベンゾフラン(PCDFs)にコプラナーポリ塩化ビフェニル(コプラナーPCB)を含めてダイオキシン類と呼ぶ。
 本調査結果においては、これらのうち、PCDDsとPCDFsの合計濃度についてとりまとめ、PCDDs・PCDFsと表記した。

1.概要

 大気中の濃度が低濃度であっても人が長期的に曝露された場合には健康影響が懸念される有害大気汚染物質については、環境庁において、昭和60年度からモニタリング調査を行ってきたところであるが、平成9年度から、改正大気汚染防止法に基づき、地方公共団体(都道府県・大気汚染防止法の政令市)においても本格的にモニタリングを開始したところである。

 今回、地方公共団体における平成10年度の有害大気汚染物質の大気環境モニタリングについて調査結果がまとまり、環境庁の調査結果と併せて公表することとした。

 なお、調査地点によっては、測定頻度が少なく、年平均値を算出し、環境基準等により評価できないデータもあるが、有害大気汚染物質の大気環境中の濃度を把握する上で貴重な情報となるため、これらのデータについても取り入れた上で調査結果をとりまとめた。

2.調査方法、対象物質及び測定地点数

(1)調査方法

 原則として、有害大気汚染物質モニタリング指針(平成9年2月2日制定、平成10年1月9日一部改正)及び有害大気汚染物質測定方法マニュアル(環境庁大気保全局大気規制課)に準拠して調査を実施した。

(2)対象物質

・PCDDs・PCDFs  
・揮発性有機化合物・・・・ アクリロニトリル、塩化ビニルモノマー、クロロホルム、1,2-ジクロロエタン、ジクロロメタン、テトラクロロエチレン、トリクロロエチレン、1,3-ブタジエン、ベンゼン
・アルデヒド類・・・・・・・・・ アセトアルデヒド、ホルムアルデヒド
・重金属類・・・・・・・・・・・・ 水銀及びその化合物、ニッケル化合物、ヒ素及びその化合物、ベリリウム及びその化合物、マンガン及びその化合物、クロム及びその化合物
・多環芳香族炭化水素・・ ベンゾ[a]ピレン


(3)測定地点数

 平成10年度の調査における地域分類(一般環境、発生源周辺及び沿道)別の調査地点数(環境庁及び政令市が実施した調査地点数を含む。)を都道府県・測定対象物質ごとにまとめたものを表4~6(7頁~9頁)に示す。

 測定頻度に係る条件を満たしていない地点も含め、PCDDs・PCDFsについては、一般環境、発生源周辺及び沿道を合わせて 526 地点(47都道府県)で測定が実施された。

 ベンゼンについては 397 地点(47都道府県)、トリクロロエチレンについては374 地点(47都道府県)、テトラクロロエチレンについては 371 地点(47都道府県)で測定が実施された。

3.測定値の評価について

 長期曝露による健康リスクが懸念されている有害大気汚染物質のモニタリングに おいては、原則として月1回以上の頻度で測定を実施し、年平均濃度を求めることとしている。(PCDDs・PCDFsについては、季節ごとに測定することが望ましいが、少なくとも夏期及び冬期に測定する必要があるとしている。)また、ベンゼン、トリクロロエチレン及びテトラクロロエチレンに係る大気環境基準や、PCDDs・PCDFsに係る大気環境指針も年平均値として示されているところである。

 しかしながら、必要とされる頻度で測定を実施できなかった地方公共団体もあることから、全ての測定結果について年平均濃度を算出し、評価をすることは困難である。

 このため、今回のとりまとめにおいて、別添の個別測定地点の調査結果表の平均値の欄には、当該測定地点における複数回の測定結果の算術平均値を記載したが、調査地点によっては、必要とされる測定頻度の測定を実施していない場合もあることから、大気環境基準値や大気環境指針値との直接的な比較はできないものもあることに留意する必要がある。

4.調査結果の要点

(1)PCDDs・PCDFs

 PCDDs・PCDFsには多数の異性体が存在しており、その毒性の評価に当たっては、これらの中で最も毒性が強いといわれている 2,3,7,8-テトラクロロジベンゾ-p-ジオキシン( 2,3,7,8-TCDD )の毒性を1としたときの他の異性体の相対的な毒性を毒性等価係数( TEF )で示し、その上で 2,3,7,8-TCDD の等量濃度( TEQ )として換算し、評価するのが一般的である。(今回のとりまとめにおいては、I-TEF(1988)を用いて、測定結果を評価した。)

 今回とりまとめた測定地点のうち、夏期及び冬期を含め年2回以上測定した地点数は、一般環境では 414 地点中 381 地点、発生源周辺では 96 地点中 61 地点、沿道では 16 地点中 16 地点であり、全体としては 526 地点中 458 地点であった。(平成10年度ダイオキシン類緊急全国一斉調査結果(環境庁実施)は除く。)

 PCDDs・PCDFsの濃度については下表のとおりであった。(表1、7、8、図1~3参照)

 測定頻度に係る条件を満たしている地点の測定結果を平成9年9月に設定された大気環境指針値と比較すると、一般環境について 381 地点中 2 地点で指針値を超過、発生源周辺 61 地点及び沿道 16 地点についてはいずれも指針値以下であり、合計すると、458 地点中 2 地点で指針値を超過していた。

 なお、測定頻度に係る条件を満たしていない地点も含め、今回とりまとめた全ての地点のデータについてまとめた値を表1の中の括弧内に示したが、これらのデータについては、大気環境指針値との直接的な比較はできないものもあることに留意する必要がある。

 また、環境庁においては、全国的なダイオキシン類による汚染実態を把握するため、平成10年度に全国約400地点において大気、水、土壌、底質等の調査を実施し、その結果を平成11年9月24日に公表したところである。この調査を含め、平成9年度と平成10年度に継続して調査を実施した地点におけるPCDDs・PCDFs濃度の推移を表8及び図2に示す。

 平成9年度と平成10年度に環境庁及び地方公共団体において、継続して調査を実施した地点は52地点あり、これらの地点における平成10年度のPCDDs・PCDFs濃度の平均値は、平成9年度の 0.56 pg-TEQ/m3 に比べ約 45 %減少し、0.31 pg-TEQ/m3であった。

(注)1pg(ピコグラム)は1兆分の1g(グラム)

(参考) ダイオキシン類の指針となる大気環境濃度として、中央環境審議会答申を受け、年平均値 0.8 pg-TEQ/m3 以下(大気環境指針値)と平成9年9月に設定。


(2)ベンゼン

 原則として月1回以上の頻度で1年間にわたって測定することとしている。平成10年度は平成9年度に比べ、この条件を満たしている地点が大幅に増加した。

 今回とりまとめた測定地点のうち、月1回以上の頻度で1年間にわたって測定した地点数は、一般環境では 237 地点中 174 地点、発生源周辺では 76 地点中 58 地点、沿道では 84 地点中 60 地点であり、全体として 397 地点中 292 地点であった。
 ベンゼンの濃度については下表のとおりであった。(表2、図4参照)

 測定頻度に係る条件を満たしている地点の測定結果を平成9年2月に設定された大気環境基準値と比較すると、一般環境について 174 地点中 68 地点で、発生源周辺について 58 地点中 22 地点で、沿道について 60 地点中 45 地点で環境基準値を超過しており、合計すると 292 地点中 135 地点で環境基準値を超過していた。

 なお、測定頻度に係る条件を満たしていない地点も含め、今回とりまとめた全ての地点のデータについてまとめた値を表2の中の括弧内に示したが、これらのデータについては、大気環境基準値との直接的な比較はできないものもあることに留意する必要がある。

(3)トリクロロエチレン及びテトラクロロエチレン

 ベンゼンと同様に、平成9年度に比べ、測定頻度に係る条件を満たしている地点が 大幅に増加した。

 トリクロロエチレンについて、月1回以上の頻度で1年間にわたって測定した地点数は、一般環境では 237 地点中 172 地点、発生源周辺では 81 地点中 61 地点、沿道では 56 地点中 38 地点であり、全体として 374 地点中 271 地点であった。

 テトラクロロエチレンについて、月1回以上の頻度で1年間にわたって測定した地点数は、一般環境では 236 地点中 174 地点、発生源周辺では 79 地点中 61 地点、沿道では 56 地点中 37 地点であり、全体として 371 地点中 272 地点であった。

 トリクロロエチレン及びテトラクロロエチレンの濃度については下表のとおりであった。(表3、図5、6参照)

 平成9年2月に設定された大気環境基準値と比較すると、トリクロロエチレン及びテトラクロロエチレンについては、全ての地点で環境基準値を下回っていた。

 なお、測定頻度に係る条件を満たしていない地点も含め、今回とりまとめた全ての地点のデータについてまとめた値を表3の中の括弧内に示したが、これらのデータについては、大気環境基準値との直接的な比較はできないものもあることに留意する必要がある。

(注)1μg(マイクログラム)は100万分の1g

(参考) ベンゼンの環境基準は、年平均値 3 μg/m3以下
トリクロロエチレン及びテトラクロロエチレンの環境基準は、それぞれ年平均値 200 μg/m3以下


5.今後の対応

 有害大気汚染物質の大気環境モニタリングについては、大気汚染防止法に基づき、国及び地方公共団体が調査の実施に努めることとされており、地方公共団体においても現在本格的な調査が実施されているところである。

 また、ダイオキシン類については、平成11年7月に公布された「ダイオキシン類対策特別措置法」(公布後6ヶ月以内に施行)において、都道府県知事等は、ダイオキシン類による汚染の状況を常時監視しなければならないこととされている。

 環境庁としては、今後とも、有害大気汚染物質の大気環境モニタリングの充実を図るとともに、有害大気汚染物質による大気汚染の健康リスク評価を行い、対策の推進に役立てていくこととしている。

 


(参考1)

 

毒性等価換算濃度(TEQ)について


 今回のとりまとめにあたり、PCDDs・PCDFsの濃度については、測定により得られるダイオキシン類の各異性体の濃度値に国際毒性等価係数(I-TEF;International Toxicity Equivalen-cy Factor;表参照)を乗じて、毒性等価換算濃度(TEQ;Toxicity Equivalency Quantity)により表した。


表 PCDDs・PCDFs に関する国際毒性等価係数

PCDD異性体 I-TEF PCDF異性体 I-TEF
2,3,7,8-TCDD  1 2,3,7,8-TCDF  0.1
1,2,3,7,8-PCDD  0.5 1,2,3,7,8-PCDF  0.05
2,3,4,7,8-PCDF  0.5
1,2,3,4,7,8-HCDD  0.1 1,2,3,4,7,8-HCDF  0.1
1,2,3,6,7,8-HCDD  0.1 1,2,3,6,7,8-HCDF  0.1
1,2,3,7,8,9-HCDD  0.1 1,2,3,7,8,9-HCDF  0.1
2,3,4,6,7,8-HCDF  0.1
1,2,3,4,6,7,8-HCDD  0.01 1,2,3,4,6,7,8-HCDF  0.01
1,2,3,4,7,8,9-HCDF  0.01
OCDD  0.001 OCDF  0.001
その他のPCDD  0 その他のPCDF  0

添付資料

連絡先
環境庁大気保全局大気規制課
課 長 :仁井 正夫(内6530)
 補 佐 :柳橋 泰生(内6532)

環境庁大気保全局大気規制課
課 長 :松本 和良(内6550)
 補 佐 :印南 朋浩(内6551)