報道発表資料

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2014年04月18日
  • 総合政策

猿払村及び浜頓別町における風力発電事業に係る計画段階環境配慮書に対する環境大臣意見の提出について(お知らせ)

 環境省は、平成26年4月18日、北海道で計画されている「猿払村及び浜頓別町における風力発電事業に係る計画段階環境配慮書」(エコ・パワー株式会社)に対する環境大臣意見を経済産業大臣に提出した。
本事業は、エコ・パワー株式会社が、北海道猿払村及び浜頓別町において、最大で総出力250,000kWの風力発電設備を設置するものである。
 環境大臣意見では、5箇所の事業実施候補区域(A区域-E区域)のうち、渡り鳥の飛行経路の下になっているB区域・C区域、猛禽類の生息環境(繁殖地、生息地、餌場等)になっているE区域については、調査予測の結果、重大な環境影響が生じる場合には、事業実施候補区域の選定から除外する等、計画の見直しをすることを求めている。また、その他の区域についても、動植物類、景観、重要な地形等への影響を把握し、重大な環境影響がある地点を避けること等を求めている。

1.背景
 
環境影響評価法は、1万 kW以上の風力発電所の設置又は変更の工事を対象事業としており、環境大臣は、提出された計画段階環境配慮書(※)について、経済産業大臣からの照会に対して意見を言うことができるとされている。本件は、この手続きに沿って意見を提出するものである。
 今後、経済産業大臣から事業者であるエコ・パワー株式会社に対して、環境大臣意見を勘案した意見が述べられ、事業者は、意見の内容を検討した上で事業計画を決定し、事業段階の環境影響評価(環境影響評価方法書、準備書、評価書)を行うこととなる。

 ※計画段階環境配慮書:配置・構造又は位置・規模に係る事業の計画段階において、重大な環境影響の回避・低減についての評価を記載した文書。

2.事業の概要
 本事業は、エコ・パワー株式会社が、北海道猿払村及び浜頓別町において5箇所の事業実施候補区域(A区域―E区域)を設定し、最大で総出力250,000kWの風力発電設備を設置するもの。
 事業実施想定区域は、ラムサール条約に基づく湿地であるクッチャロ湖をはじめ湿原が広がる自然環境保全上、重要な地域であり、絶滅のおそれのある動植物種も多数生息している。特に、クッチャロ湖の北東区域(B区域、C区域)はコハクチョウ等の渡り鳥の飛行経路、E区域はオオワシやオジロワシ等が多数生息する区域である。

3.環境大臣意見の概要
(1)本事業実施想定区域において特に配慮すべき事項
 [1]A区域
 本事業の位置又は配置の決定にあたって、以下の点に配慮し、その決定に反映すること。

  • 鳥獣保護区や湿地、河川、海岸等の餌場・繁殖地等を避けるとともに、可能な限り当該地点から距離を確保すること。鳥類の渡りに関する調査及び予測を行い、その結果に対する専門家等からの意見を聴取した上で、重大な環境影響の有無を評価すること。
  • 特別天然記念物であるタンチョウや猛禽類等の鳥類の生息に関する調査及び予測を行い、その結果に対する専門家等からの意見を聴取した上で、重大な環境影響の有無を評価すること。
  • 重要な動物種の生息地の可能性がある範囲を避けるとともに、可能な限り当該範囲から距離を確保すること。また、重要な動物種に関する調査及び予測を行い、その結果に対する専門家等からの意見を聴取した上で、重大な環境影響の有無を評価すること。
  • 特定植物群落の範囲を避けるとともに、可能な限り当該範囲から距離を確保すること。また、重要な植物種に関する調査及び予測を行い、その結果に対する専門家等からの意見を聴取した上で、重大な環境影響の有無を評価すること。
  • 自然林、草地、樹林等の植生の状況を十分把握し、自然度の高い地点を避けること。
  • 景観への重大な環境影響が生じる地点は避けること。
  • 北海道自然環境保全指針による指定地域等を避けるとともに、可能な限り当該地域等から距離を確保すること。
  • 病院、学校、住居地区等への風車の影に関する影響について、必要に応じて、調査及び予測を行い、重大な環境影響の有無を評価すること。
  • 造成等の施工による生態系への一時的な影響について、必要に応じて、調査及び予測を行い、重大な環境影響の有無を評価すること。
  • 土地の改変による重大な環境影響が生じないよう配慮すること

 [2]B区域
 本事業の位置又は配置の決定にあたって、A区域に対する指摘事項(景観に関する事項を除く。)に加えて、以下の点に配慮し、その決定に反映するとともに、科学的・客観的な調査・予測・評価を行ったうえで、必要に応じて、B区域を事業実施候補区域の選定から除外する等計画の見直しをすること。

  • 鳥類の渡りの経路下を避けるとともに、可能な限り当該区域から距離を確保すること。 
  • 重要な地形の有無について確認を行い、重要な地形が存在する場合には、これらの区域を避けるとともに、可能な限り当該区域から距離を確保すること。確認に当たっては、その方法について専門家からの意見を聴取すること。

 [3]C区域
 
本事業によるラムサール条約登録湿地であるクッチャロ湖に対する影響について、本事業の実施による当該湖から別の湿地等への鳥類の渡り経路の変更の可能性の有無を含めた包括的な調査及び予測を行い、ラムサール条約に登録された湿地としてのクッチャロ湖に影響が生じないことを明らかにすること。
 
これらを前提として、本事業の位置又は配置の決定にあたって、A区域に対する指摘事項(風車の影に関する事項を除く。)に加えて、以下の点に配慮し、その決定に反映するとともに、科学的・客観的な調査・予測・評価を行ったうえで、必要に応じて、C区域を事業実施候補区域の選定から除外する等計画の見直しをすること。

  • 鳥類の渡りの経路下を避けるとともに、可能な限り当該区域から距離を確保すること。 
  • 重要な地形の有無について確認を行い、重要な地形が存在する場合には、これらの区域を避けるとともに、可能な限り当該区域から距離を確保すること。確認に当たっては、その方法について専門家からの意見を聴取すること。

 [4]D区域
 
本事業の位置又は配置の決定にあたって、A区域に対する指摘事項(風車の影に関する事項を除く。)に加えて、以下の点に配慮し、その決定に反映すること。

  • クッチャロ湖側斜面のうち鳥類の生息環境(餌場、移動経路等を含む。)を避けるとともに、可能な限りクッチャロ湖と当該区域との間の距離を確保すること。
  • 主要な眺望点からの眺望を阻害しないよう、主要な眺望点周辺を避けるとともに、可能な限り距離を確保すること。
  • 重要な地形の有無について確認を行い、重要な地形が存在する場合には、これらの区域を避けるとともに、可能な限り当該区域から距離を確保すること。確認に当たっては、その方法について専門家からの意見を聴取すること。

 [5]E区域
 
本事業の位置又は配置の決定にあたって、A区域に対する指摘事項(景観に関する事項を除く。)に加えて、以下の点に配慮し、その決定に反映するとともに、科学的・客観的な調査・予測・評価を行ったうえで、必要に応じて、E区域を事業実施候補区域の選定から除外すること等計画の見直しをすること。

  • オオワシ、オジロワシ等の海ワシ類の餌場の範囲(湿地、河川、草地、牧草地等を含む。)を調査し、それら餌場は避けるとともに、可能な限り当該区域から距離を確保すること。

2)その他
 [1]
環境保全措置の検討
 
環境保全措置の検討に当たっては、環境影響の回避・低減を優先的に検討し、代償措置を優先的に検討することがないようにすること。
 
環境保全措置を講じたとしても、なお、環境影響を回避又は低減することは困難である場合には、事業実施候補区域の変更を基本として事業計画の見直しを行い、本事業の構造・配置又は位置・規模の決定に反映すること。

 [2]累積的な影響
 
事業実施候補区域の周辺には、既に他事業者による風力発電設備が設置・供用されていることから、これらとの累積的な環境影響について予測及び評価を行うこと。また、複数の事業実施候補区域において事業を実施する場合には、各区域間による累積的な影響についても予測及び評価をすること。

 [3]地元意見の反映
 
今後の検討に当たっては、地元自治体の意見を十分勘案し、環境影響評価において重要である住民関与についても十全を期すこと。

 [4]環境影響評価図書の十全性の確保
 今後、環境影響評価図書を作成する際には、環境影響評価に係る信頼性を低下させることがないよう、内容を十分に確認してから公表・送付等をすること。


【参考】

○事業概要
 ・名  称:猿払村及び浜頓別町における風力発電事業
 ・事 業 者:エコ・パワー株式会社
 ・計画位置:北海道猿払村及び浜頓別町
 ・出  力:最大で総出力250,000kW

○環境影響評価に係る手続
 ・平成26年 3月 4日  経済産業大臣から環境大臣への意見照会
 ・平成26年 4月 18日  環境大臣意見の提出

添付資料

連絡先
環境省総合環境政策局環境影響審査室
(代表:03-3581-3351)
(直通:03-5521-8237)
室長   :瀬川 恵子 (内6231)
室長補佐 :長谷川敬洋 (内6233)

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