報道発表資料

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2014年07月28日
  • 総合政策

山葵沢(わさびさわ)地熱発電所(仮称)設置計画に係る環境影響評価準備書に対する環境大臣意見の提出について(お知らせ)

環境省は、28日、秋田県で実施予定の「山葵沢地熱発電所(仮称)設置計画」(湯沢地熱株式会社)に係る環境影響評価準備書に対する環境大臣意見を経済産業大臣に提出した。
本事業は、総出力42,000kWの地熱発電設備を秋田県湯沢市に新設するもので、地熱発電所として環境影響評価法の施行後、初めての対象事業である。
このため、環境大臣意見では、一般的には、地熱発電は再生可能エネルギーの普及に資するものであるが、自然環境等の改変が最小限となるよう配慮されていなければならないとした上で、(1)生産井や還元井をできる限り長期間維持し、補充井の掘削等が最小限とすること、(2)生産井や冷却塔等からの噴気等による人及び植物への影響を監視し、影響が確認された場合には適切な措置を講じること、(3)温泉への影響を監視し、その結果を関係者と共有するとともに、影響が確認された場合には適切な措置を講じること等を求めている。

1.背景

 環境影響評価法及び電気事業法は、出力10,000kW以上の地熱発電所の設置又は変更の工事を対象事業としており、環境大臣は、事業者から提出された環境影響評価準備書(※)について、経済産業大臣からの照会に対して意見を述べることができるとされている。

 本件は、湯沢地熱株式会社の「山葵沢地熱発電所(仮称)設置計画」に係る環境影響評価準備書について、この手続に沿って意見を提出するものである。

 今後、事業者は、環境大臣及び関係自治体の長の意見を受けて作成・提出される経済産業大臣勧告を踏まえ、法に基づく環境影響評価書の作成等の手続が求められる。

※環境影響評価準備書:環境影響評価の結果について環境の保全の見地からの意見を聴くための準備として、調査、予測及び評価、環境保全対策の検討を実施した結果等を示し、環境の保全に関す る事業者自らの考え方を取りまとめた文書。

2.事業の概要

 本事業は、秋田県湯沢市に、総出力42,000kWの地熱発電設備を新設するものである。                                                                   

 本事業の事業実施区域の周辺には、ブナクラス域の自然植生やスギ等の植林地で覆われた森林地帯であり、トクホウサンショウウオ等の希少な両生類が生息している。また、周辺には秋ノ宮温泉郷や川原毛地獄などが存在する。

3.環境大臣意見の概要(詳細は別添1参照)

 環境大臣意見の概要は、以下のとおりである。なお、環境大臣意見のとりまとめに当たっては、神奈川県温泉地学研究所の板寺専門研究員から助言をいただいた。(別添2参照)

【1】総論

 本事業は、地熱発電所として環境影響評価法の施行後初めての対象事業であり、本事業により得られる知見は今後の地熱発電の普及に向けて極めて有用なものとなることが期待される。一方で、本事業による環境影響については、未だ解明されていない点もあることから、事業実施に当たっては、以下の取組を行うこと。                                                     

 ・環境監視を適切に実施し、必要に応じて、追加的な環境保全措置を講じること。                                                                        

 ・追加的な環境保全措置の具体化に当たっては、客観的かつ科学的に検討するとともに、その検討結果等を公開し、透明性及び客観性を確保すること。                             

 ・追加的な環境保全措置を講じたときは、実施結果及び措置の効果等をとりまとめ、公表すること。

【2】各論

(1)生産井及び還元井の維持管理について

 ・現在計画されている生産井及び還元井は、できる限り長期間維持し、将来の補充井の掘削や熱水輸送管の増設等が最小限となるよう必要な措置を講じること。

(2)冷却塔等から排出される硫化水素による影響対策について

 ・生産井等の運用の一環で、硫化水素の大気環境への放出が想定される場合は、あらかじめ濃度レベルを予測し、影響を減じる措置を講じること。また、観光利用が行われている地域特性に配慮して実施時期や時間帯の調整を行うこと。さらに、人体に影響を及ぼす濃度が確認された場合には、速やかに濃度低下の措置を講じること。

 ・硫化水素による植生等への影響についても環境監視を実施し、影響が確認された場合には、速やかにその影響を調査し、影響の回避・低減のための適切な措置を講じるとともに、必要に応じて、植生等の回復措置を実施すること。

(3)温泉への影響対策について

 ・温泉への影響が確認された場合には、温泉への影響を回避する適切な措置を講じること。

 ・環境監視の結果を、地元温泉関係者等に情報提供するとともに、影響が確認された場合の対応について地元関係者と協議し認識共有を図ること。

(4)冷却塔から排出される水蒸気による樹木への着氷影響対策について

 ・冷却塔から排出される水蒸気による周辺樹木の着氷影響が確認された場合には、速やかにその影響を調査し、影響の回避・低減のための適切な措置を講じるとともに、必要に応じて、植生や景観の回復措置を実施すること。

(5)植物の移植について

 ・移植した植物の維持管理に当たっては、種ごとに移植後の定着の難しさを検討し、必要に応じて、生息状況の評価方法等についても専門家等の助言を得て実施すること。

(6)夜間の坑井掘削工事の照明による野生動物への影響対策について

 ・夜間の坑井掘削工事を行うに当たっては、昆虫等野生動物の誘引の原因となる照明の漏洩を極力抑える等、適切な措置を講じること。

(7)工事用車両の通行に伴う騒音・振動による生活環境への影響対策について

 ・環境監視の結果を地元住民等に情報提供するとともに、必要に応じて、追加的な環境保全措置を講じること。

4.その他

 本件は、「発電所設置の際の環境アセスメントの迅速化等に関する連絡会議中間報告」(平成24年11月27日、環境省・経済産業省)に基づき、審査期間の短縮に取り組むこととした案件である。

[参考]

○事業概要

・名称山葵沢地熱発電所(仮称)設置計画
・事業者湯沢地熱株式会社
・計画位置秋田県湯沢市高松宇高松沢及び秋ノ宮字役内山国有林内
・出力42,000 kW

○環境影響評価手続(環境影響評価法及び電気事業法に基づく手続)

【方法書の手続】

・縦覧平成23年11月8日~平成23年12月7日(住民意見0件)
・経済産業大臣勧告平成24年3月30日

【準備書の手続】

・縦覧平成26年4月1日~平成26年5月1日(住民意見11件)
・環境大臣意見提出平成26年7月28日

添付資料

連絡先
環境省総合環境政策局環境影響審査室
室  長:神谷 洋一 (内6231)
室長補佐:長谷川敬洋 (内6233)
審 査 官:田中  準 (内6248)
担  当:具志堅洋介 (内6232)
電  話:03-3581-3351(代表)
     03-5521-8237(直通)

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