報道発表資料

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2013年11月29日
  • 地球環境

低炭素社会国際研究ネットワークCOP19 サイドイベント 「低炭素・レジリエントな社会への転換:理論から現実へ」 の開催結果について(お知らせ)

 環境省が支援する低炭素社会国際研究ネットワーク(LCS-RNet)が、気候変動枠組条約第19回締約国会議及び京都議定書第9回締約国会合(COP19/CMP9)(2013年11月11日~22日、ポーランド共和国ワルシャワ)期間中の11月19日(火)にサイドイベント「低炭素・レジリエントな社会への転換:理論から現実へ」を開催しました。本年7月に実施されたLCS-RNetの第5回年次会合の成果の報告に加え、低炭素転換に向けた各国の取り組みが紹介され、さらに、LCS-RNet が将来取り扱うべき課題について議論が行われました。

1. 概要

日時:
2013年11月19日(火)
場所:
国立競技場(COP19 会議場)内日本パビリオン
共催:
公益財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)、独立行政法人国立環境研究所(NIES)

2.主な成果

(1) 開会挨拶

 冒頭、白石順一環境省地球環境審議官が開会挨拶を行い、最新の科学的知見を有効に政策に反映させるネットワークの活動に期待を示しました。また、環境省として今後は適応も視野に入れた低炭素社会づくりが必要であることを述べました。

(2)LCS-RNet 第5回年次会合の主要メッセージ発信

NIES の甲斐沼美紀子フェローと、イタリアの新技術・エネルギー環境庁(ENEA)、Sergio LaMotta 博士より、エネルギー多消費技術社会へのロックインを避け低炭素社会へ移行することはこれまでの人間社会の大きな転換であり、転換の舵を切るため知恵の結集が緊急に必要であること、また、今後の世界の排出量削減の多くが途上国で起こると予想されることを踏まえて、本ネットワークの活動が先進国・途上国共有の低炭素発展の道を論議する場として拡大されるべきことが述べられました。
フランスの環境・開発国際研究所(CIRED)、Jean-Charles Hourcade 博士より、低炭素社会 化・グリーン経済化を、経済危機脱出や持続可能な世界への大転換を進めるための一つの効果 的な梃子として考えるべきとの見解が示されました。

(3)低炭素転換に向けた取り組みに関する意見交換

英国エネルギー気候変動部(DECC)のDavid Warrilow 氏から、英国は、温室効果ガス排出量 を2050年までに1990年比で80%削減するという2008年気候変動法による低炭素社会への転 換を規定しており、2008年から2027年まで、5年ごと四期分の「カーボン・バジェット」が 策定されていること、気候変化にレジリエントに対応すべく本年7月に国家適応プログラムを 策定したことが報告された。さらに、低炭素発展・社会に舵を切った要因として、エネルギー 源の多様化を目指すエネルギー安全保障の観点を挙げつつ、第一に科学への信頼があることを 挙げた。
スイスの有限会社Perspectives、Axel Michaelowa 博士は、コベネフィット・アプローチのみ では低炭素社会構築に向けた社会・エネルギー構造の大転換を引き起こすには限界があること、 また、政権交代などの政治変化のもとで、どのように長期的な低炭素社会を構築するのかも大 きな課題であると述べた。
NIES の藤野純一主任研究員は、アジア途上国における低炭素発展へ向けての取り組みやその 速度には瞠目するものがあるとし、例えばマレーシア・イスカンダールでの低炭素ブループリ ントが数年で策定されていることに触れ、こうした蛙跳びの例に注目すべきと述べた。さらに、 当地が低炭素発展・社会に舵を切った要因としては、国レベルの排出削減目標の設置、国及び 市レベルでのリーダーシップ、経済特区としての機会、シンガポールに隣接する地理的特徴、 地元大学と研究パートナーの存在等、様々な要因が重なっていると述べた。

(4)今後LCS-RNet が取り扱うべき論点の検討

LCS-RNet 西岡秀三事務局長より、今後LCS-RNet が取り扱うべき論点として下記の例が挙げら れ、今後関係者間で十分な議論を行って論点を特定していくべきとの指摘がなされた。
適応も踏まえた統合的な緩和策のありかた
先進国と途上国との協力強化を如何に進めていくことができるか
経済不況化状況にある世界で、クリーン・テクノロジ-や低炭素・ゼロ炭素エネルギーの技術革新や投資を通じての低炭素投資の役割をどう捉えるか
シェールガスの出現など安価なエネルギー情勢変化に対応してどのように気候政策を強化するか
様々な要因でエネルギーミックスの転換が各国で進む中で、気候政策の観点から気候エネルギー政策にどのようにアプローチするか
低炭素社会への移行にあたり、都市によるボトムアップアプローチをいかに促進していくか
需要側のエネルギー減少に寄与する社会全体の資源効率の向上をどのように政策に組みこむか
連絡先
環境省地球環境局総務課研究調査室
直通:03-5521-8247
代表:03-3581-3351
室長  :辻原 浩   (内線 6730)
専門官 :星野 ゆう子 (内線6735)
担当  :林 優里   (内線 6733)

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