報道発表資料
本日、環境庁は、京極発電所他計6件の発電所立地計画について、環境影響評価法 /電気事業法(注)に基づく環境庁長官意見を通産省に提出した。意見の主な内容は、 以下のとおり。
I .京極発電所(北海道京極町)
生態系についての予測・評価の実施、計画地周辺の湿原の保全や下流河川への
放流水の適切なモニタリング等
II.松浦発電所2号機(長崎県松浦市)
施設の維持管理の徹底や微量物質の監視による大気汚染対策、温排水の適切な
モニタリング、二酸化炭素の排出抑制対策等
III .泊発電所3号機(北海道泊村)
海域工事中の濁りの防止、温排水の適切なモニタリング、事業着工に至るまでの
環境の状況の把握等
IV.島根原子力発電所3号機(島根県鹿島町)
人工リーフ設置による環境への影響の予測・評価、温排水の適切な
モニタリング、事業着工に至るまでの環境の状況の把握等
V .新日本製鐵(株)大分製鐵発電所(大分県大分市)
隣接する大分共同火力を含めた大気質への影響の予測・評価、降下ばいじんの
低減のための適切な監視と対策の実施、二酸化炭素の排出抑制対策等
VI.日石三菱精製(株)根岸製油所ガス化複合発電所(神奈川県横浜市)
既設製油所を含めて大気汚染物質を現状以下とするための運転管理の徹底、
二酸化炭素の排出抑制対策、冷却塔蒸気の白煙化の監視等
今後、通産省は、環境庁長官意見を勘案して事業者に対し勧告を行い、事業者は、 これらを踏まえて環境影響評価書を作成することになる。
(注)環境影響評価法の対象事業の一つである発電所は、環境影響評価法の一般則に従い 環境影響評価が行われるとともに、電気事業法において手続の各段階で国が関与 する特例が設けられている。
I.京極(きょうごく)発電所
〔概要〕
事業者 | 北海道電力(株) | 最大出力 | 20万kW×3 (60万kW) |
計画位置 | 北海道虻田郡京極町 | 発電方式 | 水力(揚水式) |
流域面積 | 約51.3km2 | 運転開始 | 1号機:平成18年10月 2、3号機:平成21年度以降 |
〔環境庁長官意見の内容〕
1. | 上部調整池周辺の湿原について、表流水の確保のために講じる措置の具体的な内容を 評価書に記載するとともに、当該措置を適切に行うことにより、その保全を図る こと。また、計画地の変更に至ったこれまでの検討の状況についても評価書に 記載すること。 | |
2. | 下部調整池の初期湛水時における下流河川への放流量については、学識経験者の 助言を得つつ、関係機関と協議の上、河川の水質及び水生生物の生息環境の保全に 留意したものとすること。また、下流河川への放流水について、水温の測定と ともに、水生生物についても適切な調査を行うことにより、影響予測の妥当性を 確認すること。さらに、これらの措置について評価書に記載すること。 | |
3. | 計画地及びその周辺は貴重種を含む多様な動植物の生息・生育地となっていること から、上部調整池周辺の湿原における生態系を含め「地域を特徴づける生態系」に ついて現在の知見を基に予測・評価を行い、その結果を評価書に記載すること。 | |
4. | 計画地及びその周辺において、クマタカ、オオタカ等の猛禽類の飛翔が数多く 確認されており、当該地域を行動圏の一部として利用している。また、クマゲラに ついては、計画地周辺において、営巣木や多数の採餌木が確認されている。 このため、事業の実施に当たっては、以下に掲げる措置を講じ、その生息環境の 保全に配慮すること。 | |
(1) | 工事中のモニタリングの結果に基づき、生息環境の保全について関係機関と十分な 調整の上、必要に応じ適切な対策を講じること。また、モニタリングの実施方法を 含めて、これら対策の検討に当たっては、専門家等の指導・助言を得るとともに、 モニタリングの結果及び講じた対策について密猟等のおそれのない範囲で公表する こと。さらに、これらの措置の具体的内容について、評価書に記載すること。 | |
(2) | 事業者が実施した猛禽類及びクマゲラに関する調査の概要(調査期間、調査内容等) について、密猟等のおそれのない範囲で、評価書に記載すること。 |
II.松浦(まつうら)発電所2号機
〔概要〕
事業者 | 九州電力(株) | 最大出力 | 100万kW |
計画位置 | 長崎県松浦市 | 発電方式 | 汽力 (ボイラー・タービン方式) |
用 地 |
約5ha |
運転開始 | 平成17年7月 |
燃 料 | 石炭 約217t /年 |
〔環境庁長官意見の内容〕
1. | 本事業は、既設の大規模石炭火力発電所に隣接して石炭火力発電所を設置するものであり、大気環境への負荷が増大することから、大気質への影響を可能な限り回避又は 低減するため、施設の維持管理を徹底するとともに、以下の措置を講じること。また、当該措置について評価書に記載すること。 | |
(1) |
既設の1号機との稼働分担については、運用に支障のない範囲で極力ばい煙排出量が低減されるよう設定すること。 | |
(2) | 石炭利用に伴い発生する可能性のある重金属等微量物質について、運転開始直後及び使用石炭種に大幅な変更があった場合には、発生源での監視を行うとともに、 関係機関と協力しつつ環境監視を行うこと。また、屋外貯炭場を使用することから、降下ばいじんについても、同様に環境監視を行うこと。 | |
2. | 道路交通騒音に関しては、本年4月より施行された騒音に係る環境基準を踏まえ、等価騒音レベルによる調査、予測、評価を行うとともに、その結果を評価書に 記載すること。 | |
3. | 計画地の前面海域である伊万里湾は閉鎖性が高いことから、発電所の取放水による水質及び海生生物への影響について慎重な配慮が必要である。このため、周辺海域の 水温、水質及び海生生物の監視において、発電所の運転状況を考慮しつつ、取放水量、水温の変化と水質及び海生生物の状況との関係について検討することに より、影響予測の妥当性を確認し、必要に応じて適切な対策を講じること。また、温排水の有効利用について引き続き検討するとともに、これらの措置について評価書 に記載すること。 | |
4. | 本計画により多量の二酸化炭素が排出されることから、二酸化炭素による影響をできる限り回避又は低減するための措置として、事業者による発電熱効率が高い 火力発電所の優先的運用に加え、電気自動車等低公害車や太陽光発電等の新エネルギーの積極的な導入を位置づけ、評価書に記載すること。 | |
5. | 石炭灰の利用先の拡大を図ることにより埋立処分量の削減を図るとともに、可能な限り早期に石炭灰の全量を有効利用すること。また、これらの措置について評価書に 記載すること。 |
III.泊(とまり)発電所3号機
〔概要〕
事業者 | 北海道電力(株) | 最大出力 | 91.2万kW |
計画位置 | 北海道古宇郡泊村 | 発電方式 | 原子力(加圧水型軽水炉) |
発電所全体で約 135 ha | 運転開始 | 平成20年10月 | |
用 地 | 低濃縮ウラン 約19t/年 |
〔環境庁長官意見の内容〕
1. | 土捨場への残土の運搬方法等の変更について、変更に至ったこれまでの検討状況を、当初の計画との比較検討が可能な形で評価書に記載すること。 |
2. | 海域での工事により付加される濁りが10mg/l以上となる場合には、汚濁防止膜の設置等所要の対策を講じること。また、その旨、評価書に記載すること。 |
3. | 周辺海域の水温、水質及び海生生物の監視において、発電所の運転状況を考慮しつつ、取放水量、水温の変化と水質及び海生生物の状況との関係について 検討することにより、影響予測の妥当性を確認し、必要に応じて適切な対策を講じること。また、温排水の有効利用について引き続き検討するとともに、 これらの措置について評価書に記載すること。 |
4. | 事業者が実施した猛禽類に関する調査の概要(調査期間、調査内容等)について、生息環境の保全に支障のない範囲で、評価書に記載すること。また、土捨場付近の 堀株川河口域はミサゴの主要な採餌場の一つであることから、工事車両等による騒音の低減や河口側への仮設の仕切壁の設置等事業者が講じる措置について、評価書 に記載すること。 |
5. | 本計画については、事業の着工時期が未定であることから、着工に至るまでの期間において、事業実施区域及びその周囲の環境の状況について関係地方公共団体が有する 資料等により把握し、環境の状況が変化している等の場合においては、所要の検討を行い、必要に応じて適切な対策を講じること。また、その旨、評価書に記載すること。 |
IV.島根原子力発電所3号機
〔概要〕
事業者 | 中国電力(株) | 最大出力 | 137.3 万kW |
計画位置 | 島根県八束郡鹿島町 | 発電方式 |
原子力 (改良型沸騰水型軽水炉) |
用 地 | 発電所全体で約 230 ha | 運転開始 | 平成21年4月 |
燃 料 | 低濃縮ウラン約25t/年 |
〔環境庁長官意見の内容〕
1. | 海域での工事により付加される濁りが10mg/l以上となる場合には、汚濁防止膜の設置等所要の対策を講じること。また、その旨、評価書に記載すること。 |
2. | 周辺海域の水温、水質及び海生生物の監視において、発電所の運転状況を考慮しつつ、取放水量、水温の変化と水質及び海生生物の状況との関係について 検討することにより、影響予測の妥当性を確認し、必要に応じて適切な対策を講じること。また、その旨、評価書に記載すること。 |
3. | 防波護岸前面での人工リーフ設置による環境への影響について、予測・評価を行うとともに、その結果を評価書に記載すること。また、人工リーフにおける海藻草類等の 生育について事後調査を行い、必要に応じて適切な対策を講じるとともに、これらの措置について評価書に記載すること。 |
4. | 本計画については、事業の着工時期が未定であることから、着工に至るまでの期間において、事業実施区域及びその周囲の環境の状況について関係地方公共団体が有する 資料等により把握し、環境の状況が変化している等の場合においては、所要の検討を行い、必要に応じて適切な対策を講じること。また、その旨、評価書に 記載すること。 |
V.新日本製鐵(株)大分製鐵発電所
〔概要〕
事業者 | 新日本製鐵(株) | 最大出力 | 33万kW |
計画位置 | 大分県大分市 | 発電方式 |
汽力 |
用 地 | 約 2.9 ha (製鐵所全体で約699ha) |
運転開始 | 平成14年4月 |
燃 料 | 石炭 約40万t/年 ミックスガス 約10億9千万m3N/年 コークス炉ガス 約430万m3N/年 |
〔環境庁長官意見の内容〕
1. | 本事業は、市街地に隣接する製鉄所内での火力発電所の新設であり、環境負荷の高い 石炭を燃料として使用することから、施設の維持管理を徹底するとともに、以下の ばい煙排出抑制に係る措置を講じること。また、これらの措置について評価書に記載 すること。 | |
(1) |
既設の1号機との稼働分担については、運用に支障のない範囲で極力ばい煙排出量が低減されるよう設定すること。 | |
(2) | 石炭利用に伴い発生する可能性のある重金属等微量物質について、運転開始直後及び使用石炭種に大幅な変更があった場合には、発生源での監視を行うとともに、 関係機関と協力しつつ環境監視を行うこと。また、屋外貯炭場を使用することから、降下ばいじんについても、同様に環境監視を行うこと。 | |
2. | 計画地周辺の市街地において、降下ばいじん量が比較的高い値である上、近年悪化 傾向にあり、周辺市民からの苦情も発生している。こうした状況において、
本事業は石炭を燃料として用い、貯炭を屋外において行うことから、降下ばいじん 発生量の低減について十分な検討が必要である。 このため、既設製鉄所を含めた各ばいじん及び粉じん発生源に起因する降下ばいじん 発生量の把握に努めるとともに、既設製鉄所において実施する対策の効果を定量的に 評価すること。また、発電所の運転開始前後に、関係機関と協力しつつ、敷地境界 及び背後地における降下ばいじん量の測定を行うとともに、背後地において県の 定めた降下ばいじん量の目安値を越えるおそれがある場合には、既設製鉄所及び 新設発電所の貯炭の状況や施設の稼働状況等を考慮して原因を究明し、関係機関と 協力しつつ、適切な対策を講じること。 さらに、上記の措置について、評価書に記載すること。 |
|
3. |
上記の措置を含めた監視結果及び発電所の運転情報について、住民への情報提供を 適切に行うことを評価書に記載すること。 |
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4. | 道路交通騒音に関しては、本年4月より施行された騒音に係る環境基準を踏まえ、 等価騒音レベルによる調査、予測、評価を行うとともに、その結果を評価書に 記載すること。 | |
5. | 計画地の前面海域は、閉鎖性が高く一部で水質環境基準を超過している瀬戸内海で あることから、発電所の取放水による水質及び海生生物への影響について、慎重な 検討が必要である。このため、周辺海域の水温、水質及び海生生物の監視において、 発電設備の運転状況を考慮しつつ、取放水量、水温の変化と水質及び海生生物の状況 との関係について検討することにより、影響予測の妥当性を確認し、必要に応じて 適切な対策を講じること。また、温排水の有効利用について引き続き検討すると ともに、これらの措置について評価書に記載すること。 | |
6. | 燃料として副生ガスの他に石炭を利用することにより多量の二酸化炭素が排出される ことから、二酸化炭素による影響をできる限り回避又は低減するため、発電所に おける対策に加えて、省エネルギー設備の設置や操業改善等により既設製鉄所に おけるエネルギー効率を改善し、製鉄所から発生する二酸化炭素排出量を現状より 削減する措置について評価書に記載すること。 |
VI.日石三菱精製(株)根岸製油所ガス化複合発電所
〔概要〕
事業者 | 日石三菱精製(株) | 最大出力 | 43.145万kW |
計画位置 | 神奈川県横浜市中区 | 発電方式 | ガス化複合発電方式 |
用 地 | 約 3.4 ha (製油所全体で約222ha) |
運転開始 | 平成15年6月 |
燃 料 | 超重質油 約60万kl /年 |
〔環境庁長官意見の内容〕
本事業は、環境汚染が依然改善されていない大都市地域に設置される発電所であり、 周辺の環境に影響を及ぼすことがないよう環境保全対策について万全を期すことが 求められる。こうした観点から、当該事業に対し下記の意見を述べるものである。
記
1. | 周辺地域においては、二酸化窒素及び浮遊粒子状物質に係る環境基準を達成して おらず、大気汚染防止法の窒素酸化物及び硫黄酸化物に係る総量規制地域及び 自動車NOx法の特定地域に指定されている。このような地域において行われる 本事業については、大気環境への負荷を可能な限り低減する必要があることから、 以下の措置を講じるとともに、当該措置について評価書へ記載すること。 | |
(1) | 既設製油所を含めたばい煙年間総排出量を実績ベースで現状以下とするため、 既設製油所でのばい煙削減対策を確実に実施するとともに、発電所から排出される ばい煙について、年平均の排出目標濃度を設定し、それに基づく運転管理を 徹底すること。 | |
(2) | 事業者が使用する車両について、既設製油所関連車両を含め、更新時の低公害車 への切替を推進すること。 | |
(3) | 我が国で稼働実績のないガス化複合発電であるため、排出ガス中のばいじんに 関し、特に運転開始直後について測定回数を追加することにより、総排出量を 的確に管理すること。また、排出ガス中及び超重質油中の重金属等微量物質に ついて適切に監視を行うこと。 | |
(4) | 計画地北側の丘陵性の台地には住宅地が位置する等の地形条件や気象条件を 考慮し、高濃度が出現した際には、関係地方公共団体の要請に迅速に対応して、 所要の措置を講じること。 | |
(5) | 監視結果を含む発電所の運転情報について、住民への情報提供を適切に行うこと。 2.地域環境の現況にかんがみ、運転開始後の浮遊粒子状物質による影響について予測、 評価を行うとともに、その結果を評価書に記載すること。 | |
3. | 道路交通騒音に関しては、本年4月より施行された騒音に係る環境基準を踏まえ、 等価騒音レベルによる調査、予測、評価を行うとともに、その結果を評価書に 記載すること。 | |
4. | 発電時に発生する二酸化炭素の影響をできる限り回避又は低減するため、発電所に おける対策に加えて、既設製油所におけるエネルギー効率の改善等により製油所全体 から発生する二酸化炭素排出量を抑制するとともに、その旨について環境影響評価書 に記載すること。 | |
5. | 復水器の冷却に使用する冷却塔からの蒸気が白煙化し、視程障害の原因となることが ないよう、発電所の試運転時や運転開始後において、特に白煙の高度が低くなる 条件下で、適切な環境監視を行うこと。これにより、予測の不確実性を補い、必要に 応じて適切な対策を講じること。また、これらの措置について評価書に記載する こと。 |
- 連絡先
- 環境庁企画調整局環境影響評価課環境影響審査室
室 長 :小林正明(内6231)
審査官 :瀧口博明(内6236)