報道発表資料

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2014年10月27日
  • 地球環境

強化された行動のためのダーバン・プラットフォーム特別作業部会 第2回会合第6セッション(ADP2-6)(結果概要)について

10月20日~25日,ドイツ・ボンにおいて,国連気候変動枠組条約の下の「強化された行動のためのダーバン・プラットフォーム特別作業部会(ADP)」第2回会合第6セッションが行われたところ,概要は以下のとおり。我が国から,外務・経済産業・環境・農林水産・国土交通各省関係者が出席した。

(注)ADPは,2011年末に南アフリカ・ダーバンで開催された第17回気候変動枠組条約締約国会議(COP17)での決定を受け設置されたもの。(1)全ての国に適用される2020年以降の新しい法的枠組み(以下「新たな枠組み」という。)の2015年までの採択(ワークストリーム1)及び(2)2020年までの緩和の野心の向上(ワークストリーム2)について議論を行う。

日時・場所

2014年10月20日(月)~25日(土) 

於:ワールド・カンファレンス・センター(ドイツ・ボン)

概要

1.新たな枠組みについての議論(ワークストリーム1)

 過去の決定に基づき,新たな枠組みの交渉テキスト案を2015年5月より前に作成することを目指し,新たな枠組みの要素をCOP20までに検討すること,及び2015年のCOP21に十分先立って(準備のできる国は2015年第1四半期までに)提出を招請されている約束草案を提出する際に示す情報をCOP20までに特定すること,が求められている。

(1)新たな枠組みの要素

 本年7月に共同議長から提示された,COP17決定が言及する緩和,適応,資金,キャパシティ・ビルディング,技術,行動と支援の透明性の各要素について,各国の主張を俯瞰できる文書(ノンペーパー)を踏まえて議論された。

 先進国は,交渉テキスト案の作成に向けて,新たな枠組みのコアとなる合意と関連するCOP決定にそれぞれどのような内容を含めるべきかという観点を踏まえて議論した。これに対し,途上国は,先進国による率先した緩和への取組と,先進国による資金をはじめとする実施手段の供与が不可欠である等を主張し,これらの要素を新たな枠組みで位置づけるよう求めた。また,一部の途上国は,適応及び実施手段についての世界全体の定量的な目標を設定し,先進国はこれに基づき実施手段を供与すべきと主張した。一方,先進国は,民間資金も含め時代の変化に即した新たな実施手段の確保等を主張した。

 また,約束草案のサイクルについては,長期のシグナルを投資家に送るため10年にすべきと主張する国,長期間野心を低いまま固定しないため5年にすべきと主張する国とで分かれ,いくつかの国から両者を共存させるため,5年ごとのレビューを行う案や2025年の目標とともに2030年の暫定的な目標を提出する案等が提示された。

 今後については,今次会合の議論を踏まえ,共同議長がノンペーパーを更新して提示することとなった。

(2)約束草案に関するCOP決定案

 共同議長から7月に提示されたCOP決定案を踏まえて,約束草案の対象,盛り込まれるべき情報等が議論された。

 前回会合に引き続き約束草案の対象範囲(対象を緩和のみに絞るか,適応や実施手段の供与等の緩和以外の要素も含めるか)が主な争点になった。7月に提示されたCOP決定案では,約束草案に盛り込むべき情報を列記した別添に適応や実施手段の供与等に関する情報も含まれていたのに対して,緩和に限定すべきという国(先進国及び一部の途上国),緩和を含めることは義務であるが,その他の要素は任意とする提案を行う国,全ての要素は等しく約束草案に含まれるべきという国等,様々な意見があった。こうした議論を踏まえ,会合終盤に共同議長からCOP決定案の改訂版が示された。当該改訂版では,約束草案の対象範囲は各国が自ら決定すること,ただし,緩和は必ず含めるべきであることとされ,別添の情報は考慮すべき補完的な情報との位置づけが提案された。

 今後については,上記改訂版に基づき,リマでの採択を念頭に置いて引き続き議論されることとなった。

(3)我が国の立場

 我が国は,新たな枠組みは全ての国が参加する公平かつ実効的なものであるべき,約束草案の中心は緩和である,新たな枠組みにおいて各国は?定量化可能な約束草案の提出,?約束草案達成に向けた対策措置の実施,?実施状況のレビューを受けることについて義務を負うべき,約束草案の終了年を2030年とする10年間のサイクルを支持する等と主張した。また,適応は重要であるが,約束草案で扱うのではなく,適応の要素を国家計画や開発のプロセスに統合することをコアとなる合意に含むべき,資金・技術・キャパシティ・ビルディングへの支援は新たな枠組みの要素であるが,コアとなる合意ではなく,関連するCOP決定で扱うべき等を主張した。

2.2020年までの緩和の野心向上(ワークストリーム2:WS2)

(1)WS2に関するCOP決定案

 今後のWS2のあり方について,7月に共同議長が提示した決定案に基づき議論が行われた。技術専門家会合(TEM)が有益な取組であり2015年も継続すべきという点については広く共通認識が見られ,小島嶼国連合(AOSIS:Alliance of Small Island States)を含む多くの締約国からTEMを強化するための提案が示された。これに対し,一部の途上国は,先進国がバリ行動計画の実施に関する取組の強化・報告を行うこと,適応や資金等についてもTEMを行うことを求めた。

 我が国を含む先進国は,これらの主張はWS2のマンデートを超えており,既存の取組と重複することから適切でない旨指摘した。今次会合での議論を踏まえ共同議長から,TEMと気候変動枠組条約の下の既存の機関等との連携,ハイレベルの関与,TEMの結果のウェブ等を活用した共有等の取組を含む,COP決定案の改訂版が示され,引き続き議論されることとなった。

(2)技術専門家会合(TEM)

前回会合に引き続き,TEMが開催され,非二酸化炭素温室効果ガス及び二酸化炭素回収・貯留(CCS)が取り上げられた。各国・国際機関・研究組織等の取組について紹介・意見交換が行われ,我が国からは,日本冷凍空調工業会が,2014年通常国会において改正された「フロン類の使用の合理化及び管理の適正化に関する法律」に基づく代替フロン対策への取組について紹介した。この他,これまで行われた再生可能エネルギー・エネルギー効率,都市環境,土地利用に関するTEMのフォローアップが行われ,今後のTEMのあり方につき議論された。

3.我が国の立場等に関する説明

(1)二国間・多国間の会談

 会合期間中,米国,韓国,ニュージーランド,英国,EU,ブラジル,小島嶼国等との会談を行い,今後のADPプロセスの進め方等について意見交換を行った。いくつかの国からは,日本の置かれている状況に理解を示しつつも,約束草案に関して早期提出を期待する旨発言があった。

(2)ステークホルダーとの対話

 会合期間中,国内外のNGOと意見交換を行った。

(3)プレスへの説明

 会合期間中,邦人記者に対するブリーフを行い,交渉の状況や我が国の立場について説明した。

4.その他

 会合期間中,気候変動枠組条約事務局による約束草案の策定支援に関するブリーフィングが開催され,我が国から,アジアにおける温室効果ガスインベントリ整備に関するワークショップ(WGIA)等のアジア太平洋地域を中心とした約束草案策定支援の事例を紹介した。

5. 今後のADP交渉予定

 次回会合はCOP20期間中の12月1日から12日に開催され,議論が再開される予定。なお,2015年については,通常の6月,12月に加えて,2月8日~13日と秋に少なくとも2回のADP追加会合が開催されることになった。

連絡先
環境省地球環境局国際地球温暖化対策室
代表:03-3581-3351 直通:03-5521-8330
室   長:大井 通博
室長補佐:増田 大美
担   当:東  実希