報道発表資料

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2000年10月06日

低公害車大量普及方策検討会報告書について

大都市地域の大気の状況は、二酸化窒素(NO2)や浮遊粒子状物質(SPM)の環境基準の達成状況が依然として低い水準にとどまり、大変厳しい状況にある。
 このため、環境庁では、低公害車の導入に対する補助、税制上の優遇措置、技術開発の促進、普及啓発等を行い、低公害車の普及を図ってきたが、平成12年3月末現在、全国で約45,600台の普及にとどまっている。
 そこで、低公害車の大量普及のための制度的な普及方策について検討するため、平成9年10月に、学識経験者からなる「低公害車大量普及方策検討会(座長:猿田勝美神奈川大学名誉教授)」を環境庁大気保全局に設置し、これまで13回にわたり検討を重ねてきた。
 本検討会では、低公害車の大量普及のための制度的な方策として I.規制的方策、II.経済的措置、III.誘導的方策について、平成11年5月に「中間取りまとめ(低公害車大量普及方策の在り方について)」を行い、その後、この「中間とりまとめ」を踏まえ、更に低公害車を取り巻く最近の動向を踏まえつつ、自動車メーカーや自動車を使用する事業者等に対する新たな施策について、ケースを想定した試算を含めた検討を重ね、今般、その検討内容を報告書として取りまとめた。
1. 低公害車普及見通し
(1) 低公害車をとりまく現状
   低公害車は、これまで、電気自動車、天然ガス自動車、メタノール自動車、ハイブリッド自動車の4車種が対象とされてきた。
 しかし、近年、ガソリン自動車等の排出ガス性能も大幅に向上してきており、低公害車4車種並にクリーンな「低排出ガス車」も市場に出始めていることから、今後は、4車種に限定せず、低排出ガス車も併せて普及を図っていくことが必要。
 
(2) 低公害車普及見通し
   各自動車メーカーから低公害車の生産見通しをヒアリングし、これをもとに2010年(10年後)の低公害車の普及台数見通しを推計したところ、少なくとも全国で753万台(中量車以下が748万台、重量車が5万台)の普及が見込める。
 この見通しより、今後、次のような施策が必要。
 
1. 中量車以下(車両総重量3.5t以下)の車種では、ガソリン自動車等の低排出ガス車の大量普及が広く全国ベース見込めるので、これに合わせた施策の展開が必要。
2. 重量車(車両総重量3.5t超)では、天然ガス自動車、LPG自動車を中心とした普及施策が必要。あわせてディーゼル車の低公害化の支援も必要。
3. 特に環境負荷が大きい大型ディーゼル車から低公害車への代替が効果的。
 
2. 自動車メーカーへの低公害車の製造・販売義務付けについて
   「低排出ガス車」の大量普及が広く全国ベースで見込める中量車以下のクラスの新車販売について、一定割合を低公害車とすることを求めるフリート平均値規制(各自動車メーカーに1年間に新車販売する全車両の排出ガス量の平均値を規制)について、ケースを想定し、その効果を試算、検討した。

→ 低公害車普及見通しを担保するフリート平均値をメーカーに対する目標値とし、自動車メーカーの取組の報告を求め、その成果を公表し、勧告あるいは表彰等の評価を与える自主管理的制度とすることが適当。
 
3. 事業者への低公害車の導入義務付けについて
   トラック等の重量車を使用する事業所に対し、現状で代替可能な低公害車が存在する積載量2t・4tクラス(車両総重量3.5t以上8t未満)の車両を低公害車へ代替するケースを基に、低公害車導入義務付けの効果を試算、検討した。

→ 事業者への低公害車導入義務付けを検討するにあたっては、現在、事業者指導を行っている都道府県の制度と整合するように、法律的な位置付け・枠組みを含めて国として検討し、その中で低公害車の導入を指導していく方策を検討すべき。
 
4. まとめ
   本報告書において、自動車メーカーへの低公害車の製造・販売義務付け、事業者への低公害車の導入義務付けについて、それぞれケーススタディを行い、具体的な施策例とその効果を試算、検討した。
 しかし、これらの施策を制度化するにあたっては、それ相応の社会的影響につながる可能性が考えられる。一方で、自動車メーカーや事業者に取組の報告を求め、公表し、その成果を適正に評価するといった自主的取組と情報開示を組み合わせる手法によっても、一定の効果が見込まれると考えられる。
 そこで、今後、これらの施策を制度化するにあたって、自動車排出ガスの総合的な対策の中で、各方面からの意見等を踏まえながら、本報告書で示した施策の枠組みを基に、最大の効果を得られるものとなることを期待する。

添付資料

連絡先
環境庁大気保全局自動車環境対策第一課
課    長  石野  耕也 内線6520
 課長補佐  宮崎  正信 内線6521
 主    査  小林野武夫 内線6522