報道発表資料

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2014年03月31日

平成25年度東日本大震災の被災地における化学物質環境実態追跡調査結果の公表並びに 平成23~25年度本調査結果の総括について (お知らせ)

 環境省では、平成23、24年度に引き続き、青森県、岩手県、宮城県及び福島県の被災地沿岸域における残留性有機汚染物質(POPs)及び被災地での取扱量が多い有害化学物質等のモニタリング調査を実施しました(調査実施日:平成25年9月17日~10月3日(大気)、平成25年11月19日~27日(水質・底質)、平成25年11月20日~平成26年1月14日(生物))。
 この度、今年度調査の分析結果並びに平成23~25年度の本調査結果の総括について、以下のとおり公表します。
 なお、本追跡調査は、本年度をもって終了となります。

【平成25年度東日本大震災の被災地における化学物質環境実態追跡調査の結果】

1.調査概要

 環境基準等が設定されていないものの、有害性等が懸念される残留性有機汚染物質(POPs)及び化学物質排出把握管理促進法に基づき排出量等の届出が必要とされる物質(PRTR届出対象物質)等(以下、「POPs等」という。)の被災地における残留状況を把握するため、環境省が従来より実施している化学物質環境実態調査の測定地点等を中心に、被災や津波による影響、PRTR制度に基づく届出情報、前年度に実施した化学物質環境実態追跡調査(以下、「追跡調査」という。)の結果等を踏まえ、調査地点を選定し、今年度の追跡調査を実施しました。

2.結果概要

(1)大気環境試料の調査結果について

[1]今年度の追跡調査と既往調査結果との比較

 POPsの6物質について、16地点(地図別添1参照)で調査を実施し、環境省が別途全国規模で実施している化学物質環境実態調査の震災前直近3年(平成20~22※1年度)の結果(以下、「既往調査結果」という。)と比較したところ、全物質について全地点で既往調査結果の濃度範囲内でした。(調査結果概要参照)

[2]過去の追跡調査で既往調査結果の濃度範囲を超えた物質と地点における今年度の追跡調査結果

 平成24年度追跡調査で既往調査結果の濃度範囲を超えたヘキサクロロベンゼン(1地点)については、今年度は既往調査結果の濃度範囲内でした。なお、平成23年度追跡調査において既往調査結果の濃度範囲を超えた物質と地点はありませんでした。

※1
平成22年度の化学物質環境実態調査については、震災前に各種環境試料の採取を終えていることから、平成20~22年度における同調査を震災前直近3年の結果としました。

(2)水質環境試料の調査結果について

[1]今年度の追跡調査と既往調査結果との比較

 POPs等の22物質について、20地点(地図別添2参照)で調査を実施し、既往調査結果と比較したところ、トリブチルスズ化合物について4地点で、ヘキサクロロベンゼンについて1地点で、ペンタクロロベンゼンについて1地点で、トリフェニルスズ化合物について1地点で、既往調査結果の濃度範囲を超えていたものの、その他の物質で当該結果が得られている14物質については、全地点で既往調査結果の濃度範囲内でした。(調査結果概要参照)

[2]過去の追跡調査で既往調査結果の濃度範囲を超えた物質と地点における今年度の追跡調査結果

 平成23、24年度追跡調査で既往調査結果の濃度範囲を超えたトリブチルスズ化合物(2地点)のうち、1地点については、今年度の追跡調査でも既往調査結果の濃度範囲を超えた結果となりましたが、もう1地点は既往調査結果の濃度範囲内でした。
 平成23年度追跡調査で既往調査結果の濃度範囲を超えたトリフェニルスズ化合物(1地点)については、今年度の追跡調査で既往調査結果の濃度範囲を超えた結果となりましたが、エンドリン(1地点)及びペンタクロロベンゼン(1地点)については、既往調査結果の濃度範囲内でした。
 平成24年度追跡調査で既往調査結果の濃度範囲を超えたヘキサクロロベンゼン(1地点)については、今年度の追跡調査でも既往調査結果の濃度範囲を超えた結果となりました。

(3)底質環境試料の調査結果について

[1]今年度の追跡調査と既往調査結果との比較

 POPs等の22物質について、25地点(地図別添2参照)で調査を実施し、既往調査結果と比較したところ、ヘキサクロロベンゼンについて1地点で、ペンタクロロベンゼンについて1地点で、既往調査結果の濃度範囲を超えていたものの、その他の物質で当該結果が得られている17物質※2については、全地点で既往調査結果の濃度範囲内でした。(調査結果概要参照)

[2]過去の追跡調査で既往調査結果の濃度範囲を超えた物質と地点における今年度の追跡調査結果

 平成24年度追跡調査で既往調査結果の濃度範囲を超えたヘキサクロロベンゼン(1地点)及びペンタクロロベンゼン(1地点)については、今年度の追跡調査でも既往調査結果の濃度範囲を超えた結果となりましたが、N,N -ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(1地点)については、既往調査結果の濃度範囲内でした。なお、平成23年度追跡調査で既往調査結果の濃度範囲を超えた物質と地点はありませんでした。

※2
これら17物質のうちp-オクチルフェノール類については、追跡調査では4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)フェノールとp-n-オクチルフェノールの調査を行いましたが、既往調査ではこのうち前者の物質のみ調査したため、当該調査物質のみと比較しました。

(4)生物環境試料の調査結果について

[1]今年度の追跡調査と既往調査結果との比較

 POPs等の20物質について、7地点※3(地図別添3参照)で調査を実施し、既往調査結果と比較したところ、当該結果が得られている17物質については、全地点で既往調査結果の濃度範囲内でした。(調査結果概要参照)

[2]過去の追跡調査で既往調査結果の濃度範囲を超えた物質と地点における今年度の追跡調査結果

 平成23年度追跡調査で既往調査結果の濃度範囲を超えたトリフェニルスズ化合物(1地点※4)については、今年度は試料採取ができず分析が行うことができませんでした。なお、平成24年度調査では既往調査結果の濃度範囲内でした。また、アルドリンについては、今年度調査では既往調査結果の濃度範囲内でした。
 平成24年度追跡調査で既往調査結果の濃度範囲を超えたトリフェニルスズ化合物(1地点※4)についても、今年度調査では既往調査結果の濃度範囲内でした。

※3
本年度の追跡調査で調査対象であった釜石湾(岩手県)のアイナメ、大船渡湾(岩手県)のアイナメとマコガレイ、気仙沼湾(宮城県)のアイナメ及び仙台港地先海域(宮城県)のアイナメについては、試料採取できず分析が行うことができませんでした。
※4
平成23年度と平成24年度の追跡調査で既往調査結果の濃度範囲を超えたトリフェニルスズ化合物(各1地点)については、異なる地点です。

(5)GC/MS化学物質一斉分析データベースを活用したスクリーニング調査の結果について

[1]震災4ヶ月後(平成23年7月)の大船渡湾の底質をスクリーニング調査※5した結果と同手法で行った追跡調査との比較

 今年度の追跡調査では、震災4ヶ月後の大船渡湾の底質調査と同じ3地点(地図別添4参照)で底質を採取し、迅速かつ一度に多くの物質について傾向をつかむことのできる同手法によるスクリーニング調査を行うとともに、当該3地点中1地点が平成23、24年度追跡調査地点であることから、超低温にて保存しておいた試料もあわせて同手法で調査を行った結果について地点毎に比較したところ、調査対象物質の濃度の合計値について経年的な減少が認められました。(GC/MS化学物質一斉分析によるスクリーニング調査結果参照)

[2]松島湾の底質について保存試料も含めた追跡調査と既往調査の結果比較

 平成24、25年度追跡調査試料と震災前の試料(平成22年度の既往調査において追跡調査地点の近傍で採取)について、同手法でのスクリーニング調査を実施した結果を比較したところ、調査対象物質の濃度の合計値は、いずれも震災前のものを超えるものではありませんでした。(地図別添4、GC/MS化学物質一斉分析によるスクリーニング調査結果参照)

※5
GC/MS化学物質一斉分析データベースを活用した震災被災地モニタリング
(岩手県環境保健研究センター)

(6)底質中のDDT類における同族体・幾何異性体分析の結果について

 平成24年度追跡調査の底質で、o,p'-DDT濃度が比較的高く検出(ただし、既往調査結果の濃度範囲内)された7地点について、平成23、24年度追跡調査の保存試料も含め、同族体・幾何異性体分析を行いました。その結果、一部の地点において他と挙動の異なる地点が認められました。

【平成23~25年度の追跡調査結果の総括】

1.既往調査結果の濃度範囲を超えた物質及び地点について

 3年間の追跡調査において既往調査結果の濃度範囲を超えた物質及び地点としては、平成23年度の追跡調査で6物質7地点、平成24年度は7物質8地点、平成25年度は6物質9地点において、既往調査結果の濃度範囲を超えるような調査結果が得られましたが、いずれも既往調査結果の濃度範囲の上限を大幅に超えるものではありませんでした。

2.3年間の追跡調査結果に対するリスク評価について

 本調査の対象となった34物質について、3年間の追跡調査結果の年度毎・物質毎の最大濃度と環境基準等との比較を行った結果、環境基準等が設定されている2物質については全て基準値以下でした。また環境基準等のない32物質については、環境省が実施している環境リスク初期評価の手法に準じてリスク評価を行った結果、27物質については「現時点では作業は必要ないと考えられる」という評価※6が得られました。
 残る5物質のうちアニリンについては「情報収集に努める必要がある」、フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)については「詳細な評価を行う候補」という結果になりました。この2物質については環境省が過去に実施した環境リスク初期評価でも同じ結果でした。また、ヘプタクロル及びトリフェニルスズ化合物については、平成23年度調査結果では「情報収集に努める必要がある」という評価結果でしたが、平成24、25年度調査結果ではいずれも「現時点では作業は必要ないと考えられる」との評価結果に変わりました。ヘキサクロロベンゼンについては、各年度の生態影響について「情報収集に努める必要がある」との評価結果でした。
 なお、物質毎のリスク評価結果については、別添「リスク評価結果」を参照して下さい。

※6
「化学物質の環境リスク初期評価ガイドライン」の評価の分類による
https://www.env.go.jp/chemi/report/h24-01/pdf/chpt1/1-2-1.pdf

3.今後の予定

 3年間にわたる追跡調査の結果、調査対象物質及び調査地点について、その多くが既往調査結果の濃度範囲内でした。しかしながら一部の調査対象物質及び調査地点において既往調査結果の濃度範囲を超えたもの等が認められました。
 本調査は本年度をもって終了となりますが、これらの調査結果を踏まえ、今後、化学物質環境実態調査等を通じてこのような調査の継続について検討を行う予定です。

4.その他

 各媒体における検体毎の調査対象物質濃度については、詳細別紙1~4を参照して下さい。

添付資料

連絡先
環境省総合環境政策局環境保健部環境安全課
代表  :03-3581-3351
直通  :03-5521-8261
課長  :牧谷 邦昭(内線 6350)
専門官:田畑 康幸(内線 6361)
担当  :森永 茂樹(内線 6355)

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