報道発表資料

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1999年03月31日

天敵農薬環境影響調査検討会報告書の公表について(天敵農薬に係る環境影響評価ガイドライン)

1)環境庁では、天敵農薬(害虫や雑草の防除を目的として放飼する昆虫等の生物) の導入による在来生物や生態系への有害な影響を防止する観点から、平成8年7月 より「天敵農薬環境影響調査検討会」(座長:岡田斉夫 生物系特定産業研究機構研 究開発業務プロジェクトリーダー)において、天敵農薬が環境に与える影響の評価 に関する検討を進めてきた。

2)今般、天敵農薬の導入に先だち、生態学的影響を事前評価するためのガイドラ インを含む検討会報告をとりまとめた。

3)今後、農林水産省と連携し、専門家による検討の場を設置し、個別の天敵農薬 の環境影響評価を開始する予定。

[1]経緯

 天敵農薬とは、害虫や雑草の防除を目的として放飼する生物(昆虫類)のことである。
 最近、我が国でも無農薬や減農薬の農産物に対する需要が高まり、環境保全型農業の推進とともに、害虫や雑草の防除に天敵農薬を積極的に利用していくための条件が整備さ れてきたことから、今後天敵農薬の利用は増加するものと考えられている。
 天敵農薬は、化学合成農薬のように、散布した作業者の曝露、作物残留や水質汚濁のおそれはないものの、天敵農薬自体が生きた生物であり、増殖性と移動性を有することから 、特に海外や生態系の異なる地域から導入した場合に、野生生物や生態系等に有害な環境影響を及ぼす可能性がある。
 このため、環境庁では、平成8年度から天敵農薬環境影響調査を開始し、天敵農薬の国内外における利用状況、導入生物による環境影響の事例と内容を解析し、環境影響評価の 考え方等について検討を進めてきた。
 今般、検討成果をとりまとめ、その中で、天敵農薬に係る環境影響評価ガイドラインを作成したところである。

[2]検討会報告書の概要

 (1) 環境への影響の実例
 外国では島嶼部等において海外からの移入種の導入により在来生物が影響を受けた事例があったが、我が国では、放飼の規模が小さいこと等もあり、現在のところ天敵農薬によ る生態学的影響はみられていない。
 (2) 天敵生物の環境影響評価法
 天敵生物の事前評価(ガイドライン)においては、天敵の定着性と、非標的生物や生態系への有害影響に関して得られる情報を基に実際に有害な影響を生じる可能性があるか否 かを検討する。また、天敵農薬のリスク・便益のうち可能な部分については定量的評価を行いつつ、それ以外の部分については定性的な分析を行う。
 (3) 環境影響評価体系の確立
 個々の天敵生物の環境影響評価については、学識経験者等の専門家グループによる評価の仕組みを導入すべきである。
 (4) 天敵農薬放飼後のモニタリング等の実施
 官民の役割分担の下、必要に応じて放飼した天敵農薬に関するモニタリング調査等を実施し、事前評価の結果を検証する。

[3]天敵農薬に係る環境影響評価ガイドライン

 (1) 個別の天敵農薬について放飼地域における定着性の有無と元々生息している生物への影響(寄生・捕食、競争、交雑)の可能性に着目し、国内外の文献や野外観察等に基づき 、天敵農薬による生態学的影響の分析を行った上で、天敵農薬に係る環境影響の有無等を事前評価する。なお、情報等が不十分な場合には必要な補完試験を行い、その試験結果をも踏まえ、環境影響評価を行う。
 (2) さらに、補完調査でも影響の有無等が不明な天敵農薬については、リスク・便益分析を行い、便益が相対的に高いものを条件付き(実際の使用条件下で放飼した場合のモニタ リングを実施)で放飼する。

[4]今後の取組み

 環境庁では、今後、農林水産省と連携して、専門家による検討の場を設置し、個別の天敵農薬の環境影響評価を開始する予定である。また、必要に応じてモニタリングを行うこ ととしており、都道府県等に協力を要請したいと考えている。

「天敵農薬環境影響調査検討会報告書- 天敵農薬に係る環境影響評価ガイドライン -」

連絡先
環境庁水質保全局土壌農薬課
課長   西尾 健 (6650)
 課長補佐 有田 洋一(6651)
 専門官  広瀬 誠 (6656)