報道発表資料

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2014年04月04日
  • 自然環境

~環境省グリーン復興プロジェクト~ 東北地方太平洋沿岸地域自然環境調査 重要自然マップの公表について (お知らせ)

 環境省は、東日本大震災が沿岸地域の自然環境に及ぼした影響を把握するための調査をしており、これまでの調査結果では、海岸林の大規模な消失や干潟の大規模な攪乱、新たな湿地の出現等を確認しています。この度、これらの調査結果を地域の復興事業等に役立ててもらうために、主に東北地方の津波浸水域における自然環境保全上重要な「生物が生息・生育する環境(ハビタット)」を示したマップ「重要自然マップ」を作成しました。関係自治体等に配布するほか、ウェブサイトにおいて公開します。

1.背景と目的

 2011(平成23)年3月11日の東日本大震災は、東北地方太平洋沿岸地域を中心とする多くの人々の生命や財産に大きな影響を与え、その地域の自然環境にもきわめて大きな影響を与えました。これらの地域における自然環境は、地震発生から3年以上経過した現在においても変化を続けており、震災前の状況に戻りつつある場所や、震災前とは別の新しい環境が出現し、自然遷移が進んでいる場所もあります。
 東日本大震災復興対策本部は東日本大震災からの復興の基本方針(平成23年7月29日付け)において、「津波の影響を受けた自然環境の現況調査と、経年変化状況のモニタリングを行う(5(4)[6]( ii ))」こととしており、環境省生物多様性センターでは、今回の地震等が地域の自然環境に与えた影響とその後の変化状況の継続的なモニタリング調査を実施しています。
 この結果を地域の復興に役立ててもらうことを目的として、主にこれまでの調査結果をもとにして自然環境保全上重要な地域を示したマップ「重要自然マップ」を作成しました。
 なお、現時点での震災後の自然環境情報は決して十分な状況ではありませんが、震災後、刻一刻と変わっている情勢の中、出来るだけ早く本マップを作成し、活用していただくことが重要だと考えています。当センターでは現在も東北地方太平洋沿岸地域における自然環境調査を継続して行っており、今後、さらに新しい調査結果を踏まえたマップの充実を図っていく予定です。

2.内容

重要な自然

 本マップでは、東北地方太平洋沿岸地域における自然環境保全上重要な地域を「重要な自然」と表現しました。
 東北地方太平洋沿岸地域では、地震・津波により「生物が生息・生育する環境(ハビタット)」のまとまりが広範囲にわたって破壊されており、これらの生息・生育環境のまとまりを考慮することが非常に重要だと考えられます。そこで、「重要な自然」を表現する単位として、生物の生息・生育環境である「ハビタット」に着目しました。
 これらのハビタットを表現するためには、基本的に震災後の面的なまとまりのあるデータを使うこととし、陸域のハビタットを表現するデータとして、主に昨年度調査で作成した震災後(2012年)の植生の状況を示す植生図を活用しました。また、海域では震災後の面的なデータがないことから、第5回自然環境保全基礎調査(1998)の分布情報を引用しました。
  これらのハビタット単位で表現したデータのうち、[1]希少な種の生息・生育地として重要な場、[2]生物多様性の高い場、[3]自然のポテンシャルが高い場、[4]人と自然とのふれあいの観点から重要な場の4つの観点から着目した以下の11のハビタットを「重要な自然」としました。

[1] 藻場、[2] アマモ場、[3] 干潟、[4] 砂丘(砂浜・砂丘植生)、
[5] 海岸断崖地の自然植生、[6] 残存樹林地、
[7] 樹林跡地(モザイク状の多様な攪乱環境)、
[8] 湿地植生(塩性・淡水湿地植生)、[9] 草原(二次草原)、
[10] 非耕作農地(水田雑草群落)、[11] 河川・湖沼等の開放水域

 また、重要な自然を補足するための情報として、希少な植物の生息確認位置、モニタリングサイト1000の調査位置などの情報も掲載しています。

対象範囲

 「重要な自然」は、青森県六ヶ所村から千葉県九十九里浜までの浸水域とその前面海域1kmの範囲における一続きのGISデータとなっており、そのうち、岩手県から福島県北部までの地域について、A0版の3枚のマップを作成しました。

重点エリア

 今回の対象範囲では、どの地域においてもその地域における「重要な自然」が存在していますが、地域毎に存在する「重要な自然」の情報を基に、それらのまとまり、つながりがある、多様性が高い等の観点から、特に19の地域に注目しました。本マップではこれらの地域を「重点エリア」とし、他の地域よりも縮尺を大きくするとともに、それぞれのエリアに含まれる「重要な自然」に関するコメントを記入するなど、特に詳しい情報を提供しています。

(1)
久慈湾奥部(岩手県久慈市)
(2)
野田湾奥部(岩手県久慈市、九戸郡野田村)
(3)
宮古市田老沿岸(岩手県宮古市)
(4)
宮古湾(岩手県宮古市)
(5)
山田湾奥部(岩手県下閉伊郡山田町)
(6)
船越湾奥部(岩手県下閉伊郡山田町、上閉伊郡大槌町)
(7)
大槌湾奥部(岩手県上閉伊郡大槌町、釜石市)
(8)
広田湾奥部(岩手県陸前高田市)
(9)
気仙沼湾西部(宮城県気仙沼市)
(10)
本吉湾奥部(宮城県気仙沼市)
(11)
志津川湾(宮城県本吉郡南三陸町)
(12)
北上川河口域(宮城県石巻市)
(13)
女川湾(宮城県牡鹿郡女川町)
(14)
万石浦(宮城県牡鹿郡女川町、石巻市)
(15)
松島湾(宮城県東松島市、塩竈市、宮城郡松島町、利府町、七ヶ浜町)
(16)
七北田川河口域(宮城県仙台市)
(17)
名取川河口域(宮城県仙台市、名取市)
(18)
阿武隈川河口域・鳥の海(宮城県岩沼市、亘理郡亘理町)
(19)
松川浦(福島県相馬市、南相馬市)

3.検討経緯

 「重要自然マップ(仮)作成にかかるワーキンググループ」(座長:平吹喜彦委員(東北学院大学教養部 教授))を設置し、平成25年9月11日(水)、同年10月28日(月)、同年12月9日(月)の3回開催し、本マップの作成方法等について議論を行いました。その後、平成26年2月27日(木)に開催した「平成25年度東北地方太平洋沿岸地域自然環境調査に関する検討会」(座長:中静透委員(東北大学大学院生命科学研究科 教授)での検討を踏まえて、重要自然マップを作成しました。

4.今後の予定

 順次、関係自治体等への配布を行うとともに、生物多様性センターウェブサイト「しおかぜ自然環境ログ」(http://www.shiokaze.biodic.go.jp)にデータを掲載する予定です。
 なお、配布、掲載の際には、重要な自然や重点エリアの解説を記載した冊子を添付する予定です。

添付資料
・重要自然マップ

添付資料

連絡先
環境省自然環境局生物多様性センター
直通:0555-72-6033
センター長:中山 隆治
生態系監視科長:佐藤 直人
保全科長:木村 元

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