報道発表資料

この記事を印刷
1998年07月15日

「地球環境問題をめぐる消費者の意識と行動が企業戦略に及ぼす影響(ドイツ消費者編)」調査概要について

環境庁国立環境研究所では、地球環境問題をめぐる消費者の意識と行動が企業戦略に及ぼす影響に関する国際比較調査の一環として、ドイツにおいて消費者の環境問題に関する知識・意識、環境問題に関する当事者意識と企業変革に関する意識、政治・行政への働きかけ、環境に配慮した日常行動、企業への働きかけについて調査を行った。
 その結果、全体としてドイツの消費者は、平成7年に行った日本の消費者に対する調査と比較して環境問題に対する危機意識が強いことが判明した。例えば「今後10年以内に環境問題は悪化する」と消費者の8割強が認識しており、商品選択にあたっても、「価格」、「機能・品質」に次いで「環境に良い」ことを重視している。企業の環境への取り組みに対しては、「その企業の製品やサービスを優先して買いたい」と極めて肯定的な印象を持っている。市民から行政や政治への働きかけに関しては、環境に配慮したシステムの構築は可能であると消費者の8割弱が考えていることが判明した。
 なお、本調査は地球環境研究総合推進費により実施された
 調査対象は旧西ドイツに在住する18歳~74歳の男女で、標本数は2101、回収数1166サンプル(回収率55.5%)であった。

<報告書の要点>
・ 「今後10年以内に環境問題は悪化する」と消費者の8割強が認識している。また、消費者は自分が環境問題の加害者であると認識しており、環境問題解決のためには法律や政令・行政規則などの規制が必要であると考えている。
・ 環境保全のために消費者が負担してもよいと考えていることは、「生活の利便性の低下の容認」、「市民・環境団体等への資金・労力の支援」、「価格上昇の容認」、「課税の容認」の順に高い。全体として、女性と若年層のコスト負担意識が高い傾向にある。
・ 消費者の製品の選択基準では「価格」、「機能・品質」といった製品の本質に関することの次に「環境に良い」ことが重視されている。消費者は環境保全のためには、環境に配慮した製品を買い、余分なものを買わないことが必要であると考えている。
・ 「環境に配慮している」と表明している企業に対する消費者の評価は、「その企業の製品やサービスを優先して買いたい」が約5割を占める。「親近感を感じる」(4割弱)や「信頼できる」(3割)といった肯定的な意見が続く。
・ 「市民から行政や政治に働きかけることによって環境に配慮したシステムをつくることができる」という意見には消費者の8割弱が賛同している。
<報告書の入手等の問い合わせ先>
○環境庁国立環境研究所 社会環境システム部 原沢英夫
TEL: 0298-50-2507 FAX: 0298-50-2572

「地球環境問題をめぐる消費者の意識と行動が企業戦略に及ぼす影響(ドイツ消費者編)」調査概要

 国立環境研究所では、(株)住友生命総合研究所の協力を得て、地球環境問題をめぐる消費者と企業の関係に関する調査を実施している。平成9年度は、ドイツの消費者を対象に調査を実施した。以下に調査の概要を報告する。なお、調査方法等については参考資料を参照されたい。

1.消費者が非常に深刻であると考えている環境問題は地球規模の環境問題
消費者は「大気汚染」、「オゾン層の破壊による紫外線の増加」、「熱帯林の減少」、「湖や河川・海洋の汚染」、「飲料水の汚染」といった環境問題に対して関心が高い。この5つの項目全てにおいて30歳代の回答割合が目立っている。

2.消費者の環境意識
a.消費者の8割強は今後10年以内の環境問題の悪化を懸念
消費者の8割強が、「今後10年以内に環境問題は悪化する」との認識を持っている。なかでも女性と60歳代以上の回答割合が高い。

b.消費者は環境対策のために法律や政令・行政規則などを厳しくするのは当然であると考えている「環境対策は重要であり、法律や政令・行政規則などを厳しくするのは当然である」、「今日の環境問題は私たち一人ひとりが加害者である」という意見には8割強の消費者が賛同している。「環境対策によって、日々の生活も制約を受けており暮らしにくい」と考える消費者は4割強である。
環境問題に関する加害者意識では、日本の消費者においても同様の結果が見られた。平成7年の日本調査では「今日の環境問題は私たちも加害者である」という意見には約8割が賛同しており、ドイツの消費者とほぼ同じ程度の加害者意識を持っていることが分かった。

c.消費者は環境保全のために生活の利便性が低下することを容認
環境保全のために消費者が負担しても良いと考えていることは、「生活の利便性の低下の容認」が消費者の6割弱で一番多く、「市民・環境団体等への資金・労力の支援」、「価格上昇の容認」、「課税の容認」が続く。これらの4つに関しては、女性と若年層の意識が高い傾向にある。

3.実施割合が高い消費者の日常行動は節約行動やごみの発生を少なくする行動
消費者の日ごろの行動を見ると、「不要な室内の電灯はまめに消す」、「買い物には買い物カゴや袋を持っていく」、「包装がより簡素な商品を選ぶ」、「詰め替え容器に入った商品を選ぶ」、「消費電力量の少ない電化製品を選ぶ」といった行動を行なう割合が高い。

4.環境問題に関する情報の入手先としてマスメディアが一番多い
環境関連の情報の入手先としては、「テレビ・ラジオの番組」が約8割、「新聞・雑誌の記事」は6割強で、マスメディアから得る情報が圧倒的に多い。その他、「友人や家族の話」、「専門の書籍や雑誌」、「市民/環境団体の活動」が続く。

5.消費者は環境に良い行動を知っているが企業の環境配慮行動に対する理解は低い消費者は、どのような行動が環境に良いかの知識やどのような製品・サービスが環境に良いかの知識が豊富である。その一方で、どの企業が環境に配慮した行動をしているかの知識は少ない。

6.メーカーや販売店が提供する自社の環境対応の情報はマスコミを媒体とした情報が消費者には印象が強いが、商品に書かれた説明の印象も強いメーカーや販売店が自社の環境問題への対応を知らせる情報の中で消費者の印象に残っているものは、「テレビコマーシャル」が7割弱で一番多い。その他、「新聞広告」、「雑
誌の広告」、「商品に書かれた説明」、「ラジオコマーシャル」の順に回答割合が高い。
女性はこの5つの項目の内、「商品に書かれた説明」の印象が強いようである。購買行動を行なう機会が多いためと考えられる。年齢別に見ると、「新聞広告」、「雑誌の広告」、「商品に書かれた説明」では30歳代の回答割合が一番高い。「テレビコマーシャル」では50歳代の回答割合が一番高く、「ラジオコマーシャル」では40歳代の回答割合が一番高い。「特にない」では、60歳代以上の回答割合が一番高い。

7.消費者が企業に望む環境行動
a.環境問題を解決するために消費者がメーカーに望むことは、「環境対策を積極的に行なう」ことが一番多い
消費者からメーカーに対する要望は、「環境対策を積極的に行う」ことが約6割で一番多く、「環境に良い製品を積極的に開発する」ことが5割強で続く。その他、「製品の消費エネルギーなどの環境負荷を分かりやすく表示する」、「廃棄された製品を責任を持って回収・再利用する」、「製品の耐久性を良くする」が続く。

b.環境問題を解決するために消費者が百貨店・スーパー・小売店に望むことは、「環境保全型商品をそろえること」が一番多い
消費者から百貨店・スーパー・小売店への要望では、消費者の7割が「省エネ商品・再利用可能な商品などの環境保全型商品の品ぞろえを豊富にする」ことを挙げている。その他の要望では、「包装を簡素化する」、「環境に悪い商品を売らない」、「ビンやトレイなどのリサイクル活動を積極的に行う」、「商品の環境情報を消費者向けに提供する」が続く。
「省エネ商品・再利用可能な商品などの環境保全型商品の品ぞろえを豊富にする」、「環境に悪い商品を売らない」といった購買行動に直接関係する項目では、30歳代の回答割合が一番高い。「包装を簡素化する」では60歳代以上の回答割合が一番高く、「ビンやトレイなどのリサイクル活動を積極的に行う」では50歳代の回答割合が一番高い。

8.消費者のグリーンコンシューマー度
a.消費者の製品の選択基準では、「環境に良い」ことを消費者の7割が重視
消費者の製品の選択基準は「価格」、「機能や品質」といった製品の本質に関係する項目が重視されている。「環境に良い」ことは3番目に位置される。価格、機能、品質は、製品を選択する際には消費者が当然考慮すると考えられるため、製品を選択する際に「環境に良い」ことが重要な選択基準になっているといえる。平成7年の日本調査においても、製品の選択基準では「機能や品質」、「価格」の次に「環境に良い」ことが重視されており、消費者が製品を選択する際には、ドイツ、日本とも「環境に良い」ことが重要な基準になっていることが分かった。
性別では、男性よりも女性が「環境に良い」ことを製品選択の判断基準にしている割合が高い。年齢別に見ると、製品選択の際の「環境によい」ことをいつも考えている消費者は、50歳代、30歳代が高く、18歳~20歳代、40歳は低い。

b.環境のためにすべきことは、「環境に配慮した製品を進んで買う」ことが一番多い消費者として環境のためにすべきことは、「環境に配慮した製品を進んで買う」ことが6割強で一番多い。二番目に多いのは「余分なものは買わないようにする」が5割弱である。その他、「環境に配慮しない企業や店の商品の不買運動をする」、「すぐに買い換えずにできるだけ修繕・修理をして使う」、「できるだけ長く使う」といった、資源を大切にする項目が続く。

c.「環境に配慮している」と表明している企業に消費者は極めて肯定的な印象を持っている「環境に配慮している」と表明している企業に対する評価は、「その企業の製品やサービスを優先して買いたい」との意見が約5割で最も多い。「親近感を感じる」や「信頼できる」といった肯定的な意見が続く。一方、「当然の行為である」、「環境を宣伝に利用している」、「信頼できない」といった否定的な意見は少ない。

d.企業の環境行動を促進するためには「法律・規制」が重要であると消費者は認識企業に環境に配慮した行動をとらせるために有効だと消費者が考えることは、「法律や規制」が約7割で圧倒的に多い。「環境に関する優良企業の顕彰」することが約3割で続く。その他、「企業の経営者の環境意識の啓発」、「マスコミによる報道」、「業界の取り決めや約束」が挙げられている。

9.行政・政治に対しては環境教育や広報活動の充実を要望
環境問題を解決するために消費者が行政や政治に望むこととして、「環境教育や広報活動を活発に行う」ことが6割弱で一番高い。「環境に優しい技術や製品の開発や製造に支援する」が5割弱、「環境に関する法律や規制を強化する」が約5割で続く。この3つの項目の内、「環境に優しい技術や製品の開発や製造に支援する」、「環境に関する法律や規制を強化する」では女性が男性の回答割合よりも高いのが目立っている。

10.消費者は選挙や市民・環境団体に参加して行政・政治への働きかけを行なっている環境問題を解決するために行政や政治に対して「何もしていない」消費者は6割弱で一番多い。
行政・政治に働きかける手段では、「選挙の投票」、「市民・環境団体に参加して」が多い。年齢別では、「選挙の投票を通じて」では30歳代の回答割合が高く、「市民/環境団体に参加して働きかける」では18歳~20歳代の回答割合が高い。
「政党や政治家に直接働きかける」や「行政に直接働きかける」といった、行政・政治への直接的な行動は少ないようである。

11.環境に配慮したシステムの構築は可能であると消費者の8割弱が考えている
「市民側からの働きかけによって行政や政治を動かし、環境に配慮したシステムを作ることができる」という意見には消費者の8割弱が賛同している。年齢別では30歳代がそのように考えている人が多い。


参考資料:調査方法等の概要

1.調査実施主体
 本調査は、地球環境研究総合推進費「人間・社会的側面からみた地球環境問題分野」課題番号H-1「環境に関する知識,関心,認識およびその相互疎通に関する国際比較研究」の一部として、研究参加者である(株)住友生命総合研究所によって実施された。


2.調査設計
 旧西ドイツ地域在住の18歳~74歳までの一般の男女を対象に、調査対象者をランダム・ルート方式(一定の地域を一定の間隔で訪問する方式)によって無作為抽出し、さらに専門調査員による面接聴取法によって回答を得た。また、調査形式はオムニバス方式(一度に複数の調査を実施する手法)によった。現地における実査は、EMNID社(ドイツ)が担当した。また、プリテストにあたっては、ドイツ・マンハイムの調査方法研究センター(ZUMA)の協力を得た。
 サンプルの抽出にあたっては、旧西ドイツの州規模と都市規模に応じて11州から206の調査地点を選定した。
 平成10年1月9日(金)~1月26日(月)に調査を実施し、標本は2101サンプルで、回収数1166サンプル(有効回収率55.5%)であった。


3.回答者の年齢区分
(上段:実数、下段:%)

  調査数 18歳~20歳代 30歳代 40歳代 50歳代 60歳代以上 平均(歳)
男性

(%)

556

100

169

30.4

119

21.4

97

17.4

104

18.7

67

12.1

40.5
女性

(%)

610

100

160

26.2

164

26.9

115

18.9

94

15.4

77

12.5

40.6
合計

(%)

1166

100

329

28.2

283

24.3

212

18.2

198

17.0

144

12.3

40.6

4.平成7年度に実施した「日本の消費者に対する調査」の概要

(1) 調査の概要
国立環境研究所が平成7年9月に実施した。関東(東京50Km圏)、中京(名古屋30Km圏)、近畿(40Km圏)の各地域を都市規模による層化を行った上で、各調査地点(全100市区町村)を抽出し、20歳から74歳までの成人男女2,000人を対象とした。訪問留置訪問回収法により、回収率は77.1%(1,541人)。


(2) 調査結果(平成9年ドイツ消費者調査に関連する部分のみ掲載)
{1}消費者の加害者意識(当事者意識)
「今日の環境問題は私たちも加害者である」という考えに対しては「そう思う」が41.3%であり、「どちらかといえばそう思う」(39.1%)を含めると約8割が肯定している。消費者は環境問題を引き起こしている加害者として自分を認識しているようである。
{2}消費者の製品選択基準
消費者が製品を選択するときの基準として「いつも考えている」「ときどき考える」の合計でみると、「機能や品質」(97.1%)、「価格」(95.8%)に次いで「環境に良い」(79.9%)が多い。
価格や性能は相変わらず重要な判断基準であるが、同時に「環境」も製品選択の重要な判断基準となっていることがわかった。




<問い合わせ先>
○環境庁国立環境研究所 社会環境システム部 原沢英夫、青柳みどり
 TEL: 0298-50-2507 FAX: 0298-50-2572

○(株)住友生命総合研究所 生活部 桂川、鈴木、清水
 TEL: 03-3272-5888 FAX: 03-3272-5911

連絡先
環境庁国立環境研究所
主任研究企画官      :小野川和延(0298-50-2302)
(担当)社会環境システム部 :原沢 英夫(0298-50-2507)
              :青柳みどり(0298-50-2392)